• 印刷する

【農業通信】豪州へ届け、日本のICHIGO 地元産との共存探る

今年9月に日本のイチゴがオーストラリアに輸出可能になったことを受け、在豪日本人関係者が動き出した。現在オーストラリアのイチゴの年間市場供給量は約7万トン。そのうち輸入品はわずか2トンに過ぎない。ほぼすべてが豪州産のストロベリー市場に、日本産のイチゴを参入させる構想だ。「甘いイチゴ」を知らないオーストラリアの消費者は、プレミアムの付く日本のICHIGOを受け入れるだろうか。【ウェルス編集長・湖城修一】

日本政府は今年、農産品輸出額を2025年までに5兆円と、これまでの実績の5倍超となる新たな目標を掲げた。推進役となる農林水産省は、特に果物は味で品質の絶対的な差違を訴求することが可能とみて、ブランド化を成功させ安定的な取引を期待する。

その状況の中、日本産イチゴの豪州向け輸出の取り組みの第一歩として今月6日、在豪の業界関係者やシドニー、メルボルンの領事館関係者による協議が実施された。オーストラリア市場の状況把握や輸出の課題を整理、共有するのが目的だ。

■「ストロベリー」とは別物

協議では、イチゴは温度の変化に敏感で、輸送時の温度管理が最も重要という指摘が出た。日本の生産時期は南半球の真夏に当たり、途切れのないコールドチェーンが必要となる。両国をつなぐ輸出入業者も不可欠だ。一方で、すでに日本からアジア諸国への輸出は実績があり、技術や知見の共有が有効という意見も出た。

販売ターゲットの設定も重要だ。オーストラリアで一般に流通している「ストロベリー」とは別の「ICHIGO(イチゴ)」としてブランド化、高級レストランなど「価値を理解できる客層」に対し展開していく方法が提案された。一方で日本食レストランや日本食材店から浸透を図るというアイデアもあった。

さらに、輸出に興味を持つ日本の生産者の発掘も課題として挙げられた。オーストラリア市場に目を向ける地方自治体とのタイアップも効果があるとの指摘もあった。

■価格差10倍以上の和牛

オーストラリアの2019年のイチゴの生産量は7万6,604トン、前年比18%減だった。平均価格は1キロあたり5.12豪ドル(約390円)で、前年に比べ7.7%上昇した。一方で日本での2019年の平均価格は同1,848円(東京都区部)。日豪の価格差は、現在のレートで4倍以上だ。この差をいかに付加価値で埋めることができるかが今後の課題となろう。

(2019年・ホートイノベーションの資料を基にNNA作成)

(2019年・ホートイノベーションの資料を基にNNA作成)

実際にプレミアム・ブランド食品としてオーストラリア市場で販売されている日本産和牛を例にみると、オーストラリア産牛肉の小売価格は1キロ当たり20.64豪ドル(豪統計局, 2019年)。それに対し日本産和牛(A5)の小売価格は同250~500豪ドル(NNA調べ)で、実に10倍以上の価格差で販売されている。2018年に日本産牛肉のオーストラリア向け輸出が17年ぶりに再開され、昨年来豪した日本畜産物輸出促進協議会関係者は「和牛で大きなシェアは狙っていない。パーティや記念日といった特別な行事で味わってもらいたい」と語っている。

■豪生産者、共存可能

オーストラリアの生産者は、日本産イチゴの輸入を比較的冷静に受け止めているようだ。昨年6月にオーストラリア農業省が日本産イチゴの輸入を認める方向とした際、青果大手コスタ・グループは「日本のイチゴの輸入を認め、オーストラリア産ブルーベリーの輸出交渉に進展が期待できる」と交渉材料として認めるとした。

また、業界団体のオーストラリアン・フレッシュ・プロデュース・アライアンス(AFPA)も「日本産のイチゴは高級品として扱われ、大量の輸入は行われない」と予想し、共存は可能との見方をしている。

オーストラリアはすでに、バイオセキュリティー上に問題がない限り、ニュージーランドや米国、韓国からイチゴの輸入を行っている。


関連国・地域: オーストラリア日本
関連業種: 食品・飲料農林・水産マクロ・統計・その他経済

その他記事

すべての文頭を開く

テイクオフ:オーストラリアでも新型…(12/04)

豪10月貿易黒字、前月比28%増 鉄鉱石輸出が押し上げ(12/04)

住友商事、豪穀物子会社エメラルドを売却(12/04)

JAL、成田発メルボ着便を12月に4便運航(12/04)

川重が世界初の輸入ターミナル、豪水素向け(12/04)

第8次電力開発計画、来年1月以降に承認(12/04)

RBA総裁「国内経済危機は峠を越えた」(12/04)

豪政府の所得税減税策、税収540億$減少へ(12/04)

すべての文頭を開く

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。

の記事は有料サービスご契約者様限定記事です。契約すると続きをお読みいただけます。契約されている方は、画面右側にある各種ログインからログインください。
無料トライアルはこちら
購読申し込みはこちら

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン