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【識者に聞く】 「メキシコで事業開始へ、アリババ」ほか

Topic 1

メキシコで事業開始へ、アリババ

NNA POWER ASIA 5月8日付

メキシコ

電子商取引(EC)中国最大手、阿里巴巴集団(アリババ)の馬雲会長はメキシコで5月4日、同国のエンリケ・ペニャニエト大統領と会談し、アリババがメキシコで事業を始めると明らかにした。馬会長は会談の中で「ECは発展途上国や中小企業、若者に利益をもたらす」と述べた。メキシコ政府側は、同国の製品やサービスをアリババのプラットフォームに組み込むよう努力すると表明した。

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■視点

中畑貴雄 なかはた・たかお

日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部米州課 課長代理(中南米)。1998年にジェトロ入会。一貫して中南米の事業と調査に関わり、2006年~12年までメキシコ事務所で調査担当ディレクター。12年から現職。メキシコ関連の講演や寄稿実績が豊富。著書に『メキシコ経済の基礎知識』(10年、14年)などがある。

EC世界大手によるメキシコ市場への関心を示すトピックと言えそうだ。

メキシコインターネット協会(AMIPCI)によると、2015年のメキシコのEC市場の規模は2,571億ペソ(約1兆5,900億円)に達し、5年前の7倍に拡大した。背景には、金融サービス、インターネット、スマートフォン、宅配サービスの普及が急速に進んだことがある。世界銀行の調査によると、メキシコの成人の銀行口座保有率は11年の27%から14年には39%まで拡大した。メキシコ連邦通信院(IFT)によると、16年末時点の世帯普及率は固定インターネットで48%、モバイルインターネットで61%と3年前からそれぞれ8ポイント、32ポイント上昇。スマホの人口比普及率も16年末に約74%に達し、3年間で44ポイント上昇した。メキシコ通信運輸省によると、宅配サービスを行う会社及び保有トラックの数は16年に399社1,567台と過去3年間でそれぞれ2.4倍と2.1倍に拡大した。

AMIPCIが16年5~7月に実施したアンケート調査によると、EC利用者のうち外国の小売業者から購入した越境EC利用者の比率は60%と前年比3ポイント上昇した。越境EC利用者の41%(前年は36%)がアジアから購入しており、アジアは米国(61%)に次ぐ購入先だ。越境EC利用の理由としては、61%が「魅力的な価格」、53%が「国内未販売の特別なものが欲しかった」、44%が「国内で未販売のブランド・商品」、21%が「品質の高さ」と回答しており、越境ECを通じた日本製品の今後の販売拡大にも期待が持てる。

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Topic 2

三菱電機がメキシコ新拠点、増える需要に対応

NNA POWER ASIA 5月26日付

メキシコ

三菱電機はメキシコのFA(ファクトリーオートメーション)センターを3カ所に増やした。従来メキシコ市にあった1拠点に加え、自動車産業が集積する中央高原(バヒオ地域)のケレタロ州に同国全域をサポートする「メキシコFAセンター」、米国との国境に近いヌエボレオン州モンテレイ市に北部をサポートする「メキシコ・モンテレイFAセンター」を設けた。メキシコ市の拠点は「メキシコシティFAセンター」と改称し、南部をサポートする。同社によると、メキシコでは製造業への設備投資によりFA需要が増加、これに伴う幅広いサービスが必要とされている。

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■視点

鯨岡繁 くじらおか・しげる

1973年日綿実業(当時)入社、メキシコ法人社長などを歴任。03年退職後は自動車部品メーカーの執行役員購買本部長、大手商社メキシコ現法の要職などを務める。16年に日墨友好を願い「メキシコ出前講座」を設立、中堅加工メーカーのメキシコ進出支援を始める。イラク、サウジアラビア、インド、モンゴルにも駐在した。

メキシコに進出する日系企業が現地のFAセンターを拡充したことは堅調な需要があることを意味しているのだろう。「日系をはじめとするアジア系や欧米系の顧客」がいて、新たな引き合いもあるという。実際、欧米系企業は今もメキシコへ積極的に投資している。

北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉は8月から始まる予定だ。5月11日に米上院がライトハイザー氏を米通商代表部(USTR)代表に承認、18日に再交渉を議会へ通告した結果である。

国境税導入などの米国の政策を危惧して、それまでにメキシコ進出を検討してきた日系企業はおおむね静観する姿勢が続いてきた。一方、NAFTAの見直し対象が知的財産権、税関手続き、国有企業、労働規制、現地調達率引き上げなどであり、関税引き上げの可能性が遠のいたことから、先行馬たらんとする企業も出現している。特に、自動車部品関連では日本国内に残るリスクが年々増大しているとの判断が後押ししているようだ。

メキシコと米国は既に分離不可分な経済関係にあり、1億2,000万の人口を擁するメキシコの成長は米国企業にとっても重要である。

24カ所の拠点をメキシコに有する米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルト最高経営責任者(CEO)は5月12日、米国との国境に近いヌエボレオン州モンテレイでの同社式典で、「メキシコはわが社の成長と将来にとって重要であり、GEはNAFTAを擁護する」と発言した。同氏は、米ホワイトハウスが設置した米製造業雇用促進会に在籍する人物である。また、ティラーソン米国務長官の出身母体であるエクソンモービルは総額3億米ドル(約333億円)を投下してメキシコでガソリン流通事業に参入すると同17日に発表した。

政権移行チームメンバーであったダン・ディミコ氏は米製鉄大手ニューコアの元CEOで、ニューコアは日本企業のメキシコ進出1,000社目となったJFEスチールと合弁で自動車用鋼板工場をグアナフアト州シラオに建設する。

