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【特別インタビュー】ハイバリュー農産物を日本へ QLD州マーク・ファーナー農業水産相 インタビュー

サンシャイン・ステートの異名を持つオーストラリア・クイーンズランド(QLD)州。日本では観光地としても名高いが、牛肉生産量はオーストラリア最大で、青果生産も国内シェア第1位とれっきとした農業州だ。その強みを活かし、QLD州政府はこれまで日本企業との貿易関係を強化、農産物の輸出相手国は日本が第1位だ。だが州政府は現在、日本とのつながりをより一層強化する取り組みを行っているという。その取り組みでリーダシップを発揮するQLD州政府マーク・ファーナー農業水産相に話を聞いた。【NNA豪州編集部】

――新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に世界中が支配されている中、QLD州政府は日本への農産物・食品輸出業界をどのように支援していますか。

QLD州政府は、経済復興戦略の一部である「クイーンズランド雇用再生計画(Unite and Recover for Queensland Jobs Plan)」を通して、農業分野のイニシアチブに対し1,250万豪ドル(約10億円)を投じています。その内容を説明しましょう。

1つ目として、農業におけるデジタルトランスフォーメーションに550万豪ドルを投じています。トレーサビリティー(追跡可能性)やバイオセキュリティー、食品の安全を向上させる統合型サプライチェーン(調達・供給網)を開発する目的です。

次に、農業貿易関係の再活性化に500万豪ドルを割り当て、主要市場におけるEコマース(電子商取引)や貿易に仮想的な方法で関与する「バーチャル・トレード・エンゲージメント」、また追加の航空輸送サービスへの需要に対する調整作業を支援します。

例えば、連邦政府の国際貨物支援制度(IFAM)を活用し、日持ちしない高品質な生鮮食品などについて、QLD州から日本への輸出を支えてきました。現在はIFAMの支援により、ブリスベンから日本(成田空港)へ1週間に1便の貨物チャーター便が運航しており、QLD州は商品の流通を継続することができています。

先日、日本航空の貨物便が2010年以来初めてブリスベンに着陸し、QLD州産の牛肉や水産物、果物、野菜を日本に向けて輸送したことには興奮しました。

――バーチャル・トレード・エンゲージメントについて言及されましたが、これはどのように機能していくでしょうか。

バーチャル・エンゲージメントは今や新常態(ニューノーマル)です。われわれは皆、経済を強く維持するためにこの方法でビジネスを行わなければなりません。輸出は雇用に直結するもので、QLD州は、高品質な農産物や付加価値の高い食品・飲料を確実に市場に届け続けるために、できることすべてを行っています。バーチャルな環境での会議やイベントは、これを貿易相手国に再認識してもらう有益な方法です。

「QLD州と日本との間の信頼関係は強い」とファーナー農水相

「QLD州と日本との間の信頼関係は強い」とファーナー農水相

現在のパンデミックを背景とした渡航規制による困難を乗り切るため、QLD州政府はパイロットテストとして、昨年9月1~3日に日本向けの「バーチャル貿易ミッション」を実施しました。

このミッションは、米マイクロソフトの「マイクロソフト・チームズ」などのオンライン・プラットフォームを活用しています。QLD州政府駐日事務所の安達健代表や彼のチームによる、州内25の新しい日本向け輸出事業者に向けたバーチャル環境でのブリーフィングなど、これまで複数のイベントが計画されてきました。

輸出事業者は、日本の消費者の好みや小売業界の情勢、Eコマースにおける商機、日本の主要な食品・飲料専門展示会であるフーデックス(FOODEX)2021などについて学ぶため、QLD州各地から参加しました。

ブリーフィングは、QLD州商工会議所(CCIQ)との共催で実施されました。

QLD政府は、QLD州産の新しく革新的な農産物や食品が日本のバイヤーと消費者の注目を集め続けられるよう今後も様々な支援を含めて取り組む所存です。新型コロナに負けず、新しい世界に勇敢に立ち向かっていきます。

また私は、日本の農林水産省の幹部とバーチャルでの協議を主催しました。農林水産省が関心を示している、QLD州北部での青果栽培の研究事業支援について話し合いました。この事業は、QLD州と日本の生産者双方にとって、長期的に利益をもたらす可能性があるものです。

また、農林水産省の皆さんには、州北部にある新しい「開閉式屋根付き温室(RRG)」を紹介しました。QLD州の農業・水産省の温室栽培に関する研究を支援するために特設されたものです。この研究は、中長期的に、季節が逆であることを利用した価値の高い新しい作物を生産することにつながるものです。QLD生産者が栽培したメロンやナス、トマトといった作物を、日本や他のアジア市場に向けて輸出できるようになるでしょう。

