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【アジアの本棚】『中国人は見ている。』

中国での新型コロナウイルス感染症の流行初期に、日本の団体が贈った支援物資の箱に「山河異域・風月同天」(国土は違っても、風や月は同じだ)と記して、中国側で好評だったという話があった。

日中は漢字という共通文化を持ち、(欧米人などに比べれば)何となくコミュニケーションを取りやすい、理解しやすいという感覚が(少なくとも日本側には)あるような気がする。しかし、実際はいくら距離が近くても異文化は異文化である。

筆者は中国に詳しいベテランジャーナリスト。本欄でも著作を紹介したことがあるが、今回は日中双方が感じている生活に根差した微妙な「違和感」(この日本語の単語は最近中国でも使われるようになったという)を豊富な事例で取り上げている。

日本では、お祝いの金額は「割り切れないように」奇数が普通だが、中国では偶数の金額が好まれる。日本人がよくやる「ほんの気持ち」程度のささやかな贈り物は中国人の心には響かず、「いざという時にドーンと高価なものを贈る」方が好まれる。

かと思えば、「中国人は赤い下着を好む」とか「白いドレスは縁起が悪いとされる」というのは日本人の思い込みに過ぎず、中国の若い世代はかなり感覚が変化しているという。

在日中国人の多くが苦手なのは「日本の中華料理屋」だ。彼らが子供のころから親しんで来た味とあまりに異なり、なじめないという。日本人が海外で「なんちゃって日本料理」に驚くのと同じような感覚ではないか。他方、納豆はいかにも中国人に敬遠されそうだが、実は南部ではよく食べられている。

本書は、こういった日常生活ネタに加え、中国人の日本の皇室への関心の深さや、新しく中国に輸入された日本の漢字熟語(「居酒屋」「幸福感」から「干物女」まで)の定着といった文化的な話題までを広くカバーしている。

なお筆者は中国人を発見するとすぐ取材を始める方で、本書には当社の中国人社員も登場している(日本人と結婚して納豆を食べるようになった女性はNNAの社員です)。

現在は新型コロナウイルス感染症(COVID19)の影響で日中の交流はペースダウンしているが、ひと昔前に比べると市民レベルの交流はとても濃密になってきた。仕事やプライベートで中国人と付き合いのある人には、非常に面白く読める一冊だ。

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『中国人は見ている。』

中島恵 著  日本経済新聞出版社

2019年 12月発行 850円+税

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【本の選者】岩瀬 彰

1955年東京生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業後、共同通信社に入社。香港支局、中国総局、アジア室編集長などを経て2015年より20年3月までNNA代表取締役を務めた(現NNA顧問)。

※特集「アジアの本棚」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2020年4月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 中国-全国日本
関連業種: 社会・事件

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