■『カレーライス進化論』
水野仁輔 イースト・プレス2017年5月発行 840円+税
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日本のカレーはおいしいなあ!
1990年代前半、北京の大学に留学していたころ、各国の留学生たちと一緒にカレーパーティーを開いたことがある。市場で調達した鶏肉や野菜などの食材を「多国籍軍」メンバーが鍋に放り込む。肝心のカレールウは日本人留学生の実家から送られてきたものを煮込む。やはり鍋で炊いたコメを皿の半分に、もう半分にカレーを盛る。いただきます、と食べ始め、冒頭のせりふがみんなの口々からこぼれた。インド式に素手で食したこともおいしさを増幅させただろうが、何といっても決め手は日本のカレールウだ。
本書によれば、インドで生まれたカレーは英国経由で約150年前に日本に入ってきた。それが独自の進化を遂げ、日本の大手カレーチェーン店は上海やニューヨークで人気。アジア各地でも受けている。北京の留学生寮でも好評だった。
日本のカレーの作り方は◇玉ねぎをアメ色になるまで炒める◇ブイヨンをひく◇長時間かけて煮込む◇スパイス30~40種をブレンドする◇カレー粉と小麦粉をオーブンで焼く◇隠し味を駆使する◇ひと晩、寝かせる——という。日本企業のモノづくりにも通じる細かさではなかろうか。
日本式カレーはアジア各国にいる駐在員の心の支えになっている、というのは言い過ぎかもしれないが、(宗教的禁忌を除き)少なくともどこの国の友人とも安心して食べられるジャパニーズ・ソウルフードとは言えるだろう。日本のカレーを知ることができる良著だ。
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ハウスは「中国でカレーを人民食へ」をモットーにしている。(本書より)
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<目次 のぞき見>
・日本のカレー、世界へ
・成長著しい上海で生き残るには
・中国版バーモントカレーの戦略
・インドからイギリス、日本へ
・カレー粉、カレールウの誕生
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<著者紹介>
水野仁輔(みずの・じんすけ)
スパイスとカレーの専門家。日本各地のイベントでライブクッキングを行い、「カレーの学校」の講師などを務める。『カレーの教科書』(NHK出版)など、カレー関連の著書は40冊を超える。
※特集「アジアに行くならこれを読め!」は、アジア経済を観るNNAの新媒体「NNAカンパサール」2017年6月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。
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