――なぜ日本が「バーチャル貿易ミッション」の対象に選ばれたのでしょうか。

日本とQLD州の間には、長期にわたる強固で信頼できる相互的な関係があるからです。

私は、田中一成ブリスベン総領事とも素晴らしい関係を築いてきました。今回のバーチャル貿易ミッションのイベントや会議にも、特別ゲストとしてご参加頂きました。

日本はQLD州にとって、非常に重要な市場です。QLD州の貿易相手国の中では2番目に大きく、農産物の輸出市場としては最大です。

2019/20年度(19年7月~20年6月)のQLD州の農産物輸出額は約95億5,000万豪ドルで、そのうち日本向けは19.7%に上りました。

QLD州と日本の農業貿易における関係は、パンデミックの中でも強固な状態を維持してきました。

対日輸出の総額は前年比で17%程減少しましたが、農産物輸出は引き続き堅調で18億8,000万豪ドルと3.7%増加しました。

この増加に寄与したのはQLD州から日本への最大の輸出品目である牛肉です。輸出額は約16億豪ドルで、前年から4.1%増加しました。

QLD州は63カ国に牛肉を輸出していますが、その中でも日本は輸出量・輸出額共に最大です。日本は、最も大切な顧客なのです。

――QLD州の農産物について、今後日本市場にどのような機会があると考えていますか。

QLD州の農業は、赤肉や果物、野菜などの生鮮食品に対する日本の消費者の需要と完全に一致しています。

QLD州の農産物の日本市場における競争優位性は、まず、オーストラリアのブランド力の強さや、食品の安全性が認知されていることがあります。QLD州と日本の貿易・投資関係が成熟していることや、時差が少なく、季節が逆なことを利用した生産機会があることも一つです。さらに、効果的な海運、空運サービスがあることも挙げられます。

QLD州政府貿易・投資庁(TIQ)と農業・水産省は、日本からの野菜に対する需要の増加を好機として活用するために、2015年から主要な日本の輸入業者と協力しています。

日本の消費者は洗練され目が肥えています。また、日本市場は成熟しており、競争も非常に激しいです。

そのため、QLD州の生産者は、独自のセールスポイントを備えた新しい商品を投入する必要があると自覚しています。

最近は、QLD州生産者のプロジェクトから成功事例が生まれました。輸出規格に準拠したカボチャを、船便で初めて日本に出荷したのです。

このプロジェクトは、QLD州政府農業・水産省の食品輸出促進プログラムである「Growing Queensland’s Food Exports(GQFE)」が資金支援しています。生産者のパートナーである大手農業企業クオリパックと、日本の輸入事業者、TIQ、そしてクイーンズランド大学が協力し、今回の出荷を実現しました。

カボチャは日本の食事に欠かせないものです。クオリパックは、カボチャの栽培方法や収穫時期について学び、日本市場の非常に厳しい仕様を満たすため、新しい輸出用包装にも投資しました。

日本のカボチャ市場はメキシコ産とニュージーランド産が大半を占めています。ですが、QLD州の生産者にとって、この1億800万豪ドル規模の市場を切り開くための現実的な輸出機会が存在しているのです。

日本に出荷したカボチャは、オーストラリアで商業的に生産されたことはありませんでした。しかし現在、生産者は強い関心を持っています。あるQLD州北部の生産者は、今年9~10月の間に100トンのカボチャを日本に輸出する計画を立てています。

――これまでに、日本のバイヤーや、QLD州の輸出事業者を支援した州政府経済的支援によるプロジェクトはありましたか。

あります。まさに先ほどお話ししたように、QLD州政府は、GQFEのパイロットプログラムに対し、2017~19年に130万豪ドルを割り当てました。

QLD州では、冬野菜がシーズンのピークを迎えています。QLD州は野菜の生産高がオーストラリアで最も大きく、その額は2018/19年度に約12億8,000万豪ドルに上っています。また、果物やナッツ類の生産高は2番目に大きく、同年度は約19億豪ドルでした。そのため、GQFEは主に青果生産に焦点を当て、QLD州の生産者がこの輸出における可能性を十分に生かせるようにしているのです。

GQFEが支援しているプロジェクトは15件あります。研究やサプライチェーン、輸出の発展に関する専門知識をあらゆるレベルの政府や民間部門から集結させ、QLD州の農業・食品輸出事業者の能力開発を手助けしています。

――QLD州は日本からの農業分野への投資を歓迎していますか。

もちろんです。QLD州政府は農業分野への投資を強く支援しています。投資は日本とQLD州との関係における非常に大事な側面です。

TIQは農業への投資を促進しており、農業・水産省もこれを支援しています。私たちは、農業界のサプライチェーンへの民間投資を呼び込み増加させるために、全力で取り組んでいます。

日本の企業とは今後も継続して協業し、QLD州の高品質な食品の生産や輸出における計り知れない潜在的可能性を解き放ちたいと考えています。

――QLD州政府駐日事務所はどのように投資を呼び込み、州とビジネスを行う日本企業を支援していますか。

この質問は駐日事務所の安達さんに答えてもらいましょう。

(以下、安達健QLD州政府駐日代表)

TIQの駐日事務所は、東京におけるQLD州政府の主要窓口です。QLD州での事業拡大を目指す日本企業からのお問い合わせを歓迎しています。

また私たちは、日本企業とQLD州の地元生産者のビジネスマッチングにより、生産者が日本市場仕様の農産品や原材料を生産・製造できるよう支援しています。

例えば、青果栽培分野では、日本の品種の野菜がQLD州で栽培され、日本の大手サラダ加工会社に供給された事例があります。

QLD州と日本は季節が反対ですので、生産者は日本人の嗜好(しこう)に合ったさまざまな野菜や果物を現地で栽培し、日本やその周りの東南アジア諸国に輸出することができるのです。

また、QLD州は養殖業の拡大・開発も進めています。日本の消費者にアピールできる幅広い水産物を生産したいと考えています。【聞き手=湖城修一】

<プロフィル>

マーク・ファーナー(Mark Furner)クイーンズランド州政府農業水産相

労働党(ALP)所属。農業サプライチェーンでの勤務経験を持ち、2007年に上院議員として初選出。17年より現職で、以来州内をくまなく訪問し、第一次産業従事者と語り合う。3人の子の父で2人の孫の祖父でもある。


関連国・地域: オーストラリア日本
関連業種: 食品・飲料農林・水産マクロ・統計・その他経済

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