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【有為転変】第134回 日豪へのミサイル配備

最近オーストラリアの全国紙で、米中対立の狭間で舵取りに悩む豪モリソン首相の風刺画がよく掲載されるようになっている。確かに現実はその通りだ。今月上旬に、米国と豪州の外務・防衛担当閣僚による協議(2プラス2)がシドニーで行われたが、その直後の会見で、オーストラリアに中距離ミサイルを配備する話題が出て大きな注目を集めた。念頭に置いているのは当然、太平洋での権益を拡大する中国である。ミサイル配備の可能性は、日本も全く同じ立場に置かれている。だが――。

2プラス2では、米側からはポンペオ国務長官とエスパー国防長官、オーストラリアからはペイン外相とレイノルズ国防相が参加した。米国はオーストラリアに対し、ホルムズ海峡への有志連合の参加以外に、ミサイル配備への協力を示唆したとみられている。くしくもエスパー長官は先に、数カ月内にも中距離ミサイルをアジアに配備することを明言したばかりだ。その会見の模様が、米国防総省のホームページで一言一句公開されている。

8月10日付AFRに掲載されたデビッド・ローウィー氏の風刺画

8月10日付AFRに掲載されたデビッド・ローウィー氏の風刺画

質問者「米国は、アジアで計画する中距離ミサイルをオーストラリアに配備したいのではないでしょうか?その場合、中国に対する敵意となるリスク、もしくはアジア地域を不安定化させるリスクがありませんか?」

これに対し、米側の両長官は焦点をぼかし、ミサイル配備には触れず、中国とも名指しせずに回答。豪ペイン外相も「オーストラリアは米国、中国両国と地域の安定に向けて協力していく」などとのみ回答した。

■専門家「配備の用意はできている」

だが、翌日付のオーストラリアン紙は、ポンぺオ長官が「中国の脅威を前に、オーストラリアがアジア地域で主導的役割を担い、米国と断固たる協力体制を取ることを求めた」とはっきり訴えている。

ポンぺオ長官は、アジアでの配備国はまだ決まっていないとしたものの、「米軍基地があるダーウィンなど、オーストラリア北部の可能性も排除しない」と発言したという。

またオーストラリアが華為を5G事業から締め出したことを称賛しつつ、「さらにできることがある。中国からの経済的報復を恐れる必要はない」などと言及した。記者会見での慎重な物言いとは異なり、かなり踏み込んだ発言だ。

エスパー長官にいたっては、債務を押し付ける略奪的な手法で太平洋諸国を支配していく中国のやり方を強く批判。また、中国を他国の知的財産権を奪う「盗人」呼ばわりしてまで露骨に糾弾した。

これに対し、中国は反発。「ミサイルがアジアに配備されれば対抗措置を取る」とし、わざわざ日本とオーストラリア、韓国を名指ししてまで警告した。

モリソン首相はそれを受けてか、翌日直ちに「ミサイル配備の要請はなく、あっても考慮しない」ときっぱり否定した。

しかしながら、6日付同紙では、マッコーリー大学の軍事専門家による興味深い見方が紹介されている。同氏は、米豪が北部準州で先月行った共同軍事演習で米国製ロケット砲システムが残されており、「豪軍が米ミサイルを持つかどうかにかかわらず、いつでも中距離ロケット砲を配備できるよう用意ができている」としている。

そもそも米国がアジアでの中距離ミサイル配備を急ぐのは、米国が昨年10月、旧ソ連との間で締結したIMF全廃条約を離脱したことが背景だ。射程500~5,500キロのミサイルを全廃するとしたものだったが、ロシアが条約に違反しているのが離脱の理由としていた。米国はその直後に中国包囲網を築くミサイル配備を発表したため、それが狙いの離脱だったのではないかとの臆測もくすぶる。

■ダーウィン港の「再国有化」も

来月20日、モリソン首相は夫人と共に、国賓として米国を公式訪問する。モリソン首相が最近、太平洋地域の安全保障強化のカードを次々に切っているのは、米国への手土産の意味もあるのだろう。同地域の特殊空挺部隊の強化を目的に、今後4年で5億豪ドル(約357億円)を拠出するとしたのもその一つで、閣僚からも相次いで米国の価値観を強調する発言が出ている。

さらに、豪議会の超党派委員会では現在、ダーウィン港を再度国有化する動きが出ているという。この欄でも以前書いたが(第97・98回「ダーウィン港管理の失態(上・下)」)、ダーウィン港管理は中国の嵐橋集団が落札したために、安全保障リスクが今になって浮上している。

■同じ問題を抱える日本

ところで、エスパー国防相はその直後の7日に日本も訪れ、岩屋毅防衛相と会談している。その時、日本にも同じ要請をしたと思われる。

だが、オーストラリアでミサイル配備の問題が当然大きな注目を集め、同じく日本も中国に名指しされたというのに、日本の大手メディアは一体なぜか、ミサイル配備の懸念に関する報道はない。日本政府は、香港の民衆デモに対する反応さえ示さないほどだ。日本は国を挙げて、中国に忖度(そんたく)しているのだろう。【NNA豪州・西原哲也】


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