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【アジアの本棚】『日米ビジネス30年史』

米中貿易戦争を見ていると、約30年前に現場の経済記者として取材した日米貿易摩擦を連想することがある。ただ、記憶がうろ覚えになっているところもあり、当時といまを比較するときのファクトチェックのため、植田統「日米ビジネス30年史」(2019年、光文社)を活用している。著者は日本航空やライブドア再生にも関わった弁護士で、本書のキャッチコピーは「日本の『失敗学』から見えてくる“平成後”のビジネス」。日本企業が圧倒的なパワーを持っていた1980年代から、現在に至る経済の動きを概観している内容で、日本の産業の回顧という意味では、NNAカンパサール2019年5月号で紹介した伊丹敬之「平成の経営」と通じるところがあるが、本書は日米で起きた経済的出来事を年表風に比較しているのが特徴だ。著者は「20世紀モデルから抜け出せない」日本企業には総じて厳しく、「利潤追求の欲望こそがビジネスの発展をもたらす」との原点に帰れと呼び掛けている。

バブル崩壊後に日本企業が迷走している間に、いまの米経済をけん引しているアマゾンやグーグルといったIT企業が大きく成長していった様子も日米を比較しつつ書いているが、私が印象に残ったのは1982年のIBM産業スパイ事件を回顧した部分だった。当時IBMは仲間を増やすためソフトウエア情報を公開、日立製作所、富士通など日本企業もIBMと互換性を持つ機種を開発していた。しかし、後発の日本製マシンが本家IBMのシェアを脅かすようになると米政府は黙っておらず、IBMの機密情報を不正に入手したとして日立や三菱電機の社員が米連邦捜査局(FBI)に逮捕される事態にまで発展した。

米国はいままた、中国の知的財産権侵害を訴え、華為技術(ファーウェイ)に代表される米国企業の脅威となりそうな企業を力で抑え込もうとしている。中国国有企業への巨額な補助金廃止も要求しているが、当時の日本の通商産業省もIBM互換機開発のメーカーに数百億円の補助金を出していた。まさに歴史は繰り返す。超大国米国は当時も今も、自らの覇権を脅かす動きには敏感だと改めて感じている。

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『日米ビジネス30年史』

植田統 著 光文社

2019年2月発行 1,700円+税

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【本の選者】岩瀬 彰

NNA代表取締役社長。1955年東京生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業後、共同通信社に入社。香港支局、中国総局、アジア室編集長などを経て2015年より現職

※特集「アジアの本棚」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年7月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 日本米国
関連業種: マクロ・統計・その他経済社会・事件

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