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【アジア取材ノート】ミャンマー自慢のマンゴー  甘い「ダイヤ」輸出に脚光

ミャンマー人が誇る国産マンゴーの輸出が増加している。糖度が高い固有品種「セインタロン」の知名度が高まり、中国、シンガポールなどを中心に引き合いが強まっていることが背景だ。ドライマンゴーなど年間を通じて販売できる加工品の商品化も徐々に進み、日本を含む新市場をにらむ動きも出てきている。(取材・写真=共同通信ヤンゴン支局 齋藤真美)

市場に出回り始めた2020年産の国産マンゴー。全て独自品種のセインタロンで価格は4個3,000チャット(約223円)。新型コロナウイルス感染症が拡大する中、従業員や客はマスク姿が目立つ=20年4月、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)

市場に出回り始めた2020年産の国産マンゴー。全て独自品種のセインタロンで価格は4個3,000チャット(約223円)。新型コロナウイルス感染症が拡大する中、従業員や客はマスク姿が目立つ=20年4月、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)

ミャンマー産マンゴー(生果実)の輸出は2016年以降、右肩上がりが続いている。民政移管で市場が開放されてから、東南アジア諸国連合(ASEAN)の近隣国産より高い糖度や濃厚な味、香りの良さが評価されるようになった。

ミャンマー・マンゴー市場技術振興協会(MMMTDA)のチョー・ソー・ナイン事務局長によると、ミャンマーは約190種ものマンゴーが生育するというマンゴー王国。その中で圧倒的な知名度を誇る品種が、ミャンマー語で「ダイヤモンドのひと粒」という意味を持つ「セインタロン」だ。北西部のザガイン管区、北東部シャン州などで栽培される。

同協会によると、18年のマンゴー輸出量は3万2,800トンで17年を6%上回った。輸出額は1,159万米ドル(約12億1,900万円)だった。国別統計はないものの、国境を接する中国の雲南省とその近辺に8~9割が出荷され、シンガポールが続くと同協会は推定する。政府は農業分野の貿易収入を増やすため、マンゴーの輸出競争力を高めて中国以外にも販路を拡大したい考えだ。

スーパーの青果売り場に並ぶマンゴー。手前右と中央がセインタロン。GAP認証取得済みの商品で1個(300~400グラム)当たり800チャット。大サイズ(400グラム超)は同900チャット=20年4月、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)

スーパーの青果売り場に並ぶマンゴー。手前右と中央がセインタロン。GAP認証取得済みの商品で1個(300~400グラム)当たり800チャット。大サイズ(400グラム超)は同900チャット=20年4月、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)

地場企業ミャンマー・ゴールデン・プロデュース(MGP)は、12年にマンゴーの生果実輸出を始めた。シンガポールが最大の仕向け先となる。同社のサイ・アウン・チョー・サイモン事業開発担当取締役は「価格だけの勝負はできない」と、農薬や化学肥料を使わないケミカルフリー栽培のセインタロンを空輸。富裕層を主なターゲットに、1キロ当たり8米ドル以上の高値で売りさばく。18年は700トンを輸出、19年はセインタロン以外の品種も含め1,500トンと実績を伸ばした。

シンガポールに輸出する箱入りのマンゴーを紹介するMGPのサイ・アウン・チョー・サイモン氏。手前右側の缶はピューレ=19年7月、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)

シンガポールに輸出する箱入りのマンゴーを紹介するMGPのサイ・アウン・チョー・サイモン氏。手前右側の缶はピューレ=19年7月、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)

「セインタロンは、ミャンマー人が誇るべき果物」。民政移管前はシンガポールで働いていたサイモン氏は、ミャンマー産マンゴーを取り寄せて仕事相手に味わってもらいながら、マンゴービジネスの可能性に思いを巡らせていたという。

ミャンマーのマンゴー収穫期は例年4~8月(セインタロンは6月末まで)。生果実の出荷も同時期に限定されることから、16年からは首都ネピドーで加工工場を稼働。ドライマンゴー、洋菓子などに使われる業務用ピューレを年間を通じて製造し、遠くロシアまで販路を伸ばしている。

MGPがロシアにも輸出するドライマンゴー=19年7月、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)

MGPがロシアにも輸出するドライマンゴー=19年7月、ミャンマー・ヤンゴン(NNA)

■加工場建設や収穫作業、新型コロナ拡大で難航

マンゴーは日本でもコンビニエンスストアやカフェのデザート、洋菓子の材料として広く使われる人気の素材だ。滅菌のための薫蒸処理などで検疫上の課題があり、生果実での輸入が解禁されていない日本でも加工品に商機を見出す動きがある。

食品の輸出入・販売を行うFWジャパン(神戸市)は昨年秋から、マンゴー産地に近い中部マンダレーでセインタロンのカットフルーツを生産する工場の建設を進めている。業務用として日本や韓国に冷凍で輸出する計画だ。

福井祐雄代表は、セインタロンについて「単に糖度が高いだけでなく、甘みに上品さがある。日本市場の主流であるタイ産、フィリピン産、メキシコ産を上回る良質なマンゴーだ」と太鼓判を押す。

「ミャンマーでは日本基準の衛生管理を行える生産委託先を確保することが難しい一方、自前の施設を構えれば、人件費は東南アジアで最低水準に抑えられる」(福井代表)。工場建設は収穫期が始まる今年4月の竣工を目指して進展。通電、インターネット回線、床のコーティングなどの施工も完了させた。しかし、今年に入って中国・武漢に端を発した新型コロナウイルス感染症がアジア全域で拡大。中国製の生産設備の搬入・設置が計画より遅延したほか、3月にはミャンマーへの外国人入国禁止措置も発令され、同社スタッフの入国が難しくなるなどの影響が出ているという。現在は竣工を延期し、入国禁止措置の解除に備えて態勢を整え直す。

ミャンマーの農産物輸出に対する新型コロナウイルス感染症の影響では、2月にスイカの対中輸出の激減が大きく報じられた。輸出量と並んで激しい値崩れも話題となった。スイカのシーズンは5月まで。今年は80万トンの輸出を目標にしていたが、目標の達成はほぼ不可能となっている。

国内で1シーズンに収穫されるマンゴーの量は約70万トンに上る。輸出が増えたとはいえ、3万トン余りとまだ一部に過ぎない。政府は、輸出向けマンゴー生産者に適正農業規範(GAP)認証の取得を義務付けるなど取り組みを強化するほか、マンダレーにバイヤーを招いた見本市なども開催しているが、出荷時の選別や品質管理、物流などの課題は多く、世界の主要なマンゴー生産国のように輸出を本格化させるまでの道のりは長い。

MMMTDAのチョー事務局長によると、マンゴー市場には現時点まで新型コロナウイルス感染症の影響は出ておらず、「20年の需要も伸びるとみている」。中国と国境を接する北東部シャン州ムセへの輸送も順調だ。ただ、感染拡大防止のためのミャンマー国内の外出規制により、収穫を行う労働者の確保が難しくなっているという。

※特集「アジア取材ノート」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2020年4月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: ミャンマー日本
関連業種: 食品・飲料農林・水産サービスマクロ・統計・その他経済

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