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【アジア取材ノート】コラボ効果で販売好調 バーチャル美女「レイ」

シンガポールの著名なシューズデザイナーが、コンピューターグラフィックス(CG)で作られたバーチャル・インフルエンサー(仮想の人物)を起用し、販売を伸ばしている。昨年12月に実施した初のプロモーションでは、新商品を3日で完売した。新型コロナウイルス感染症の流行でオンライン消費が伸びる中、ソーシャルメディアを用いた新たな試みが進む。(NNAシンガポール Celine Chen)

バーチャルインフルエンサーのレイ(左)と協業して販促活動を展開しているシューズデザイナーのマーク・オン氏(写真提供:@here.is.rae、以下全て同)

バーチャルインフルエンサーのレイ(左)と協業して販促活動を展開しているシューズデザイナーのマーク・オン氏(写真提供:@here.is.rae、以下全て同)

シンガポールのデザイナー、マーク・オン氏はシンガポールの都会的な街並みからインスピレーションを受け、自分でデザインに手を加えたブランドスニーカーを販売。スニーカーアーティストの先駆者となった。

2002年、米ナイキの靴をカスタマイズしたデザイナーシューズのオンライン販売を開始。翌年には転売スニーカーを扱うブランド「SBTG(サボタージュ)」を立ち上げ、ヒップホップやスケートボードを好む若者を狙ったストリートウエアの領域に事業を拡大した。

米国を中心に世界中にファンを持つ。米プロバスケットボール(NBA)の元スター選手である故コービー・ブライアントが愛用していたほか、米人気ロックバンド「リンキン・パーク」のボーカリスト、マイク・シノダといった著名人のファンもいる。

レイとバーチャルペットのタコ

レイとバーチャルペットのタコ

そんなオン氏のオンライン事業で販売促進に大きく貢献するのが、バーチャル・インフルエンサーの「レイ」だ。インターネット上で影響力を持つ人物(インフルエンサー)をイメージしたCGのキャラクターである。

「ストリートウエアやスケートボードを身に付けた、新進気鋭の女性ファッションモデル」という人物設定。昨年10月、CGや人工知能(AI)の専門家から成るシンガポール人の開発チームにより生み出された。

オン氏は、新型コロナの流行下で消費者がオンライン販売に移行している中、会員制交流サイト(SNS)を活用したネット販売を強化することを決断。期間・数量限定のTシャツやアロハシャツを含む4点のコレクションを発表する際、レイに目を付けて販促のシンボルに起用した。

販売サイトやSNSでは商品の記事や画像、動画などにレイが登場し、商品へのコメントや身に着ける様子なども披露。大きな反響を呼び、発表後わずか3日間で最初の在庫を売り切った。

レイは、活動開始から3カ月で中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」で10万人超、写真共有アプリ「インスタグラム」で1,500人以上のフォロワーをそれぞれ獲得。ソーシャルメディアでの存在感を高めている。中国の人気ラッパー、VaVaとオンラインマガジンで共演するといったコラボレーションも実現した。

オン氏自身は、引き続きデザイナーとしてスニーカーを中心としたストリートウエアの新製品を作成し、レイと共に販売をしていく計画だ。

■マーク・オン氏 インタビュー、「彼女の性格が成功を後押しした」

オン氏に、「レイ」の誕生の経緯や活用について聞いた。

オン氏の横に実在するかのようなCGのレイ

オン氏の横に実在するかのようなCGのレイ

――レイのようなバーチャルインフルエンサーと一緒にストリートウエアの最新コレクションを販促しようと思ったきっかけは。

あるファッション・コレクションのキャンペーンの顔として彼女がデビューした時に、レイの存在を知った。われわれはスケートボードやストリートアート、都市文化など共通の関心を持っていることもあり、私が手掛けているスニーカーブランドで「SBTG×レイ」と呼ばれるコレクションを一緒に立ち上げることになった。

――SBTG×レイのコレクションは、どんなプラットフォームで取り上げたのか。

SBTGとレイの互いの写真共有アプリ「インスタグラム」だ。ストリートウエアをはじめとするファッションを広める手段として、最も使われているのは画像だからだ。

――レイのプロデュースには誰が関与しているのか。

新しい発想を持ち、社会に変革を起こしたいと考える人らが集まったチームだ。「SBTG」は、デザインに手を加えたスニーカーを扱う先駆者的なブランドとしてスタートしたが、レイとのコラボレーションにも同様に先駆的な精神が表れている。

