日本のアグリテック分野で注目されるスタートアップ７社がこのほど、オーストラリア市場への進出を目指し現地を訪問した。市場関係者や研究機関、投資家らとの交…

オーストラリア

今回オーストラリアを訪問したのは、
◆品種開発のCulta（カルタ、東京都小金井市）
◆農業ロボットの輝翠（きすい、千葉県柏市）
◆海藻サプリのサンシキ（Sunshiki、東京都渋谷区）
◆衛星画像土地解析のサグリ（Sagri、兵庫県丹波市）
◆農業食品企業支援クオンクロップ（Cuoncrop、東京都千代田区）
◆超吸水性ポリマーのＥＦポリマー（EF Polymer、沖縄県国頭郡）
◆炭素クレジットのGreen Carbon（グリーンカーボン、東京都千代田区）――の７社だ。
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今回の訪豪は、日本貿易振興機構（ジェトロ）が主宰する世界進出を目指す起業家向けプログラム「J-StarX」の一環。オーストラリアの投資会社Boab AIが企画・運営を担い、ラ・トローブ大学の農業研究施設やスタートアップ拠点などメルボルンとシドニーを中心に視察したほか、現地の投資家や農業団体との意見交換を行った。
ハイライトは、両都市で開催されたデモ・デーだ。各社はピッチを通じ、投資家や大規模農業法人、商社などに対し事業計画を発表。技術の革新性や日本内外での実績をプレゼンし、提携や資金調達に向けた議論が交わされた。
■共通課題を解決する
参加各社はそれぞれ、独自の技術やビジネスモデルを持つ。
世界最短期間での品種開発を武器とするCultaの吉野涼太・事業開発統括は「気候変動を上回る速さで新たな品種を安全に開発できれば、市場を問わない付加価値が生まれる」と強調。オーストラリアでは市場と開発パートナーを模索し、今後はオーストラリアのスーパーでも独自品種の農産物ブランドを展開したいと意気込む。
また、東北大学発のスタートアップで農業ロボティクスを手掛ける輝翠は、省力化と作業精度を向上する人工知能（ＡＩ）搭載の自律ロボットを紹介。戦略責任者の鶴岡富夢氏は「日豪の共通課題である労働力不足を解決できる」とアピールした。
衛星データを活用し、耕地の効率利用や土壌分析サービスを武器に海外展開を加速するサグリは、「クライアントのサプライチェーン（供給網）にオーストラリアが存在していることが多い」と指摘。石坪弘也・最高財務責任者（ＣＦＯ）によれば、今回の訪問で現地の大学と土壌データ共有の合意を得たほか、東部州の穀物最大手との協議にも進展がみられたという。
■豪市場で販売を２倍に
さらに、家畜のメタンガス排出量削減効果がある海藻カギケノリを原料とした飼料添加剤を製造・販売するサンシキは、日本の長年にわたる海藻養殖の知見や高知大学と連携した技術開発が強み。久保田遼・代表取締役は「高い生産効率を武器として、オーストラリアで販売を拡大したい」と述べた。　
一方、環境価値定量化サービスを展開するクオンクロップは、日本で展開する「マイ・エコルーラー」のオーストラリア導入を目論む。執行役員の伊地知のぞみ氏は今回、３―５社のパイロットパートナーとの連携を目指し、取り組みを加速する意向だ。
土壌の保水性を引き上げ、農業生産者に節水や施肥の効率化をもたらす超吸水性ポリマーを販売するＥＦポリマーは、今回の訪問でタスマニア州の農業資材会社とテスト販売の合意に至った。吉川弘志ＣＦＯは「現在世界で352トンの販売量を、オーストラリア市場を加えることで700トンに倍増したい」と鼻息も荒い。
このほか、オーストラリアでのプロジェクトの資金調達拡大を狙うのがグリーンカーボンだ。妹尾聖人・最高執行責任者（ＣＯＯ）は「オーストラリアは政府が炭素クレジットの筋道をつけていることが利点」と強調。すでに展開しているアジア各国での実績をアピールし出資を訴えた。
■日本ならではのアプローチ
今回参加した企業はいずれも「社会課題を解決するビジネス」を志向し、気候変動、水不足、フードロス、労働力不足、脱炭素化といった共通の課題に対し、日本ならではの技術や発想でアプローチする。
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一方オーストラリアは世界有数の農業大国でありながら、干ばつや水資源の制約、土地利用の効率化、人件費高騰と労働力不足といった構造的な課題を抱え、日本発のアグリテックが提供するソリューションへの関心は高い。オーストラリア側の参加者の一人は、「日本のスタートアップは技術水準の高さに加えて、環境負荷や社会的インパクトへの配慮が印象的」と述べた。
ジェトロの渡邉尚之・シドニー事務所長は「日系アグリテックの技術は、オーストラリアで十分にニーズがあることが分かった」と強調した。足掛かりが築かれれば日豪の連携が加速する可能性も高い。今回の訪問は、日本のアグリテックがグローバル市場に進出する際の実効性のあるモデルケースとなったようだ。

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