20年以上が経過したNAFTAが新規分野を取り込んで一層充実する可能性もある。現地調達率引き上げが求められる中、品質重視の日本企業が自動車年産350万台規模のメキシコ市場に果敢に取り組むことを期待したい。

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Topic 3

エクソンモービル、メキシコで給油所事業

NNA POWER ASIA 5月29日付

メキシコ

米石油大手のエクソンモービルはメキシコでガソリンスタンド事業に参入すると発表した。今後約10年にわたって物流網の整備やガソリンスタンドの設置、市場調査などに約3億米ドル(約335億円)を投じる。メキシコでは2013年に炭化水素資源の国家独占を定めた憲法27条が改正され、エネルギー改革を掲げる政府は、石油製品の小売りやエネルギー資源の開発などを民間に開放してきた。

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■視点

星野 妙子 ほしの・たえこ

ジェトロ・アジア経済研究所研究員。1981年アジア経済研究所入所、現在までラテンアメリカ経済の調査研究に従事。94~97年と2010~12年にメキシコ大学院大学社会学研究センター客員研究員。『メキシコ自動車産業のサプライチェーン』(14年)、『ラテンアメリカの中小企業』(15年)など著書多数。

石油産業はメキシコのナショナリズムのシンボル的存在である。地下資源の国家への帰属を定めた1917年憲法を根拠に、メキシコでは長年にわたり外資の排除と国営石油大手ペメックスによる独占が堅持されてきた。同時に石油輸出収入は連邦政府の重要な財政資金源となり、補助金により石油製品の国内価格は低く抑えられてきた。

しかし外資の排除は技術革新の遅れを、連邦政府への資金移転は投資不足を、そして独占体制はペメックスの経営非効率と腐敗をもたらし、結果として、近年の埋蔵量と生産量の減少、石油輸出収入の減少、ペメックスの収益悪化を招いた。リスクが高く莫大な費用を要する石油開発を、資金不足のペメックス一社で担うことは不可能である。国民感情に目をつぶり、連邦政府が石油の開発と流通に外資の参入を認めるエネルギー改革を断行したのは、石油産業衰退の危機感ゆえに他ならない。

連邦政府は今年1月1日に石油製品への補助金を廃止した。それによるガソリン価格の上昇により、全国で抗議デモ、ガソリンスタンドへの襲撃、商店略奪が相次いだ。ペニャ・ニエト大統領は外資の市場参入が進めば競争により価格は低下すると世論をなだめたが、果たしてそうなるのか。エネルギー改革の帰結を見守る国民の目は厳しい。

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Topic 4

メキシコ金型産業に商機

NNA POWER ASIA 6月12日付

メキシコ

トランプ米大統領の保護主義的な通商政策を受け、日本企業の間でメキシコへの新規投資をめぐり様子見ムードが広がっている。中小が多い日本の金型関連企業が、メキシコへの新規進出を決断するのは容易ではないが、同国への進出支援などを行う事業革新パートナーズ(BIPC、東京都中央区)の茄子川仁社長は「現地では欧米系企業を新規顧客として開拓できる可能性がある」と指摘する。メキシコの自動車産業界では金型メーカーや金型部品メーカー、表面処理、熱処理などの関連企業がまだ少ない上、日本企業の技術力が高く評価されているためだ。

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■視点

山本 肇 やまもと・はじめ

野村総合研究所タイの製造業チームの自動車製造業シニアコンサルタントとして、タイおよび周辺国(ベトナム、ミャンマー、マレーシア、インドネシアなど)の自動車関連の調査・コンサルティングプロジェクトに従事。2006年にタイのサシン経営大学院で企業幹部向け経営学修士課程(EMBA)を取得。市場調査会社勤務などを経て14年から現職。

金型産業の成長には、金型製作のための熱処理、ダイセット、モールドベースなど周辺産業が整っていることが条件とされている。タイでは1993年に裾野産業発展促進のために、金型や関連技術に投資優遇措置を与え投資誘致に成功しており、400社以上の金型・関連メーカーが集積している。タイでは地域向けモデルの金型が集中生産され、輸出されるようになっている。

これに対しメキシコは200社程度とタイの約半分で、タイの自動車年産台数が約200万台規模であることと比較しても不足感は否めない。これはメキシコに進出した自動車メーカーが日本や米国、その他の拠点から金型を調達しているためだ。メキシコの金型産業の発展のためには、金型およびその周辺技術を含む裾野産業誘致を強化するとともに、自動車メーカーやティア1メーカーの金型の集中生産拠点を誘致することが欠かせない。自動車メーカーやティア1からの大型需要があって初めて熱処理などの周辺技術が進出可能となる。金型メーカーのみ進出しても、周辺産業がなければ部材を輸入することになり、コスト競争力がない。

メキシコはCAD(コンピューター設計支援設計)/CAM(コンピュータ援用製造)などのエンジニアは豊富で金型設計の素地はあるが、金型を製作する熟練ワーカーのスキル向上が課題となる。

メキシコ政府には早急に自動車メーカーやティア1、金型関連業界など協力しながら、人材育成、周辺産業誘致、輸出拠点化を視野に入れた包括的な金型現地化計画の策定が求められている。

※特集「識者に聞く」は、アジア経済を観るNNAの新媒体「NNAカンパサール」2017年7月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。毎月1回掲載。


関連国・地域: 日本
関連業種: 自動車・二輪車IT・通信天然資源マクロ・統計・その他経済

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