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【アジア取材ノート】 アジアの愛犬まっしぐら タイ発昆虫ペットフード

タイで、昆虫のタンパク質から作ったペットフードが登場した。昆虫は食品工場などから出た食品廃棄物を餌に育てる。飼育段階で二酸化炭素(CO2)の排出が多い牛や鶏などの動物肉よりも環境負荷は小さいとされ、広がりつつある。新型コロナウイルス禍の中、ペットの飼育が増えていることも追い風になりそうだ。(NNAタイ Chalermlapvoraboon Valaiporn)

昆虫の幼虫のタンパク質を使ったペットフードを開発した、オルガフィード共同創業者のペッチ氏(左)とイティコン氏=2020年11月25日、タイ・バンコク(NNA撮影)

昆虫の幼虫のタンパク質を使ったペットフードを開発した、オルガフィード共同創業者のペッチ氏(左)とイティコン氏=2020年11月25日、タイ・バンコク(NNA撮影)

タイのスタートアップ企業オルガフィードは昨年、昆虫のタンパク質を取り入れたドッグフードブランド「Laika(ライカ)」を発表した。

原料は昆虫由来のタンパク質パウダー、タイ産赤米「ライスベリー」、玄米、魚油、昆虫油など全て自然由来で、人工的な添加物は使用していない。2種類のフレーバーがあり、価格は80グラム入りで150バーツ(約515円)。国立カセサート大学やマヒドン大学の研究者と共に開発した。

中核となる昆虫の成分は、ハエの一種であるアメリカミズアブの幼虫から採取している。この幼虫は幅広い有機物を分解してタンパク質を蓄える特性を持ち、これまでも鳥や養殖魚の餌として使われることがあった。また、成虫になると食べ物にはほとんど寄り付かず、人や家畜への害や病原体を媒介する危険も少なく扱いやすいとされている。

昆虫の印象を薄めたお洒落なパッケージと内容物(オルガフィード公式サイトより)

昆虫の印象を薄めたお洒落なパッケージと内容物(オルガフィード公式サイトより)

製品はビタミン主体の黄色、タンパク質主体の青色の2種類ある=20年11月29日、タイ・バンコク(NNA撮影)

製品はビタミン主体の黄色、タンパク質主体の青色の2種類ある=20年11月29日、タイ・バンコク(NNA撮影)

幼虫の餌として、果汁飲料メーカーや食品加工会社が廃棄する果実や野菜の残りかすを毎月50トン調達している。餌が残った場合は堆肥を作り、有機栽培農家などに販売することで食品廃棄物を全て再利用している。

国連食糧農業機関(FAO)は、世界の人口増加に伴う食糧生産が環境に負荷を与え、農地や水、森林、漁場の生物多様性への影響が懸念されると指摘するが、昆虫食は環境面や栄養価の優位性も注目される。

環境面ではオルガフィードによると、畜産で10キログラム分のタンパク質を生産するのに必要な水は牛が30万リットル、鶏が14万リットルなのに対し、アメリカミズアブの幼虫は30リットルで済む。また飼育過程で排出する二酸化炭素(CO2)も牛が1,500キロ、鶏が600キロなのに対してアメリカミズアブの幼虫は60キロにとどまる。

栄養価ではタイ保健省によると、昆虫食100グラムに含まれるタンパク質は27.6グラム。一方、同量の豚肉、鶏肉、マグロ肉の場合はそれぞれ19.5~24.9グラムに過ぎないという。オルガフィードの共同創業者のペッチ氏とイティコン氏は「われわれのビジネスモデルは、タンパク質を持続的に生産するための選択肢だ」と話す。

ドイツの調査会社スタティスタのデータでは、2021年の世界とタイのペットフード市場規模は、それぞれ前年比6%増の1,029億米ドル(約10兆7,000億円)、11%増の12億米ドルになると予想される。タイはペットフードの生産国でもあり、20年の輸出額は前年同期比19%増の20億米ドル(タイ商務省)と好調だ。

■「ペットに昆虫」抵抗感も、持続可能性と環境保全訴え

オルガフィードは、金融業界出身者の2人が17年に設立。タイの食品廃棄物の問題に関心を持っていた両氏は、アメリカミズアブの幼虫が蓄えるタンパク質と有機物を幅広く分解する特性に課題解決の可能性を見いだした。

タイ天然資源・環境省公害管理局(PCD)によると、タイの19年の都市ごみ排出量は前年比3%増の2,870トン。このうち1,260万トンが資源としてリサイクルや堆肥化されたという。だが、1,030万トンが埋め立て処分され、依然として廃棄物処理は改善の余地がある。

 原料となるアメリカミズアブの幼虫(オルガフィードのSNSサイトより)

原料となるアメリカミズアブの幼虫(オルガフィードのSNSサイトより)

原料となるアメリカミズアブの幼虫(オルガフィードのSNSサイトより) 原料となるアメリカミズアブの幼虫(オルガフィードのSNSサイトより)

オルガフィードはライカ発売前の19年、地域の適切な廃棄物管理につながる事業を展開するスタートアップ企業のコンテスト「ウェイスト・ランナー」で最優秀賞を受賞した。

同コンテストの最終ラウンドでイティコン氏は、アメリカミズアブの幼虫を使った食品廃棄物の分解とタンパク源として使うビジネスモデルを全国に広げたいと語っており、その後のペットフードの商品化につなげた。

ペッチ氏は、タイ国内での販路拡大は商品への理解を深めてもらう必要があると話す。タイには特定の昆虫を食べる文化はあるが、ペットフードに昆虫由来のタンパク質を使用することには抵抗感を持つペットオーナーが多いという。飼い主の意識を変えるため、長所である持続可能性や環境保全の観点から訴えていく方針だ。

ライカの売り上げについては、販売を始めたばかりのため非公表としつつも「その数字は伸びている」とペッチ氏。新型コロナ禍のステイホームによるペット需要の拡大も追い風になりそうだ。今後は21年に1,100万バーツ、22年が3,300万バーツ、23年に4,500万バーツを目標に掲げている。

今年後半にも輸出を始める計画で、5年以内に昆虫食のペットフード市場がある米国や欧州への出荷を目指しているという。年内には食品廃棄物の調達量を月130トンに増やし、幼虫の飼育増にも力を入れる方針だ。

オルガフィードの共同創業者2人は今後さらに商品ラインアップを充実させ、ペットオーナーが環境に良い影響を与えられる選択肢を増やしたい考えだ。「持続可能性(の追求)はトレンドではなく、時代の変化だ」と語った。

※特集「アジア取材ノート」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2021年3月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 日本
関連業種: 食品・飲料マクロ・統計・その他経済社会・事件

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