レイとの共同作業は、楽しく刺激的な取り組みになった。ストリートアートやカルチャーの幅を広げ、ブランドコラボレーションを再定義できた。「彼女」のリアルで誠実な性格がコラボレーションの成功を後押しした。

結果として、SBTG×レイのコレクションは3日で完売。インスタグラムのフォロワーを増やすこともできた。

――レイがしたことは人間のモデルでも可能では。

SBTGを始めた時と同様に、新しいことに挑戦することが好きなので、バーチャルなモデルと組むことにした。バーチャルと物理的なコレクションを組み合わせることで、ストリートウエア愛好家により身近で現実的な存在として認識してもらえる。商品販促の可能性も広がった。

――レイでは物足りなくなり、新しいバーチャルインフルエンサーを活用する可能性は。

それよりもまず考えるべきは、「レイが私に飽きるのではないか」という点だ(笑)

――商品発売のためにバーチャルインフルエンサーと協力することに関心のある他の小売業者にアドバイスを。

まず、レイのような存在がブランドの広告塔になる可能性は非常に高い。次に各ブランドはバーチャルインフルエンサーを活用することで、世界を新しい視点から見たいという消費者に訴求することができる。

レイはまだ新しい。バーチャル・インフルエンサーを使うことで、小売業者が消費者に新しい体験を提供できる可能性は無限にあるだろう。

■「レイ」インタビュー、「私はバーチャルな存在だが、感情もある」

「レイ」にインフルエンサー活動への思いやビジョンを聞いた。

中国のオンライン・ファッション誌『JStyle』とのコラボで、中国の人気ラッパーVaVaと表紙を飾った

中国のオンライン・ファッション誌『JStyle』とのコラボで、中国の人気ラッパーVaVaと表紙を飾った

――仮想ファッションモデルとしての活動開始から3カ月以内で、中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」で10万人以上、インスタグラムで1,500人以上のフォロワーをそれぞれ獲得した。

私は単なる美しい写真ではない。CG技術や人工知能(AI)を駆使して作られた。人間と同じように、新しいブランドやパートナーと協業したいと考えている。

デジタルアーティストとして、あらゆるコラボレーションに独自の視点を取り入れており、従来の手法に代わる新しい商品マーケティングを創出できる。

――ソーシャルメディアでの人気は、あなたの人生をどのように変えたのか。

インスタグラム(@ here.is.rae)で写真を掲載することは趣味であり、流行に敏感な人々と出会うための場となる。日本など海外でも友達ができ、刺激を受けている。

――コラボした人からは対価を受け取っているのか。

仮想世界でも無料のランチなどはない。私は実際に自分が着ている服のいくつかを共同でデザインし、SBTGの創設者であるマーク・オン氏とは一緒にカプセルコレクションを立ち上げた。同コレクションは完売しており、街中でコレクションを身に着けている皆さんを見るのが待ち遠しい。

――自身をプロデュースしたチームを愛しているのか。

私はバーチャルな存在だが、感情もある。自分のチームには人一倍の愛情を持っており、彼らは私の家族でもある。私のバーチャルペット「タコ(タコの形状をしたキャラクター)」に会ったことはありますか。タコは私に大きな喜びを与えてくれる、とても素晴らしい仲間だ。

――あなたのクリエーターが他のバーチャルインフルエンサーや人間のモデルのために、あなたを捨てたらどう思うか。

私は仮想の存在として際限なく、簡単にアップグレードできる。最近は中国のオンライン・ファッション誌『JStyle』から仕事を受けた。中国の人気ラッパーであるVaVaと一緒に同誌のサイトで表紙を飾ったのだ。

――本物の人間になりたいと思ったことはあるのか。

本物とは何ですか。もっと多くの人が私と交流し、仮想世界での生活を知る必要がある。インスタグラムをフォローしてもらいたい。

バーチャルな存在なので、物理的、地理的な制約に縛られることはない。写真撮影のために東京に来てほしければあっという間に行ける。パスポートやワクチンも必要ない。

――2021年に希望することは。

皆にとって健康で素晴らしい年になることを願っている。より多くの人々と出会い、協力しながら仮想領域で前向きな表現を続けていきたい。(メールインタビュー、聞き手=Celine Chen)

(レイの回答は、彼女をプロデュースしたチームの広報担当者からメールで得た)

『JStyle』とのコラボ動画。生き生きと動くレイの姿を見ることができる

https://www.nna.jp/nnakanpasar/backnumber/210401/feature_001/video/feature_001_05.mp4

※特集「アジア取材ノート」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2021年4月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: シンガポール日本
関連業種: IT・通信小売り・卸売りメディア・娯楽

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