チダムバラム財務相は6日、先月31日の就任後初めて政策説明し、所得税法の遡及(そきゅう)適用見直しやインフレ封じ込め、財政赤字の削減などに努める方針を示した。特に所得税法については前のムカジー氏と正反対の立場であり、投資家の信頼を取り戻したい姿勢を強調した。
所得税法の遡及適用中止は、産業界がかねてから求めていた。財務相を一時兼任中だったシン首相に対しても、投資家の信頼回復のために必要な措置と訴えていた。ムカジー氏は適用の立場だったが、ビジネス・スタンダード(電子版)によると、新任のチダムバラム氏は「法改正を再検討する」と述べて、事実上、方針を転換させる考えを示した。すでに政府の関連部門に見直しを指示した。
この問題では英通信大手ボーダフォンが、1,200億ルピー(約1,680億円)に上る巨額の税支払いを求められる可能性があり、同社は国際仲裁に持ち込むと表明。投資家がインド投資でのこうしたリスクを嫌気する面が残っている。
■インフレ、中期的に緩和へ
インフレ圧力が続いていることについては、「あらゆる階層に影響しており、適切な措置をとる」と明言し、投資家や消費者の重荷を軽くしたいとの考えを示した。
経済指標は、7月の卸売物価指数(WPI)上昇率が7.25%、消費者物価指数(CPI)上昇率が10.02%と高水準にあり、鉱工業生産指数上昇率はすでに5月時点で、前年同月比2.4%と経済の減速をくっきりと示している。
景気を回復軌道に乗せるためにも、「財政政策と金融政策をインフレ圧力緩和の方向で一致させなければならない」と語り、中期的なインフレ抑制へインド準備銀行(中央銀行)と何らかの金融緩和策をとるよう連携していく意向を示した。
財政赤字への対処では、歳入・歳出の両面から単年度財政赤字の削減に取り組む方針で、2012/13年度(12年4月~13年3月)補正予算の策定に向けて「痛みを分かち合わねばならない」と述べた。「貧困層が救済され、富裕層が負担せねばならない」と付け加えており、負担能力のある層に理解を求めるようだ。
同財務相は、補正予算へ新たな委員会をすでに設置したと明らかにした。支出で厳しい決断を下す可能性があるという。同委員会は、赤字を劇的に減らすのは困難と周辺からみられているものの、斬新な目標を打ち出すことを期待されている。政府はこれまで、軽油の価格引き上げなどを唱えているが、政治的な反発を恐れて実際には踏み切れていない。
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