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【アジアで会う】高根京子さん 書家 第245回 人、言葉との出会いを書で表現(インドネシア)

たかね・きょうこ 三重県出身。1992年東京学芸大学書道科卒業。2016年5月に開かれた伊勢志摩サミットのメディアセンターに、華道家の佐々木直喜氏とのコラボレーション作品を出展した。09年4月~19年3月に桑沢デザイン研究所(東京都渋谷区)で書道講師を務めた。18年8月からジャカルタ在住。

4月26日までの1カ月間、南ジャカルタ・フェアモントホテルのギャラリー「サンライズ アートギャラリー」で、ジャカルタでは初めての個展を開き、約30点の作品を展示している。墨を吸わない、にじまないキャンバス地という書道の世界では珍しい素材に、書き上げた作品を創作するなど新たな試みにも挑戦している。期間中は、会場で書をデモンストレーションする「公開制作」も6回行う。

個展のテーマは「Interlace(インターレース、織り交ざる、組み合わさるの意味)」。高根さんは「人、言葉、これまでに出会ったすべてのものが絡み合い、組み合わさってできる、その瞬間に一度しかないものを表現した」と説明。「偶然と必然の合間に、自分自身や作品があることを伝えたい」と思い、個展の主題に決めたという。

■書が放つエネルギー

書の心得が全くない筆者が、高根さんの作品を初めてみた第一印象は「書」というよりも、一枚の絵を見ているような気がした。そんな感想を率直に伝えてみたら、「和歌を題材にした場合は、かな書道でその世界を表現することができるけれど、現代のことばでつづられる詩や歌詞は、古典的な書きぶりでは表現できない」と説明してくれた。

今回の個展で展示された詩人の吉原幸子(よしはら・さちこ)さんの「これから」を題材にした作品「まっ白な紙が欲しい」がその一つ。高根さんの背丈よりも大きい高さ1.7メートル、幅30センチのパネル7枚を横に並べてつくった大きな紙。輪郭が際立たないように墨の濃淡をつけた「文字」が、丹念に一筆ずつしたためられている。

「わたしは あちこちに書いてしまった/余白 もう/余白しか のこってゐない/ぜんぶまっ白の紙が欲しい/何も書いてない/いつも 何も書いてない紙/いつも これから書ける紙」(吉原幸子「これから」、一部抜粋)

「これから」を題材にした作品「まっ白な紙が欲しい」

「これから」を題材にした作品「まっ白な紙が欲しい」

高根さんは、この詩が醸し出す世界観を書でどのように表現しようかと考える。使う紙の素材は、和紙だけでなく、中国の高級手すき画仙紙「紅星牌(こうせいはい)」を使うことも。墨の濃淡は、松の枝や根を燃やして得たすすをにかわで固めてつくる「松煙墨」と、油煙をにかわで固めた「油煙墨」を混ぜて調整する。

紙との相性や、湿度のちょっとした変化でも文字の表情は変わってくる。一画、また一画と筆を運ぶときに、文字がにじんだり、広がったりした結果として、いわゆる「文字」としては判読しづらくなることもある。高根さんは「インドネシアで書の認知度はまだ低いかもしれないが、書の持つ力、エネルギーを少しでも感じてほしい」と話している。

■ジャカルタで湧き上がる創作欲

書道は5歳のころから。自宅で書道教室を開いていた母親から手ほどきを受けた。高根さん自身も高校、専門学校で教べんをとった経験がある。ジャカルタでも機会があれば、在留邦人に書道を教えてみたいと話す。

海外はこれまでに、夫の駐在に同行して、シンガポールに足掛け8年ほど暮らした。シンガポールでも13年に企画展、15年に個展を開いたことがある。

書の文化は、日本の四季が土台にあり、季節の移ろいを表現した詩や短歌などを題材に選ぶことが多い。だから常夏のシンガポールに滞在中は、すずりに向かう機会は少なく、同国で開いた展示会には日本で書いた作品を出展した。

ところが、所変わってジャカルタでは「創作欲が湧き上がってくる」と言う。シンガポールと同じように季節感はないが、ジャカルタは人間くささや、混沌(こんとん)に満ちあふれている。

高層マンションから見下ろす世界は、小さな箱のように映る数々の車が長い列を織りなして大渋滞を引き起こし、その隙間を縫うように所狭しとバイクが走る。その動きは、まるで血流のようにも見える。こうした人々のエネルギーが、新たな作品を生み出す原動力となっていると感じている。(インドネシア編集部=山本麻紀子)


関連国・地域: インドネシア日本
関連業種: マクロ・統計・その他経済社会・事件

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