タイでは5月に実施された総選挙後の混乱を経て、タクシン派のタイ貢献党を中心に、複数の親軍政党も参加する11党による連立政権が樹立された。9月に発足したセーター政権は景気を押し上げるべく短期的な景気刺激策を打ち出すものの、主要政策の本格的な実行は2024年に持ち越された。デジタル通貨1万バーツ(約4万円)の配布や、最低賃金の引き上げが国内経済にどのような影響を与えるか、「経済に強い」タイ貢献党とセーター首相の真価が問われることになる。世界的な景気が低迷するなか、タイの23年1~9月の経済成長率は1.9%と、東南アジアの主要国のなかで最低水準にとどまった。政府は国内の消費拡大に加え、中国やロシアからの観光客誘致、電気自動車(EV)の振興策などを打ち出して打開を目指している。主要産業である自動車業界では、中国勢がEVの新モデルを次々に投入し、市場を席巻した。中国系のシェアは11月時点で1割を超えており、本格的に生産を開始する24年はさらにこの勢いが強まりそうだ。