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【ディープチャイナ】鉄道VS航空:加速する旅客獲得競争

鉄道業界と航空業界の間で、顧客の獲得競争が激化している。鉄道網の整備が進み、各地で新路線の開通が相次ぐ中、国内便を飛ばす航空会社は旅客の流出を防ぐのに躍起。中にはすでに、航空・鉄道ともに競争激化の末、停止に追い込まれる路線も出始めており、消費者にとっての選択肢が増えるかたわらで、「陸VS空」の戦いはさらに激しさを増していくとみられる。【北京・森ちづる】

経営難に陥っていたエアラインの東北航空は6月末、新たに河北航空として生まれ変わった。河北省政府が、国有企業の冀中能源集団を通じて62%を出資、民間から国有エアラインとして“再生”させたためだ。河北航空の発展計画によると、2015年には営業収入を100億元(約1,350億円)以上、機材数を20機、年間の旅客輸送能力を300万人以上とする予定。同社の王社平・董事長は「20年までの、国内エアラインのトップ5入りが目標」とした上で、まずは、拠点を置く石家荘と周辺の近隣都市を結ぶ短距離路線を充実させる考えを示した。

だが一方で、同省では鉄道網の整備が急ピッチで進んでいる。06~15年までに着工した高速鉄道の事業は10件。12年までには石家荘~北京、鄭州、太原、済南間の所要時間が1時間に短縮される見通しだ。2~3年で大幅に充実する高速鉄道網が、河北航空の運営に影響するのは必至。河北航空の今後は、決して順調ではない。

■陸対空の戦い

同様の鉄道開通による航空業界への影響は、すでに昨年12月に開通した武漢~広州間を約3時間で結ぶ高速旅客鉄道「武広高鉄」でも鮮明になっている。同区間の価格が発表された同月13日、大手エアラインの中国南方航空はこれに対抗し、すぐに価格を引き下げる措置に出た。開通当日の武広高鉄の1等席は片道780元、2等席は490元だったが、同日の武漢発広州行きの航空チケットの大半は280元前後、広州発武漢行きは同330元前後まで引き下げられている。その後南航のほか、同区間を開設している中国国際航空や中国東方航空、深セン航空なども価格戦に打って出ており“鉄道VS航空”の競争は、日を追うごとに激しくなっているのが現状だ。

中には既に、高速鉄道の開通により、航空会社が撤退した例もある。昨年開通した成都と重慶を結ぶ高速鉄道では、1等席の片道価格は117元に設定。四川航空が運航する同区間の航空便の片道チケットが550元であることを考慮すると、価格は5分の1となる計算だ。さらに高速鉄道の所要時間が1時間54分なのに対し、航空機での移動は手続きや待ち時間を含めると約2時間(実質の飛行時間は45分)が必要なこともあり、高速鉄道を選ぶ旅客が急増。旅客確保のために、同区間を走る大型旅客バスが値下げに走ったことも競争に拍車をかけ、最終的に川航は同区間の運航を停止した。

■鉄道の運行停止も

もちろん逆に、所要時間と価格が釣り合わず、鉄道が運行停止に追いやられたケースもある。北京南駅と福建省福州市を結ぶ鉄道「京福動車」は今年4月、寝台車の価格が最高1,855元と高額だったことに加え、所要時間でも航空機や長距離バスと比べ優位性を示せなかったことから、開通後わずか2カ月で運行停止に追い込まれた。

両区間の所要時間は16時間だが、北京首都国際空と福州長楽空港を2時間で結ぶエアーチケットは700~1,090元。北京発の長距離バスの両都市間の所要時間は鉄道よりも5時間長い21時間だが、チケットは450~490元と安い。所要時間、価格ともに中途半端だったことが敗因となった。

このほか、湖北省武漢市の漢口と山東省青島を結ぶ高速鉄道も同月半ば、同様の理由で開通後5カ月で運行を見合わせている。

中国では鉄道部が08年末に発表した鉄道敷設計画「中長期鉄路網規劃」に合わせて、20年までに都市間を縦横計8路線で結ぶ大型事業「四縦四横」の建設が進んでいる。計画によると「四縦四横」および時速200キロ以上の旅客鉄道網の総延長は最終的に1万6,000キロメートルに達する見通しで、12年までにはこのうち1万3,000キロが開通する予定。

急速に路線を拡大する鉄道網は、これまでほぼ一人勝ちだった航空業を脅かす存在となりつつある。従来の「高いが早い航空機」、「遅いが安い鉄道」といった図式が壊れつつある中、今後は両者ともに「何を売りにするのか」が問われそうだ。(了)<全国>


関連国・地域: 中国-全国
関連業種: 建設・不動産運輸マクロ・統計・その他経済

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