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【爆走、アジアの高速鉄道】上海から北京まで 1300キロを4時間24分 世界最速列車「復興号」乗車体験記

アジアで元気のいい鉄道大国といえば中国だ。日本の面積の25倍の広さを持つ国土には、約12万7000キロメートルの鉄道路線が敷かれており、そのうち時速250キロ以上で走る高速鉄道は約2万5000キロ。現在、中国鉄道の顔として活躍中の「復興号」(CR400)は、2017年6月末に登場した世界最高速列車だ。同年9月には最高時速を350キロに引き上げ、今年の4月には北京と上海、杭州間でそれぞれ巡航速度350キロの復興号を10往復と3往復まで運用拡大した。(文・写真=阿部真之)

17年6月末に運行を開始した「CR400AF」の復興号。今年4月から時速350キロの巡航運転車両を拡大している

17年6月末に運行を開始した「CR400AF」の復興号。今年4月から時速350キロの巡航運転車両を拡大している

■切符購入もスマホでラクラク

インターネットが普及した現在、中国の切符の買いやすさは日本以上だ。スマートフォンアプリの「鉄路12306」を使えば駅に行かなくても注文できる(発券は駅で行う)。中国の電話番号と銀行口座があれば、外国人でも海外から予約できる。なければ旅行会社を通じてネット予約すればいい。

日本では「はやて」や「のぞみ」といった名称で切符が買えるが、中国は列車番号しか表記していないため、どれが復興号なのか分からない。識別方法として、上海——北京間の所要時間で4時間台の列車があれば間違いなく復興号。今回乗車した「G8次」は所要時間が2番目に短い4時間24分だった。ちなみに最短の「G22次」は4時間18分で到着する。

■高速列車の駅ホーム数は30番線

30番までのホームがある上海虹橋駅。建築総面積は44万平方メートル、待合室は同時に1万人を収容できる

30番までのホームがある上海虹橋駅。建築総面積は44万平方メートル、待合室は同時に1万人を収容できる

北京行きの復興号は、空港を併設した上海虹橋駅から出発している。日本人が多く住む上海市古北エリアなら地下鉄で30分圏内の距離。ただし、中国の列車に乗車する際は、身分証と氏名が印字された切符を照合する検査と、荷物検査があり、大型連休などで混雑する時期には、発車1時間前の駅到着が推奨されている。

近年建てられた中国の建築物はどれも巨大だが、高速鉄道駅も日本の駅とは規模が違う。その象徴がホームの数。1日の列車発着数が約600本の上海虹橋駅では30番線ホーム、広州南駅では28番線ホームなどなど、各都市の郊外には20番線を超えるホームを設置する高速鉄道駅が続々と完成している。

■おススメは一等席

11年7月に設けられた「商務席」は、スイッチひとつでシートが180度フラットに変形できるいわばビジネスクラス的な存在

11年7月に設けられた「商務席」は、スイッチひとつでシートが180度フラットに変形できるいわばビジネスクラス的な存在

上海虹橋駅のホームに停車中の車両は、「CR400AF」の復興号。中国が2013年ごろから開発を進めていた量産型の標準高速車両で、日本とドイツの技術の良い所取りをした車両とされる。銀色に輝くボディーに描かれた赤いラインが中国でも人気のウルトラマンをほうふつさせる。全車両禁煙で、違反すると罰則で最大180日間の乗車禁止になる。

今回乗車した車両は1列4席の一等席(片道933元=約1万6,000円)。1編成10席の商務席(同1,748元=約3万円)と1列5席の二等席(同553元=約9,500円)との中間だ。中国では、この7~8年で中産階級がかなり増え、二等席は市民が普通に乗れる料金設定だ。切符注文の際、窓側か通路側か座席指定ができるようになったことも中国鉄道のサービス向上を感じる。

週末とあって商務席と一等席の乗車率は100%。二等席も90%は埋まっていた。旅行に出かける家族連れなどの姿が目立った。4時間台で移動できる列車は人気があり、週末は切符が取れないことも多い。

ボタンひとつでシートが180度フラットに変形する商務席に比べ、一等席は新幹線で例えるならグリーン車だが、前席との空間は約60センチメートル、シートの奥行きと横幅は47センチと身長180センチの人でもゆったりくつろげる。座席中間の肘掛けにはUSBも使える3タイプの充電電源があり、車内Wi——Fi(ワイファイ、中国の電話番号が必要、1日の通信量は600メガバイト)も利用できる。仕事で出張するなら、復興号の一等席を選べば仕事がよりはかどるだろう。

■時速350キロも安定した乗り心地

時速351キロの巡航運転を示す表示板

時速351キロの巡航運転を示す表示板

午前8時に上海虹橋駅を発車したG8次は、8分後には時速350キロに到達。このスピードで巡航がはじまった。この日の天気は時々雨の曇り空。雨風に強い高速鉄道なら滅多なことでは遅延は起きない。

時速350キロで巡航運転する復興号は、気持ちよく中華の大地を北上している。車窓の景色は、最初は水田と運河、続いて桑畑や麦畑へと変わっていく。4時間以内に長江、淮河、黄河といった大河を渡るから大した速度だ。

走行中の高速鉄道は、平地の上にまっすぐ敷設しており、山間が多い日本の新幹線と比べると、乗り心地は安定しているし揺れも少ない。トイレに席を立つときでもよろめくことなく移動できる。静かな車内では、前後席の乗客はすっかり熟睡中だ。

中国の高速列車のレベルが劇的に向上した背景として、日本を含む外国車両メーカーの技術移転を末端まで落とし込めたことと、全国の鉄道建設ラッシュで建設技術が向上したこと、IT技術の発展が挙げられる。鉄道切符も車内弁当もスマホアプリで事前注文できるし、車内Wi——Fiが普通に使える今、日本の新幹線をもしのぐ部分がある。

4時間24分の移動はあっという間に終わりを迎え、まるでつかの間の夢のような乗り心地だった。

<著者プロフィル>

阿部真之(あべ・まさゆき)2004年に中国生活をスタート。中国鉄道に魅せられて、これまで高速列車から長距離寝台列車など55万キロに乗車。著書は『中国鉄道大全~中国鉄道10万km徹底ガイド』(11年旅行人、岡田健太郎氏との共著)。17年から広州の日本人向け生活情報総合サイト「安住生活」(http://www.annjyuu.com/)で日本語情報を配信中。

※特集「爆走、アジアの高速鉄道」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2018年7月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 中国-全国日本
関連業種: 建設・不動産運輸

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