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《NNAセミナー》 ミャンマー・越の情勢解説

NNAシンガポールは9日、ミャンマー、ベトナムの経済・ビジネス動向を解説するセミナーをシンガポール中心部で開催した。現地に駐在する共同通信社の記者やNNAの編集者が、最新情勢を解説。会場となった「マックスウェル・チェンバース」には、日系企業関係者ら約30人が集まった。

ミャンマーの国内情勢について説明する八木記者=9日、シンガポール中心部(NNA撮影)

ミャンマーの国内情勢について説明する八木記者=9日、シンガポール中心部(NNA撮影)

セミナー第1部では、共同通信社ヤンゴン支局の八木悠佑記者が、「スー・チー政権下の国内情勢、経済・投資環境の変化」と題して講演した。

■長期的な経済政策が欠如

ミャンマーでは2011年にテイン・セイン大統領(当時)が就任して民生に移管して以降、金融や通信分野の開放、経済特区開発などが進んでるとした上で、16年3月のスー・チー政権発足後、経済界からは同政権に対する不満の声も出ていると説明。長期的な経済政策の欠如が経済停滞を引き起こしており、中小企業の資金調達も改善していないと指摘した。ただ市民や農民の間でスー・チー氏は根強い人気があり、「軍政には戻りたくない」という声も多いとして、20年の総選挙までの残り3年でどれだけの成果を出せるが焦点になると述べた。

同政権で経済が停滞した要因としては、◇与党・国民民主連盟(NLD)の議員に軍政時代を獄中で過ごした人が多く、政権運営の経験が少ない◇前政権下で認可された投資案件が中止されるなど政策見直しが行われている◇スー・チー氏が優先政策に「和平」を掲げ、これに付随して経済が発展すると考えている――ことなどを挙げた。

■経済特区は規制緩和の実験場

ただ足元では、ミャンマーの最大都市ヤンゴンで近代的な商業施設の建設が相次ぐなど、目に見える変化が起きていると指摘。15年9月に開業したヤンゴン近郊のティラワ経済特区(SEZ)は第1期がほぼ完売しており、進出が決まった約80社のうち半数を日系が占めるなど、進出の受け皿になっているとした。ミャンマーは複雑な外資規制が多いが、SEZは規制緩和の実験場になっており、ワンストップ行政窓口も機能していると述べた。

4月から運用が始まった新投資法については、「実際に運用がどれほど合理化されるかが鍵」と指摘。当初4月の運用開始が見込まれていた会社法は、年内に成立する見通しだとした。

一方、タイ・バンコクに近い南部のダウェーSEZは、ミャンマー側が開発にあまり積極的ではなく整備が遅れている。参画の方針を示す日系企業も当面は初期開発に関与せず、本格的な参画はかなり先になるとの見方を示した。

対中関係では、軍政時代は蜜月関係を築いていたが、テイン・セイン前政権下で欧米諸国との関係改善を図る中で、中国の地位が相対的に低下した。ただ現スー・チー政権では、少数民族との和平交渉を中国政府が後押しするなど、再び両国が接近している。4月には西部チャウピューと中国・雲南省をつなぐ石油パイプラインが稼働。チャウピューは中国が進める経済圏構想「一帯一路」の要衝であり、権益の確保を狙う中国の思惑が背景にあるとした。

イスラム教徒少数民族ロヒンギャ問題では、欧米からの批判が出る中、スー・チー氏はロヒンギャの肩を持てば国民の反感を買い、国軍からもつけ込まれかねない「板挟み」状態にある。スー・チー氏はなかなか動けず、自らの判断を先送りしていると付け加えた。

今後の見通しについては、前政権の政策調整に伴う停滞は一段落したと述べた上で、「市民と企業の意見のバランスを取りながら、経済成長を軌道に乗せられるかが試される」と述べた。

■日系企業の7割が事業拡大

第2部では、NNAベトナム版の小堀栄之編集長が「ベトナム経済、ここに注目!」をテーマに講演した。

ベトナム経済の概要やNNA横断企画について紹介する小堀編集長=9日、シンガポール中心部(NNA撮影)

ベトナム経済の概要やNNA横断企画について紹介する小堀編集長=9日、シンガポール中心部(NNA撮影)

ベトナム経済については、◇富裕層・中間層が拡大◇自動車販売台数が約30万台でモータリゼーションが進行中◇日系企業の進出数は1,687社(16年・外務省)――といった概要を説明。アジアの中でベトナムを投資有望国に挙げる日本の中小企業が多いことや、進出する日系企業の7割強が「事業拡大」を計画しているといった調査結果も紹介した。ベトナムは投資規模の大小にかかわらず利益が出やすいことや、ホワイトカラーを安い賃金で雇用でき、親日国で日本語が話せる人も多い点、「欧米企業は短期的な成果を求めるが、日系企業は長期的に人材を育ててくれる」というイメージが強いことなど、日系企業が事業展開しやすい環境にあると説明した。

一方、インフラの未整備や、年間10%前後の最低賃金引き上げ、省ごとに異なる法制度といった点に不満が出ており、「進出しずらい国」という認識も一部にあると指摘した。

■環境ビジネスで日系に商機

経済面で注目するポイントでは、魚の大量死など深刻化する環境汚染がビジネスに与える影響に言及。魚の大量死は台湾企業の廃水が原因とされる中、環境コンプライアンス(法令順守)の信頼性が高い日系企業にはベトナム当局が優先的に投資を認可する傾向があるとして「日系には追い風になる」と話した。ただ現地パートナーを選定する際は、環境問題を隠ぺいする可能性なども考慮し、相手の精査が必要だとも指摘。また「既存工場の操業に影響はないが、新工場設立、プラント拡張は従来より政府のチェックが厳しく、認可取得に時間がかかる可能性もある」と述べた。

このほか中間層が拡大する中で、消費市場が活況を呈していることを指摘。韓国系企業の対ベトナム投資では1990年代の繊維、2000年代の電気・電子に続き、消費市場開拓を目指す「第3の波」が来ているといい、「韓国系企業はグループ全体で進出し、リスクを恐れず短期間で意思決定するのが特長」とした。

日系企業では、小売業界でイオンやファミリーマート、高島屋などが進出を加速。イオンが物産展を通じて企業の進出を支援するなど「日系(進出)のプラットフォーム」になっているのが特長と話した。日系の飲食業では超高級店など、価格以外で勝負する例が目立つとした。

日系企業が注目すべき点では、現地の「不足」「不満」「不安」に商機があるとして、インフラや医療、娯楽、衣食住などで事業チャンスが多いと述べた。

このほか現在NNAで連載中の横断企画も紹介。アジアでのもの作りでコスト上昇が課題となる中、生産効率化を図る「インダストリー4.0」構想をめぐり、シンガポールやベトナム、インドなど各国の動きを追っていることを説明した。アジアの生産拠点でインダストリー4.0といった新技術導入に半信半疑である日系企業が多いとの調査結果も紹介した。


関連国・地域: ベトナムミャンマーシンガポール日本
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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