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【NNAアンケート】メンタルケアなし8割弱、アジアの日系駐在員

アジア各地の日系企業駐在員に会社の福利厚生に関するアンケート調査を実施したところ、メンタルヘルスケアを目的とした制度がないと答えたのは77%に上った。日本と異なる風習文化や生活環境、ビジネス習慣に慣れず、メンタルの変調を訴えたり、アルコール依存に陥る駐在員も少なくないとされている。日本企業のグローバル展開が拡大する中、身体だけでなく心の健康の維持管理が求められてきそうだ。

アンケートは2月18日から3月3日にかけて実施した。アジアに進出する日系企業の駐在員を対象とし、1,249人から有効回答を得た。

駐在員のメンタルヘルスケアを目的とした制度があるかを聞いたところ、「ある」と答えたのは23%にとどまった。具体的には、「外部のカウンセラーやコンサルタントに駐在員が悩みを相談できる制度」や、ウェブサイトを通じて「ストレスチェックテストを受けさせる」ことが多かった。「産業医が駐在場所まで定期的に面談のために訪問し、メンタルを含めた健康をチェックする」制度を採用しているケースもあった。「2カ月に1度、産業医を現地に派遣してもらい、メンタルを含めた健康面談を実施」するなど、制度を充実させている企業もあった。

一方、メンタルケア制度が「ない」としたのは77%に上った。多くの駐在員がメンタルヘルス問題を自ら解決するしかない状態となっているとみられる。

<見過ごされがちな駐在員のメンタル>

渡航医学とメンタルヘルスを専門とする関西福祉大学の勝田吉彰教授は「職場のメンタルヘルスの必要性が叫ばれて久しく、ストレスチェック制度や過重労働面談など国内では少しずつ施策がなされてきた。国の施策である第13次労働災害防止計画(2017~22年)では、メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を16年の56.6%から80%以上に、職場の悩みやストレスについて職場に相談先のある労働者の割合を16年の71.2%から90%以上に引き上げる数値目標が設定されている。しかし今回の調査結果では、海外勤務ではそのスタートライン(16年の数字)に比べても半分以下の、極めて憂慮される数字だ。海外勤務では、その広汎な業務範囲、文化的差異によるストレスなど注意を払わなければ日本の本社が見過ごしがちなリスクも多い。労働災害防止計画に海外勤務者メンタルケアの数値目標を入れるなど、国の主導も必要だ。また企業の責任として、生産性向上の観点からも海外子会社や下請け企業などのメンタルケアに積極的に関与してグループのメンタルヘルス向上に目を向けてほしい」と指摘した。

■身体の健康面の制度は充実

一方、身体面の定期健康診断制度などは比較的充実している。会社負担による健康診断の受診制度の有無について、「ない」との回答は2%のみ。一方、受診制度があるとした回答の内訳は、「現地及び診療機関の両方での受診」が41%と最も多く、「日本の診療機関での受診」が28%、「現地の診療機関」が25%と続いた。シンガポールやタイなど「近隣諸国の診療機関」も4%あった。

海外健康保険について、海外旅行者傷害保険など海外で利用可能な医療保険の会社負担が「ある」としたのは93%、「ない」は7%だった。

海外赴任前後の特別休暇はあるかを聞くと、「5日以上」が38%、「1~4日」が37%とほぼ並んだ。ただ一方で、特別休暇が「ない」のは25%に上った。

会社負担による日本一時帰国航空券の支給については、「年1回」が49%と最も多かった。「年2回」が24%、「隔年1回」が12%、「年3回」が5%、「ない」が3%だった。年3回とかなり充実しているところから、隔年1回や支給がないところまで会社によって航空券の支給にはばらつきがあることが分かる。

■住まいや社用車には会社で違い

住まいや社用車については比較的、制度が整っているようだ。

赴任地で借りる住居に会社の賃料規定があるかについては、「ある」が70%、「ない」が30%。「ある」と回答した70%の規定の内訳は、「役職に応じた賃料規定」(45%)と「同居人数に応じた賃料規定」(43%)とほぼ並んだ。「会社保有物件など指定の部屋への入居」が3%。

「その他」は9%で、具体的には「賃料の上限額を規定」や「役職にかかわらず一律の賃料規定」「地域に応じた賃料設定」などだった。アジアの各都市では賃料が急激に上昇しているが、一定の規定を設けて会社負担の上昇を抑えようとしていることがうかがえる。

通勤時に社用車が支給されているかを聞いたところ、「ある」が70%、「ない」が30%だった。社用車は「1人1台」が60%、「複数人でシェア」が40%だった。アジアではまだ公共交通の利用には交通事故や犯罪に巻き込まれるなどのリスクが大きい都市もあり、社用車の支給で駐在員の安全な通勤を担保しているもようだ。

また社用車の休日利用が可能としたのは93%にも上り、このうち「可能だが業務関連のみ」としたのは35%だった。「家族への社用車の支給がある」としたのは16%あり、休日にゴルフなどの娯楽や家族での近郊への観光などにも社用車を使っているとみられ、海外駐在ならではの恩恵を享受している様子だ。

■語学学習など自己啓発費用を会社負担も

赴任先の現地語の学習など、駐在員の自己啓発にかかわる会社からの費用補助の有無については、「ある」が68%、「ない」が32%だった。具体的な補助内容は、「英語もしくは現地語の語学学校の1年間の補助」「200時間までのレッスンは会社負担」「着任後2年以内の限度内での授業料制度」など、制度内容は多彩だった。

また「その他で海外駐在にかかわる手当や制度にどんなものがあるか」を聞いたところ、「ハードシップ手当」や「引っ越し費用の負担」「海外駐在支度金」などがあった。アジア各都市での大気汚染悪化に伴い、「空気清浄機支給」や「マスク支給」なども目立った。


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