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【プロの眼】日本人が海外赴任で直面するストレスとは

渡航メンタルヘルスのプロ 勝田吉彰(1)

国境を越えるビジネスパーソンの皆さまに、メンタルヘルスのお話を紹介させていただくことになりました。私は外務省医務官としてスーダン、フランス、セネガル、中国に駐在しつつ、出張も合わせると24カ国・地域で国際医療に触れたことになりますが、その間、メンタルヘルスにかかわる諸問題にも直面し扱ってきました。そんな事もあり、退官して大学教員の職を得て以降も、メンタルヘルスと感染症を中心に海外赴任者の健康管理を研究テーマにミャンマーにて定期的に調査を行ったり、国内では産業医としていくつかの企業にかかわったりの活動をしております。

さて、初回は、海外赴任者のストレス要因、そして、海外勤務で問題となりがちな睡眠とメンタルヘルスの問題について紹介します。

異なる国の文化や風習と対峙する海外駐在はさまざまなストレス要因にさらされることもある

異なる国の文化や風習と対峙する海外駐在はさまざまなストレス要因にさらされることもある

■海外赴任とストレス要因

海外生活のストレス要因は想像する以上に多彩です。

本社が現地の事情をよく把握していないためにより増幅されているストレスも多く、現地の駐在員が本社に対して「OKY!(お前が来てやれ!の頭文字)」と酔いつぶれながら叫んでいるという光景は、業種の壁を越えて、駐在国を問わず広範囲に見られます。本社にとって、現地事情を正しく把握し余計なストレス要因を発生させないということは、生産性を上げるためにもこれまで以上に注力すべきことになってきます。

■睡眠とメンタルヘルス

時差の問題、騒音の問題、昼夜かまわず本社から入って来る連絡対応……と、睡眠不足は海外駐在にとっての古くからある問題です。それに加えて最近のアジアでは交通渋滞が新たな要因となってきています。ジャカルタ、バンコク、ヤンゴン、ホーチミン、デリー、カラチ、北京、上海……悪名高き渋滞が今やほとんどの国で共通の光景になってしまいました。ある都市では日本人学校のスクールバスが授業に間に合うために早朝6時にお迎えに来てしまうから、一家そろって午前5時には起床してお弁当つくり、送り出しの準備とバタバタが毎日続いて睡眠不足が蓄積してしまうことになります。

こうした睡眠不足の蓄積は、メンタルヘルスの大きな阻害要因になります。読者の皆さんには、「残業時間が〇〇時間ですから、産業医の面談を受けてください」と呼び出しを受けた経験のある方もおられると思います。これは法律(労働安全衛生法)の規定で、1カ月間の時間外労働が100時間以上(労働安全衛生法改正により4月から80時間以上になる予定)の労働者に対して医師の面談を実施することを事業場側に義務付けているものですが、その規定ができた背景には、長時間残業過重労働⇒睡眠不足⇒メンタル不調および突然死という死のルートに何とか途中でストップをかけ治療に結び付けたいという意図があります。従って、睡眠不足の蓄積にならないよう、会社側も連絡時間の調整や業務量、時間の把握に努める必要があります。赴任地によっては、自宅をどこにするかにより交通渋滞からくる睡眠不足をいくらかでも避けられるかもしれません。

最後に、睡眠の状況を評価する尺度を紹介します。アテネ睡眠評価尺度と呼ばれるもので、8つの質問に0~3の4段階で答え、その数字を合計します。

おおむね4~5点以上で不眠の疑い、6点以上で不眠の可能性が高いと思われます。

過去1か月間、週3回以上経験したものを答えてください。

Q1. ベッドに入ってから実際に寝付くまで時間がかかりましたか?

・すぐ寝付いた(0点)

・少し時間がかかった(1点)

・かなり時間がかかった(2点)

・非常に時間がかかった、または全く眠れなかった(3点)

Q2.夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?

・覚めなかった、または問題を感じなかった(0点)

・少し覚めた(1点)

・何度も目が覚めた(2点)

・頻繁に目が覚めた、または眠れなかった(3点)

Q3. 希望する(予定した)起床時間より早く目が覚めて、それ以降眠れないことはありましたか?

・なかった。覚めなかった(0点)

・少し早く覚めた(1点)

・かなり早く覚めた(2点)

・非常に早く目が覚めた、または眠れなかった(3点)

Q4. 夜間の睡眠や昼寝も併せて、睡眠時間は足りていましたか?

・足りている(0点)

・少し足りない(1点)

・かなり足りない(2点)

・非常に足りない、またはまったく眠れなかった(3点)

Q5.睡眠の質について、どう感じていますか?

・満足している(0点)

・少し不満(1点)

・かなり不満(2点)

・非常に不満、またはまったく眠れなかった(3点)

Q6.日中の気分はいかがでしたか?

・通常どおり(0点)

・少し気分が悪かった(1点)

・かなり気分が悪かった(2点)

・非常に気分が悪かった(3点)

Q7.日中の身体的および精神的な活動の状態はいかがでしたか?

・通常どおり(0点)

・少し低下した(1点)

・かなり低下した(2点)

・非常に低下した(3点)

Q8.日中の眠気はありましたか?

・なかった(0点)

・少しあった(1点)

・かなりあった(2点)

・非常にあった(3点)

以上8つの答えの点数を合計してください。

4~5点で不眠症の疑いが少しあり、6点以上で可能性高い。(アテネ不眠評価尺度)

<プロフィル>

勝田吉彰(かつだ・よしあき)

臨床医を経て外務省医務官としてスーダン、フランス、セネガル、中国に合計12年間在勤。重症急性呼吸器症候群(SARS)渦中の中国でリスクコミュニケーションを経験。退官後、近畿福祉大学(現・神戸医療福祉大学)教授を経て関西福祉大学教授。専門は渡航医学とメンタルヘルス。日本渡航医学会評議員・認定医療職、多文化間精神医学会評議員、労働衛生コンサルタント、医学博士。

ブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~」<https://blog.goo.ne.jp/tabibito12>「ミャンマーよもやま情報局」<http://www.myanmarinfo.jp/

※特集「プロの眼」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年2月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 日本
関連業種: 医療・医薬品社会・事件

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