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【ASEAN】業界最大手タイ・ユニオン・グループの事業転換策とは

タイのツナ缶業界の曲がり角(5)

5月9日付NNA記事「水産タイ・ユニオン、バーツ高などで減収減益」(https://www.nna.jp/news/result/1759890)によると、タイの水産最大手タイ・ユニオン・グループ(TU)が発表した2018年度第1四半期(1~3月)の連結決算は、売上高が前年同期比5.5%減の297億300万バーツ(約1,000億円)、純利益が39.3%減の8億6,900万バーツだった。

この売上及び収益の下落の原因として、タイ証券取引所(SET)への報告によると、ツナなどの原材料価格下落を受けた価格調整による販売価格低下と、バーツ高が減収の主因。外国為替変動の影響を除外した場合でも2.8%の減収だった。純利益は、コスト管理強化や多額の為替差益などによって確保。純利益率は4.6%から2.9%に低下した。

同記事によれば、事業部門別の売り上げ比率は、ツナやサバ、イワシ、サーモン製品が47%、冷凍品やエビ関連製品が39%、ペットフードなどその他が14%。地域別では、米国が38.5%、欧州が31.7%、日本が5.0%、タイ国内が11.7%、その他が13.1%だった。

なお、この記事に記載されている同期の数値をもっと見ていくと、営業利益は前年同期比で、マイナス97.1%と大幅な減益となっている。季節変動制や年度によっての業績の振れ幅が大きいタイの水産業界ではあるが、この下がり方はかなり大きい。

■業界最大手も飲み込む低収益化の波

タイツナ缶業界における低収益化の波は、業界最大手であり、かつ世界最大のツナ缶製造会社であるタイ・ユニオンにも確実にマイナスの影響を及ぼしている。

さて、このシリーズでは、タイツ缶業界について、長期的な原料コストの上昇や人件費の上昇にあえぐ、タイツナ缶業界の現状を見てきた。特に中小のツナ缶事業者は、その影響をより大きく受けてきた。

なぜなら、中小企業であるほど、自社ブランドではなく海外の大手食品会社からのOEM(相手先ブランドによる生産)でツナ缶を製造しているため、販売価格に対する決定力が弱い。従って、仮に原料価格が上がり、人件費が増加したとしても、それを製品価格に上乗せすることは難しい。その結果、長期的に原料費や人件費が上昇する中で、利益率がどんどん圧縮され、ひいては利益が上げられない状況に陥っているのだ。

前回(https://www.nna.jp/news/show/1786609)は、そうした環境下での、タイの中堅ツナ缶事業者の収益性改善に向けた取り組みの現場を見てきた。

それでは、業界最大手のタイ・ユニオンでは、こうした状況下でどのような対応をとっているのだろうか。

■業界他社と比較して完全な勝ち組のタイ・ユニオン

それでは、まずはタイ・ユニオン・グループの、業界における位置づけを整理したい。図表1にある通り、タイ・ユニオン・グループにおけるツナ缶事業は、主に3つのグループ会社が担っている。

●Thai Union Group Public Co.Ltd. (業界1位)

●Thai Union Manufacturing Co., Ltd. (業界2位)

●Songkla Canning Public Co., Ltd.(業界3位)

Thai Union Group Public Co.,Ltdが、他の2社の株式の99.9%を保有しており、親会社とみて良い。

上記には、最大手のタイ・ユニオン・グループに属される企業が1位のThai Union Group Publicと2位のThai Union Manufacturing、6位のSongkla Canning Public が含まれている。これらのタイ・ユニオン・グループの利益率は他の企業と比較して総じて高く、3社の平均の当期純利益率は15%だ。

一方で、タイ・ユニオン・グループ3社を除いた業界平均の当期純利益率は2.0%まで下がる。同じ業界なのに、タイ・ユニオン・グループは15%で、それ以外の業界他社平均は2%と大きな差をつけられている。

■多角化を進めるタイ・ユニオン。カギは自社の独自製品開発

業界他社と比較して、利益率で圧倒的に優位にあるタイ・ユニオン・グループであるが、実は彼らの業界に対する危機感は極めて強い。

「タイ・ユニオン・グループは、もはや自らをツナ缶の会社とは思っていない。総合食品会社だと考えている」

そう答えるのは、同社営業部長のウォラウィット氏だ。実際同社の業務内容は、過去3年間を見るだけでも、既存のツナ缶加工関連事業は15年の52%から17年の46%に低下する一方で、冷凍食品事業は33%から40%まで増加している。

それ以前の期については、事業の区分けが異なっているために正確な比較ができないものの、傾向としてツナ缶事業が長期的にも低下傾向にあることは間違いない。ウォラウィット氏は言う。

「タイ・ユニオンの事業戦略としては、ツナ缶以外への多価格化を進めており、ツナ関連食品製造や、ツナ以外の食品関連等、総合食品会社へなるべく移行戦略を立てている。その際の事業上のポイントとして、他社にない製品やより独自色のある製品は我々としての重要なテーマとなっており、従って新製品開発や、R&Dには力を入れている」

タイ・ユニオンにおける新製品開発や研究開発(R&D)関連については、今まで傘下の主要3社で個別に対応していた。現在はグループ全体での包括的な開発についても力を入れ始めており、2~3年ほど前にグループ全体の開発を担うイノベーションセンターが開設された。

位置づけとしては、各社のR&Dはより製品に紐づく後期の開発に継続して従事する一方で、イノベーションセンターはより上流工程の開発を担当している。

■注目の研究テーマは「副次製品」

タイ・ユニオンにおいて、どのような研究テーマがふさわしいのかについては、事業計画部も含めて現在模索しているところだ。そうした中で、注目の研究テーマの一つが、いわゆる副次製品だ。

ツナ缶製造において、実際に商品として使うのはツナの全重量の約半分程度で、残りの50%は主に、頭や内臓、骨などで、それまではせいぜい魚のえさにする程度で廃棄処分となっていた。ところが、廃棄していた部分に宝が埋まっていることに徐々に気が付き始めた。

ツナの副次製品利用は実は古くて新しいテーマだ。昔から一般的な商品として、ツナの煮汁がある。これはツナを蒸す過程の中で出る煮汁を取り出し、それをろ過、精製、蒸留することで、濃い褐色の煮汁が出来上がる。その香りは、まさにかつおのだし汁そのもので、これがスープベースとして用いられる。

タイのツナ缶事業会社にも、提携先の日本企業から、既に20年以上前からこうしたかつおの煮汁の抽出技術を導入し、日本企業に卸してきた。

これまでは、どちらかというと日本企業からの求めに応じて取り組んできた副次産品事業に対して、最近では新たな収益化の元として積極的に取り組み始めた。

新たな副次産品で、既に実用化に移っている一例がツナの心臓だ。ツナの全重量から見るとごく小さな心臓だが、これがなんと化粧品の材料になる。製造プロセスからツナの心臓部分を取り出すのは確かにひと手間だ。ただ、そのひと手間をかけることで、今まで全く関係なかった販路に対して、それまで捨てていた部位がより高い値段で売れる。

こうして、今まで活用していなかった使い方に向けて、積極的に舵を切るようになった。特にその中でタイ・ユニオンの中で注目されているのがフィッシュオイルだ。このフィッシュオイル製造に向けての動きの中に、現在タイ・ユニオンが取り組もうとしている事業転換の肝が隠されている。次回はその内容に迫る。


関連国・地域: タイ日本
関連業種: 食品・飲料農林・水産

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