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【アジアに行くならこれを読め!】『六市と安子の“小児園” 日米中で孤児を救った父と娘』

主人公の一人、楠本安子は1940年、中国・上海から鉄道で1時間余りの所にある崑山で“小児園”(孤児院とは呼ばない)を開設した。当初は「子どもを集めて売り飛ばそうとしている」とみられ、子どもたちは来なかった。やがて一人、二人と入園するようになり、それまで心を開いてこなかった子がある日、ついに「お母さん」と彼女を呼ぶ。

外国人である彼女が、しかも、当時の中国において日本人が地元の孤児たちを育てることができたのは、宗教者としての信念に支えられていたからかもしれない。だが、そうだとしても簡単にはまねできない崇高な行為であることに変わりはない。もともと涙腺が緩いこともあるが、崑山小児園で育った中国人たちが1985年に楠本安子と再会、言葉では言い尽くせない感謝の気持ちを伝える場面は涙なしには読めない。

副題の通り、戦前、戦中の日本、米国、中国で孤児を救った父娘の物語を著者は丹念に取材した。排他的な主張が幅を利かそうとする昨今、国籍に関係なくすべての者に愛を注ぐことの大切さを知ることができるし、また、その行為が時代や環境によりいかに困難を伴うかということも読み取れる力作だ。

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『六市と安子の“小児園” 日米中で孤児を救った父と娘』

大倉直 現代書館

2017年6月発行 1,800円+税

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「お母さん、ぼくをおぼえていますか」(本書より)

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<目次のぞき見>

・アメリカへ渡った日本人移民

・六市が開設した南加小児園

・中国崑山での安子

・日米開戦による終幕

・再会

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<著者紹介>

大倉直(おおくら・ちょく)

1966年生まれ。ノンフィクション作家。世にあまり知られていない人物を取り上げる。著書に思想家・野本三吉の本格評伝『命の旅人』(2014年)、近代日本の工業者群像を描く『奇蹟の学校』(12年)、メキシコの安宿に集まる日本人旅行者の夢と挫折をつづる『メキシコホテル』(1996年)など。

※特集「アジアに行くならこれを読め!」は、アジア経済を観るNNAの新媒体「NNAカンパサール」2017年9月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 中国-全国日本
関連業種: 電力・ガス・水道社会・事件

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