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【アジア取材ノート】巣ごもり需要で強さ発揮 コロナ禍の第4次韓流ブーム

新型コロナウイルス感染症の流行で、外出自粛を余儀なくされた2020年。いわゆる巣ごもり需要で、韓国ドラマの人気が世界的に高まった1年でもあった。日本も例外ではなく、ラブロマンス作『愛の不時着』が大ヒット。音楽業界ではNiziU(ニジュー)、JO1(ジェイオーワン)など、韓国の制作フォーマットを取り入れた“日本版K―POP”が新風を巻き起こした。コロナ禍で起こった「第4次韓流ブーム」の背景に迫る。(NNA韓国=中村公、坂部哲生、NNA東京編集部=古林由香)

人気俳優ヒョンビン、ソン・イェジン主演の『愛の不時着』。年末恒例「現代用語の基礎知識選 2020ユーキャン新語・流行語大賞」にも「愛の不時着/第4次韓流ブーム」としてノミネートされ話題に(スタジオドラゴン提供)

人気俳優ヒョンビン、ソン・イェジン主演の『愛の不時着』。年末恒例「現代用語の基礎知識選 2020ユーキャン新語・流行語大賞」にも「愛の不時着/第4次韓流ブーム」としてノミネートされ話題に(スタジオドラゴン提供)

「韓国ドラマは初めてだったが、胸キュンが止まらなかった。大阪の北新地かいわいでも口コミで評判が広がり、韓流に興味のないおじさん連中もすっかり魅了された様子だった」。大阪市内で空調設備会社を営む50代男性がこう熱く語るのは、韓国ドラマ『愛の不時着』のことだ。

動画配信大手の米ネットフリックスが日本で独占配信する本作は、パラグライダー中に北朝鮮に不時着した韓国の財閥令嬢と、北朝鮮の将校が主人公。南北問題とロマンスを絡めたストーリーと、主演2人の好演が視聴者の心をキャッチ。配信が始まった今年2月後半から9月まで、同社の日本エリアでの人気ランキングで首位を独走した。

また、3月から配信開始した『梨泰院クラス』は、ドラマ『半沢直樹』に通ずる痛快な復讐(ふくしゅう)劇として評判が広まり、こちらもランキングの上位をマーク。コロナ禍で自宅にいる時間が増える中、この2作品は韓国ドラマに関心を示してこなかった中高年男性も取り込み、「第4次韓流ブーム」を巻き起こすきっかけとなった。

海外のネットフリックスに目を向けても、韓国ドラマの好調ぶりは顕著だ。癒し系ラブロマンス『サイコだけど大丈夫』が香港・台湾などアジア各国・地域での1位を獲得。これまで鬼門とされてきた米国でも韓国ドラマが上位に食い込み、米紙ワシントン・ポストやタイム誌も人気の高さを伝えるなど、その勢いは止まらない。

■ドラマ輸出額は日本の8倍、配信サービスでさらに拡大

韓国文化体育観光省によると、韓国ドラマの輸出額は18年時点で年間2億4,190万米ドル(約256億円)に達している。これは日本ドラマ(3,148万米ドル=総務省)の約8倍と、その差は歴然だ。新型コロナの流行で動画配信サービスが根付いた20年以降は、輸出額がさらに拡大すると予想されている。

韓国ドラマの世界的ブームを語る上で外せないのが、韓国最大手の制作会社で財閥CJグループ傘下のスタジオドラゴンの存在だ。放送事業や映画配給などを行うCJ ENMのドラマ部門が独立して16年5月に設立された。歴史はまだ浅いが、潤沢な資金力をバックに制作会社4社を傘下に取り込みながら事業規模を拡大。他局からの転職組を中心とした優秀なプロデューサーや人気の脚本家など約230人のクリエーターを自前で抱え、ハイクオリティーなドラマを年間30本ほど量産する。『愛の不時着』『サイコだけど大丈夫』も同社が手掛けた。

ドラマ制作だけにとどまらず、企画や資金調達、流通まで一括で手掛けられる事業構造も特徴で、日本のドラマ制作会社のようなテレビ局の「下請け的存在」ではなく、世界に売り込める力がある。

その制作力に目を付けたのがネットフリックスだ。19年11月に株式5%を1,080億ウォン(約100億円)で取得し、20年からの3年間で21本のドラマの配信や制作で協力する契約を結んだ。

ネットフリックスが韓国ドラマを独占配信し、スタジオドラゴンは配信権譲渡で得たまとまった収入を元手に次の作品に再投資する。このような両社の協業が加速すれば、1作品100億~300億ウォンほどに上る韓国ドラマの制作費はさらに巨額化するとみられる。

スタジオドラゴンのカン・チョルグ共同代表は「全世界的に動画配信サービス『オーバー・ザ・トップ(OTT)』が人気を得ているが、その傾向は新型コロナの流行で加速している。K―POPが動画配信サイト『ユーチューブ』のプラットフォームを介して広がったように、グローバル動画配信サービスが韓国ドラマの世界的な普及に貢献してくれれば」と期待を寄せる。

