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【アジア取材ノート】フィリピン初の地下鉄着工

日本が資金・技術で支援

フィリピンで2月、鉄道の大型プロジェクトが相次いで着工された。27日にはマニラ首都圏の地下鉄敷設事業の起工式を開催した。同事業は、ドゥテルテ政権のインフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド」のフラッグシップ事業75件の中で事業費が最大(約3,570億ペソ=約7,530億円)の案件で、同国初の地下鉄となる。これに先立つ15日には、マニラ市と南北近郊を結ぶ南北通勤鉄道の建設工事も開始され、両事業の完成によって首都圏の交通事情の大幅な改善が期待されている。

イトゥガデ運輸相は、地下鉄の実現に向けた日本の協力に謝意を示した=2月27日、首都圏バレンズエラ市(NNA撮影)

イトゥガデ運輸相は、地下鉄の実現に向けた日本の協力に謝意を示した=2月27日、首都圏バレンズエラ市(NNA撮影)

地下鉄は日本から資金や技術などの支援を受け、向こう3年以内の部分開業を目指す。式典で登壇したトゥガデ運輸相は「地下鉄計画を打ち出した際、誰も信じなかったが、夢がついに実現する」と語り、日本の協力に謝意を表明。「(ドゥテルテ政権の任期が終わる)2022年の部分開通を実現できるよう、日本企業には頑張ってもらいたい」と話した。

部分開通区間は、北方のケソン市キリノ・ハイウエー、タンダン・ソラ、ノース・アベニューの3駅区間。同区間の駅建設やトンネル工事などは、清水建設、フジタ、竹中土木、地場建設大手EEIの4社ジョイントベンチャー(JV)が受注した。

羽田浩二駐フィリピン日本大使は「地下鉄工事の開始は、ドゥテルテ政権のインフラ整備計画の『ギアアップ』となる」と指摘。日本は、地下鉄の敷設のみならず、別の鉄道計画でも整備や運営・保守(O&M)への支援を進めていく方針をあらためて示した。

トゥガデ氏は「25年には地下鉄(のフェーズ1)の全線開通を目指す」と意気込む。

マニラ地下鉄の起工式で、パワーショベルを操縦する羽田大使=2月27日、首都圏バレンズエラ市(NNA撮影)

マニラ地下鉄の起工式で、パワーショベルを操縦する羽田大使=2月27日、首都圏バレンズエラ市(NNA撮影)

フィリピン運輸省によると、フェーズ1はキリノ・ハイウエーからタギッグ市の工業団地「フード・ターミナル(FTI)」までを14駅でつなぐとともに、ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)のターミナル3(T3)に15駅目を設置して、ロートン・ウエスト駅から線路を延ばす。将来的には、南側の延伸区間も合わせ、地下鉄の総延長を36キロメートルとする計画だ。

NEDAによると、フェーズ1の事業総額は約3,570億ペソ。日本政府は昨年、約1,045億円の円借款貸与契約を締結しており、「必要に応じて追加の資金提供の契約を結んでいく」(JICAの担当者)予定だ。同事業には、最大6,000億円の円借款を検討している。

■巨額事業、維持管理が懸念

今後は、フェーズ1の6工区のうち、残りの5工区の契約も順次結ばれていく見通しだ。全て完工すれば、通勤者などが北端から南端までを約30分で移動することが可能となり、渋滞の緩和も期待できる。

ただ、フィリピンの運輸関係者からは、維持管理がぞんざいとなり、地下鉄の恩恵を受けられないことを懸念する声が出ている。投資顧問会社ベルウェザー・アドバイサリーのレネ・サンティアゴ最高経営責任者(CEO)は、「管理がずさんとなれば、MRT(高架鉄道)3号線の二の舞となってしまう」と指摘する。MRT3号線は、日系企業が敷設と12年間の維持管理を担当。維持管理が他国企業に引き継がれた後に問題が多発し、日本企業による修繕が必要となったためだ。

地場建築・都市計画事務所パラフォックス・アソシエーツのフェリノ・パラフォックス氏は、官民連携(PPP)で鉄道の維持管理を行うべきと主張する。政府系企業のみで維持管理を実施しようとすると、怠慢や汚職の温床となり、巨額のインフラ投資が無駄になってしまうとの懸念を示した。

■マニラ南北通勤鉄道、年内に全面着工へ

円借款で整備されるマニラ首都圏の南北通勤鉄道が2月15日、着工した。マニラ市トゥトゥバン―ブラカン州マロロス(延長38キロメートル)のうち、三井住友建設が工事を手掛ける区間が先陣を切った。フィリピンの運輸省は、北側をパンパンガ州クラーク国際空港まで、南側をラグナ州カランバまで延伸する事業を含む、別の区間の工事も年内に順次始めたい考えだ。

着工したのは、三井住友建設が手掛ける「CP2工区」。同工区では、14キロの高架橋と駅3カ所が建設される。

羽田浩二駐フィリピン日本大使は「南北通勤鉄道の延伸区間や首都圏の地下鉄の敷設も早く実現し、フィリピンの方々が恩恵を受けられるようにしたい」と話した。

運輸省は、延伸事業を含む南北通勤鉄道全区間(総延長170キロ)の建設を今年中に開始させたい方針だ。北側のクラーク国際空港までは2022年中に開通させ、南側も24年までに全線開通させる。運行はフィリピン国鉄(PNR)が担当する。

国際協力機構(JICA)は、2015年11月にトゥトゥバン―マロロス区間に対して約2,420億円の、今年1月には延伸事業(マロロス―クラーク、マニラ市ソリス―ラグナ州カランバ)のフェーズ1として約1,672億円の貸付契約を締結。日本政府は、南北通勤鉄道の延伸事業全体に総額4,200億円の円借款を検討している。

■フィリピン政府、日中に支援を期待

エルネスト・ペルニヤ経済開発庁(NEDA)長官は2月22日、大規模なインフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド(BBB)」の進展に関するNNAの取材に応じた。

ペルニヤ長官によると、総額8兆3,000億ペソ(約18兆円)のBBBのうち、大型のフラッグシップ事業と位置付ける75案件の費用は2兆2,000億ペソと見積もっており、「うち1兆ペソは日本や、日本とアジア開発銀行(ADB)の共同支援」によって賄う計画だ。

75案件の財源別内訳は、日本や中国、米国、韓国などからの政府開発援助(ODA)が56件、財政支出が11件、官民連携(PPP)事業が7件、民間投資が1件となる。

ドゥテルテ政権は、大統領の任期が切れる2022年6月末までに75件全てを着工し、うち25件の完工を目指している。ペルニヤ長官は、現在「11件が建設中」と明らかにした。

一方、中国からの資金支援は、融資2件、無償供与2件の計4件、金額にして2億5,000万ペソ弱が調印済みという。ペルニヤ長官は「中国はさらに多くのプロジェクト向けにより大きな資金提供を約束している」と語り、BBBを加速させる「てこ」にする考えを示唆した。※数値は2月22日のインタビュー時点

※特集「アジア取材ノート」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年4月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: フィリピン日本
関連業種: 運輸マクロ・統計・その他経済

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