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医療危機、邦人に高まる不安 東南ア、コロナ急拡大(上)

東南アジアで新型コロナウイルスによる死者が急増している。域内10カ国では7月に2万2,000人を超え、前月を大幅に上回るペースで推移している。各地で爆発的な感染拡大が起きた結果、病床や医療従事者、医療用酸素などの不足が深刻化している。医療崩壊の瀬戸際に立たされている国では、在留邦人の帰国の動きが広がっている。

英オックスフォード大学の研究者などでつくる「アワ・ワールド・イン・データ」によれば、7月1~18日の死者数は、インドネシアの約1万5,100人を筆頭に、フィリピン(約2,100人)、マレーシア(1,800人)、ミャンマー(1,700人)と続く。6月末までの累計が約80人にとどまり、「感染対策の優等生」といわれてきたベトナムも、わずか2週間余りで170人超に上った。

死者数が加速度的に増えている国も多い。インドネシアは、7日間平均で6月30日に人口100万人当たり1.5人だったが、7月18日には3.7人と2.5倍に増えた。マレーシアは1.6倍の3.8人、ミャンマーは17.8倍の3.1人、カンボジアは1.6倍の1.7人、タイは2.3倍の1.3人だった。

国軍統制下にあるミャンマーでは、実態は公式統計よりはるかに深刻との指摘がある。電子メディアのイラワジによれば、最大都市ヤンゴンに4カ所ある主要な墓地では、15日だけで700人の遺体が埋葬された。慈善団体の関係者は、「埋葬を待つ遺体が、床にいくつも置かれていた」と明かす。

死者急増の背景にあるのは、感染の急拡大だ。7月1日以降に10カ国で新たに確認された感染者は123万人を突破した。これまで感染を抑制できていた国でも、ワクチン接種の遅れや、インド由来の変異株「デルタ株」のまん延などで市中感染の連鎖に歯止めがかからなくなった。各国で医療体制が圧迫され、入院できずに自宅で死亡する感染者が続出している。

■酸素需要、1カ月で数倍に

死者が増えた要因の一つが、医療用酸素の逼迫(ひっぱく)だ。国際支援団体PATHのまとめによれば、インドネシアの医療用酸素の需要は16日時点で189万立方メートルと、1カ月前の5倍程度に膨れ上がり、途上国ではブラジルに次ぐ規模だ。ミャンマーも20万立方メートルと、前月の約10倍に拡大した。インドネシアやミャンマーでは、自宅で療養する患者の家族が、酸素を確保しようと販売店の前に行列を作っている。

死者が多い国に共通するのが、医療インフラの弱さだ。世界保健機関(WHO)の直近のデータによれば、人口1万人当たりの医師の数は、日本が25人なのに対して、マレーシアは15人、タイは9人、ミャンマーは7人、インドネシアは5人にとどまる。23人と充実しているシンガポールは、7月に入って死者は確認されていない。同国では、1回以上ワクチンを接種した人は人口の7割に達しており、感染者の重症化を防いでいるとみられる。

タイの大学構内に設営されたワクチンの集団接種会場で接種を待つ市民ら=6月29日、バンコク(NNA)

タイの大学構内に設営されたワクチンの集団接種会場で接種を待つ市民ら=6月29日、バンコク(NNA)

■「#日本大使館でワクチンを」

現地在留の邦人の間で、感染に対する危機感が高まっている。インドネシアやミャンマーなどでは駐在員や家族の引き揚げが始まった。両国からは、日本への退避便も運航される。ミャンマーでは、現地の日本大使館が在留邦人に対し、帰国の可能性を検討するよう繰り返し呼び掛けている。

ヤンゴンを拠点とする日系投資会社トラスト・ベンチャー・パートナーズ(TVP)の後藤信介代表は、「爆発的な感染拡大が起きている」と話す。後藤氏の周辺でも多くの陽性者が確認されており、「感染予防はもはや難しいかもしれない。かかっても重症化しないよう免疫を高めるようにしている」。8月の全日空(ANA)便で一時帰国を予定しているという。

邦人の死亡が確認されているタイでは、ツイッター上でハッシュタグ「#在外邦人の現地日本大使館でのワクチン接種を希望します」が拡散している。

加藤勝信官房長官は16日の会見で、海外にある大使館での接種について言及。「大使館の医務官は赴任国の医師免許を持っておらず、赴任国で医療行為を行うことができない」などと説明し、実現には「さまざまな課題がある」との認識を示した。


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関連業種: 医療・医薬品マクロ・統計・その他経済

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