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【食とインバウンド】拡大する「サスティナブルツーリズム」

第28回

「観光需要は2022年に再び戻ってくる。」世界観光機関(UNWTO)がそう予測したのは今年6月のことでした。あれから4カ月。世界は今パンデミック(世界的大流行)の収束を見据えながら、徐々に国境を開け始めています。インバウンド事業者には明るい兆しが見え始めているのですが、さて旅行者は何を求めるようになったのでしょうか。そこで今回は、世界的に広がりを見せている「サスティナブルツーリズム」について考察します。

■持続可能な観光とは

「持続可能な観光」はさまざま形で呼ばれています。サスティナブルツーリズムのほか、「レスポンシブル(責任ある)ツーリズム」、「エコツーリズム」、「グリーンツーリズム」。これらはパンデミック前から散見された言葉ですが世界的に統一された定義はなく、カテゴリーやジャンルと言うよりポリシーやモットーといった意味合いで使われることが増えています。共通しているのは「環境に負荷をかけない観光」であること。具体的には「3R(リデュース、リユース、リサイクル)」やプラスティックフリーや地産地消といったもので、日常生活でも浸透している考えがベースになっています。

従来の観光と異なるのは、旅行者による配慮や行動が求められていることです。現地の文化を尊重し、現地の環境に配慮し、現地に貢献するといった協力的な姿勢が求められています。従来の観光産業はあくまで事業者のホスピタリティが評価軸となっていましたが、サスティナブルツーリズムでは旅行者の協力も求められるというわけです。中にはその考えがエスカレートして「(二酸化炭素を多く排出する飛行機で)飛ぶのは恥だ」とか「車がない方が幸せだ」といった過激な発言もありますが、いずれにせよ特に若い世代はSDGS(国連の持続可能な開発目標)への関心が高く、同じ旅行者にも厳しい視線で見つめています。彼らは環境保全にそれだけ真剣なのです。

■訪日して欲しいのは「グリーントラベラー」?

今年5月の「コロナ終息後の海外旅行意向調査(※1)」で、訪日旅行はアジア圏市場で首位、欧米豪市場でも首位にランクインしたというニュースがインバウンド業界で話題なりました。これは昨年12月にアジアおよび欧米豪12カ国・地域の海外旅行経験者を対象としたアンケート結果です。しかもその半年前の調査結果よりも訪日意欲が高まっていることが判明し、業界にとっては明るいニュースとなりました。

そのインバウンド業界が今後まず受け入れたいのは富裕層でしょう。客単価が高く長期滞在する傾向がある富裕層は、実際日本以外の国でも最初に戻ってくる旅行者だと見込まれています。そして日本では彼らの多くは欧米豪からの訪日客だとされており、実際パンデミック前の調査ではその傾向が見られました。そこで注目したいのは「グリーントラベラー」です。

この図は先述のサスティナブルな旅行を指向する「グリーントラベラー」について、世界1万3,188人へのアンケート調査結果をまとめたものです。国別に見るとグリーントラベラーはドイツを筆頭に欧米諸国に多く、1980年代以降生まれの若い世代に多いことが確認できます。ざっくり申し上げると、40歳以上の人の3人に1人、40歳未満の人では3人に2人くらいはグリーントラベラーであるということです。この調査結果をどう捉えるかはさまざまですが、無視するには大きい数字ではないでしょうか。グリーントラベラーを取り込むことは、訪日客の東アジア偏重、短期滞在、消費単価の低さを改善させるきっかけになるかもしれません。

■グーグルの検索条件にも「エコ」

検索エンジン世界最大手の米グーグル(米国)は9月、「グーグルはサスティナブルな旅行のオプションを見つけやすくします」と発表しました。ホテル名の横に「eco-certified(エコ認定)」と表示することで、多様化している検索ニーズに応えるというものです。グーグルの検索結果、表示内容の影響力は非常に大きいものがあります。自社のホームページへ誘導する前に、グーグルの検索結果のどこにどう表示させるのかの重要性はもはや語るまでもありません。ビジネスを成長させる必須条件の一つと言えます。

グーグルの「eco-certified」はグーグルが認定するのではなく、世界的に認知されているサスティナブル関連29団体の認定施設へ付与します。これら団体はそれぞれに認定項目を設けており、当然のことながら食についても基準があります。地産地消に取り組んでいるか、食品ロスに取り組んでいるか、そしてもちろん食にルールを持つ旅行者に対応しているかも含まれています。富裕層に人気の海外ホテルでは「2022年までにホテル内からプラスティック製品をなくす」と宣言し、プラスティック製品ゼロの厨房を擁するホテル(※2)まで登場しています。

今後こうしたサスティナブルな取り組みが日本でどこまで広がるかわかりませんが、私は楽観視しています。理由は日本の国自体がこれまでサスティナブルだったからです。サスティナブルとはいわば今まで続いてきたこと、残ってきたことです。そしてこれからも続いていく、残っていくものです。日本は食をはじめとして長い伝統文化が各地で数多く残っています。加えて世界2位の森林大国ですし、世界4位の海洋大国でもあります(※3)。そして世界一長く続く皇室の下で国として持続してきたのですから、日本は国自体がサスティナブルなのです。サスティナブルツーリズムは日本に一日の長ありなのです。

※1:DBJ・JTBF アジア欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査(第2回新型コロナ影響度特別調査)

※2:Six Senses Yao Noi

※3:日本の森林率(陸地面積に占める森林面積の割合)は経済協力開発機構(ОECD)加盟34カ国中第2位。日本領海及び排他的経済水域の体積は第4位。世界森林資源評価(FRA)の2015年版

<プロフィル>

横山 真也

フードダイバーシティ株式会社 共同創業者

プラントベースジャパン株式会社 共同創業者

キャリアダイバーシティ株式会社 共同創業者

ヨコヤマ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役

2010年日本で独立開業後、12年シンガポール法人を設立。14年ハラールメディアジャパン株式会社(現フードダイバーシティ株式会社)、19年フリーフロム株式会社(現プラントベースジャパン株式会社)、20年キャリアダイバーシティ株式会社を共同創業。
日本と海外での500社以上のプロジェクトマネージメントが評価され、16年シンガポールマレー商工会議所から起業家賞を受賞(日本人初)。著書に「おいしいダイバーシティ~美食ニッポンを開国せよ~」(ころから株式会社)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科修了(MBA)、同大学および東洋大学非常勤講師。


関連国・地域: マレーシアインドネシア日本
関連業種: 食品・飲料サービス観光マクロ・統計・その他経済

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