■史上最速で紅白出場、日韓ハイブリッドのNiziU

東京・渋谷など国内外4カ所で展開するファッションビル「SHIBUYA109」のクリスマスキャンペーンに起用されたNiziU(SHIBUYA109エンタテイメント提供)

東京・渋谷など国内外4カ所で展開するファッションビル「SHIBUYA109」のクリスマスキャンペーンに起用されたNiziU(SHIBUYA109エンタテイメント提供)

音楽業界では、K―POPの制作フォーマットに日本人アーティストを掛け合わせた“日本版K―POP”旋風が巻き起こった。その中心にいるのがNiziU。韓国の芸能事務所、JYPエンターテインメントと日本のソニー・ミュージックエンタテインメントによるアイドルオーディション番組『Nizi Project』から誕生した日本人ガールズグループだ。

動画配信サービス大手「Hulu(フールー)」や日本テレビ系の朝の情報番組で、選考過程に密着した様子が放送されたのが今年の1月から6月まで。緊急事態宣言が全国に発令され、ステイホームの時期と重なったことが幅広い世代の巣ごもり需要に結びついた。

小学5年生と中学1年生の娘と一緒に番組を観ていたという東京在住の40代女性は、「デビューという夢に向かってひたむきに努力する参加者の姿に、コロナで沈んでいた心が元気づけられた。周囲のママ友もみんな親心で参加者を応援していた」と振り返る。

6月に配信されたプレデビュー曲『Make you happy』はK―POPらしいキャッチーなメロディーと、躍動感のあるダンスが特徴。同曲のミュージックビデオは、ユーチューブでの再生数が1億7,000万回以上という新人としては異例の記録を達成。12月2日のCDデビューを前に『第71回NHK紅白歌合戦』への初出場も決定した。

本企画の総合プロデューサーを務めたJ.Y. Park(パク・ジニョン)の名コーチぶりも、働く世代を中心に注目を集め、新しいK―POPリスナーを取り込むことに成功した。

対象を15~24歳に特化したマーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab.(シブヤイチマルキューラボ)」の長田麻衣所長は「この2、3年、アイドルオーディション番組から結成されたグループが若者からの注目を集めている。推し(応援する人)が成長していく過程を見ることで親近感が生まれ、応援したい気持ちへと繋がる。彼・彼女らの応援したい気持ちからくる消費意欲は非常に高く、この“応援消費”は今の若者の特徴的価値観のひとつ」と分析する。

■CJ ENMと吉本興業がタッグ、オーディション番組で新アイドル

K-POPとJ-POP双方のファンから支持を得ているJO1。11月25日に発売したファーストアルバム『The STAR』はオリコンの24日付デイリーアルバムランキングで1位を獲得=10月5日、東京・中央区(NNA撮影)

K-POPとJ-POP双方のファンから支持を得ているJO1。11月25日に発売したファーストアルバム『The STAR』はオリコンの24日付デイリーアルバムランキングで1位を獲得=10月5日、東京・中央区(NNA撮影)

韓国発のアイドルオーディション番組で、CJ ENMと吉本興業が日本版として19年に共同制作した『PRODUCE 101 JAPAN』も好例だ。視聴者が“国民プロデューサー”となって票を投じ、デビューメンバーを直接選ぶという韓国版のフォーマットを踏襲。日本人男性11人で構成されたJO1が20年3月にデビューを飾った。

「世界の頂点を目指すグローバルボーイズグループ」を標ぼうし、楽曲制作やダンスの振付師、ミュージックビデオの制作には、韓国出身の一流どころを起用。また、今年6月に開催され、世界153カ国・地域から405万人以上の視聴者を集めたCJ ENM主催のオンライン音楽イベントに、日本からの唯一のグループとして参加。コロナ禍の逆境の中でも、着々と世界進出への足場を固めている。

『PRODUCE 101 JAPAN』は第2弾の制作が早くも決定し、11月3日に都内で概要発表会見が行われた。21年に開催される『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』では、ニューメディアとコラボした新システムを審査などに導入すると説明。ウィズコロナ時代に合わせ、デジタルを活用したオーディションとなる模様だ。

『冬のソナタ』の“ヨン様”が火付け役となり、第1次韓流ブームが起こったのが03年。20年に生まれた第4次韓流ブームは、新型コロナという不測の事態を追い風にし、視聴者層を広げ、消費者を熱狂させた。「韓流なんて」という観念はすでに時代遅れだ。

『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』の“国民プロデューサー代表”こと番組進行は、前作に引き続きお笑いコンビのナインティナイン=11月3日、東京・港区(NNA撮影)

『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』の“国民プロデューサー代表”こと番組進行は、前作に引き続きお笑いコンビのナインティナイン=11月3日、東京・港区(NNA撮影)

※特集「アジア取材ノート」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2020年12月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 韓国日本
関連業種: メディア・娯楽社会・事件

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