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【有為転変】第160回 繁栄する豪州、衰退する日本(上)

世界各国の間で、新型コロナウイルスによる激動の1年を経た直後の自国経済がどうなるか、注目されている。そこで最近発表されたオーストラリアの今年第1四半期(1~3月)の国内総生産(GDP)の伸びは、海外から見るとため息が漏れる高水準だった。対照的に日本は案の定、低迷した。日本は20年以上の経済停滞を続け、コロナ対策でもまごついてばかり。両国の政治や経済のかじ取りで、一体何が違うのだろうと気になっている。【NNA豪州・西原哲也】

まずオーストラリアだが、この国の経済回復ペースの早さには目を見張る。航空産業をはじめ観光業や留学産業などがいまだに壊滅的な打撃を受けているというのに、2日に発表された今年第1四半期のGDPは市場予測を上回る前期比1.8%増だった。

国民の消費だけでなく、企業による民間投資が5.3%増加してGDPを押し上げ、経済復興をけん引した形だ。本年度の成長率予測は4.25%にまで回復する見込みというから驚く。まるでコロナ禍など、かすり傷だったかのような印象だ。

■豪労働者の6割が受給者

こうした経済回復ぶりの背後にあるのは、昨年のコロナ禍を通じて、国民が受ける経済的痛みを最小限に食い止めようという連邦政府の手厚い支援パッケージだ。

オーストラリア政府は、給与補助の「ジョブキーパー」、失業者支援の「ジョブシーカー」、住宅改修支援の「ホームビルダー」といった直接的な支援パッケージを充実させた。その規模は、実に約2,500億豪ドル(約20兆円)に上る。

オーストラリアのGDPが約1兆9,000億豪ドルなので、GDP総額の約13%を国民に「直接」配布したということになる。

ジョブキーパーは当初、1,500豪ドルを支給。ジョブシーカーは特別給付金に上乗せし、計716豪ドルを支給した。1回限りではなく、共に隔週での給付だ。

オーストラリア人口は約2,500万人だが、労働人口は1,307万人いる。そのうち、ジョブキーパーを受給した労働者は一時380万人に達した。

さらに25~34歳の若年齢で見ると、今年1月までの1年間で、若年齢手当てなどを含めて何らかの生活補助金を受けていた割合は約50%だった。エネルギー溢れる若者世代の2人に1人が生活補助金に頼ったのだ。この上に、ジョブシーカーの受給者190万人を含めると、労働人口の60%近くが受給者だったという計算になる。

筆者の周囲のオージーたちの間では、その子どもたちの高校生(!)や大学生などまでも、一定期間アルバイトをしていれば受給対象となったために、「ジョブキーパー成り金」となる若者たちも続出していた。しかも、それは問題にさえならなかった。

この驚くべき大盤振る舞いは、連邦政府による政府債発行を急激に増やしたことが背景だ。

連邦政府の累積債務額はコロナ前は3,700億豪ドルだったのが、6,175億豪ドルまで増加する。これにより累積債務比率は、19年の47.5%から、来年には77%にまで拡大する見込みだ。

第1四半期 GDPの堅調な伸びを自負したフライデンバーグ財相(豪政府提供)

第1四半期 GDPの堅調な伸びを自負したフライデンバーグ財相(豪政府提供)

それでも、こうした大盤振る舞いが、前代未聞の危機にある中で経済を下支えしたのは疑いようがない。4月の失業率は5.5%と、6カ月連続で改善し、倒産件数も増えていない。フライデンバーグ財相は「我が国経済は、コロナ流行前の水準よりも大きくなった」と自負した。見事な回復ぶりだと称賛すべきだろう。

■乏しい日本のコロナ支援金

その一方で、日本の状況は案の定だ。第1四半期の実質GDP成長率は前期比マイナス5.1%と、大方の事前予想を大きく下回った。同時に発表された2020年度の成長率も同マイナス4.6%と、2年連続のマイナス成長になった。これは1995年以降で最大の下落幅だ。

4月の完全失業率は2.8%と悪化した(まだ2%台と低いのは、海外とは失業率の計算方法が異なるためだ)。雇用への圧力が厳しくなっているのは、オーストラリアとは対照的である。

だが日本政府も、コロナ禍で支援は行った。

日本政府は昨年当初、コロナ関連の「事業規模」が108兆円とGDPの20%に相当する過去最大規模だと自負した。確かに欧米ではGDPの1割程度で、NZは4%、オーストラリアでさえ17%程度だ。

だがコロナ関連の純粋な真水は補正予算である。これまでに日本政府が第3次まで組んだ補正予算を合計すると、約70兆円だ。しかし、コロナとは直接関係のない事業費も紛れ込んでいるのが日本のコロナ予算の特徴で、純粋にコロナ関連補助金のGDP比率は3%程度だろうと勘ぐっている。

直接的に個人に給付するのは、「緊急定額給付金」(全員に1人10万円)や、「住居確保給付金」(条件付きで最大約7万円)などがあり、1回限りの給付で、ジョブキーパーとは有効性が全く異なる。

「雇用者調整助成金」など、企業向けの支援金も複数あるものの、売り上げ減少幅の条件や手続きなどが非常に複雑になっている。オーストラリアが、コロナ禍からわずか1カ月程度の間に矢継ぎ早に打ち出した、シンプルで分かりやすい支援策の数々とは雲泥の差だ。(来週に続く)


関連国・地域: オーストラリア日本
関連業種: マクロ・統計・その他経済社会・事件

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