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【ハノイ重慶】越北部、鉄路で欧州も直結 (2)深化する「中国プラスワン」

中国ベトナム間の鉄道輸送が脚光を浴びている。中国からは自動車部品や繊維素材、ベトナムからは農水産物や電子製品の輸送需要が多いようだ。こうした中、ベトナム北部ハイフォンで生産される韓国LG電子のテレビは、鉄道で中国・重慶を経由し欧州までも輸送される。2000年代半ばから続く「チャイナプラスワン」の有力地、ベトナム北部を訪ねながら、首都ハノイからわずか160キロメートル先の中国国境へと向かった。【文・写真=遠藤堂太】

中国車両の乗り入れが可能な三線軌条。左奥に見えるイエンビエン貨物ターミナルには保税倉庫もある=ハノイ

中国車両の乗り入れが可能な三線軌条。左奥に見えるイエンビエン貨物ターミナルには保税倉庫もある=ハノイ

ハノイ市街地の朝は、バイクやけたたましいクラクションで賑やかだ。しかし、中越国境ドンダン行きの列車が出発するロンビエン駅構内だけは別世界のように閑散としていた。乗客わずか10人足らずを乗せ午前7時16分、出発した。

ホン川(紅河)にかかるロンビエン橋をゆっくり渡ると次のザーラム到着直前にレールが3本ある三線軌条になった。ベトナム戦争中(1975年に終結)、中国が当時の北ベトナムに支援物資を輸送するため、3本目のレールを敷設したのだ。ベトナム国鉄は狭軌(線路幅が1,000ミリ)だが、ザーラム―ドンダン間など一部区間は標準軌(1,435ミリ)の中国車両が乗り入れできる。ザーラムからはドンダン経由の中国・広西チワン族自治区の南寧行き国際夜行列車が、次のイエンビエンからは中国への貨物列車が発着する。

■一帯一路、越は「受け身」

2017年以降、鉄道を使った中越貨物輸送が活発になっている。17年に広州方面から、18年には重慶からハノイ(イエンビエン)への定期コンテナ輸送が始まった。18年11月にはベトナム発着貨物を取り扱う鉄道物流センターが、中国側の憑祥(ピンシャン)で完成した。

ハノイ発重慶行きコンテナの一部は、重慶から欧州へのコンテナ鉄道輸送「中欧班列」に積み替えポーランドなどへ定期輸送される。ハノイから欧州までは1万キロメートルを超える長旅だ。

物流業界関係者に聞くと、「LG電子はハノイから欧州へ鉄道で運んでいる」と答えた。中国やベトナムから欧州への海上輸送費は40フィートコンテナで2,000米ドル(約22万円)前後。一方、鉄道の場合は中国―欧州の約5,000米ドルに加え、重慶―ハノイも別途加算される。

中欧班列が乗り入れることは、中国側が進める現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」のプロジェクトの一環としての側面を持つ。この関係者は「競争力ある料金を提示するため、中国政府の補助金が相当あるはずだ」と話す。

ただ、ベトナム国内での鉄道輸送は旅客・貨物とも大幅に減少しており、ベトナム側が中越鉄道輸送を積極的に進めたいのかは不透明だ。専修大学の池部亮准教授は最近、ベトナム鉄道総公社(VNR)にヒアリングしたが、「ベトナム側は受け身的に、プロジェクトに付き合っている」という印象が残ったと話す。

憑祥に本社を置く地場の物流業者は「中越のコンテナ鉄道輸送は利用しにくい」と話す。18年6月ごろに広州からハノイまでのトライアル輸送を行ったが、5日間かかったのはともかく、到着スケジュールが読めず利用しづらかったと話す。この業者によると、トラックなら広州からハノイ近郊まで1泊2日。広州を午後5時に出発、翌日午前9時までに中越国境に到着し、通関手続き・積み替えを行い午後4時頃に出発、同日の午後9時にはハノイ近郊に到着できると話す。トラックは当日手配も可能で、鉄道料金と大差ないようだ。

ラックフェン港(左)の近くには地場新興完成車メーカーで、独ボッシュが生産協力するビンファスト(右)もある。輸出に便利な立地だ=ハイフォン市

ラックフェン港(左)の近くには地場新興完成車メーカーで、独ボッシュが生産協力するビンファスト(右)もある。輸出に便利な立地だ=ハイフォン市

一方で、中国や欧州への鉄道輸送の拡大に期待を示す声もある。将来はベトナム北部最大となるラックフェン港を運営するハイフォン・インターナショナル・コンテナ・ターミナル(HICT)のスティーブン・ヤン社長だ。

コンテナ船業界では今、上海港や華南各港の混雑が問題であり、ベトナムから中国や欧州との間にトラックや鉄道輸送といった選択肢が増えることは、荷主にとって歓迎すべきことだと話す。顧客は運賃・スピード・安定性で輸送モードを決める。決して海上輸送と競合せず、むしろベトナム北部の製造拠点や消費市場としての魅力を高めるとして歓迎する。

ラックフェン港は、18年5月に日越の官民連携(PPP)事業として開港した。寄港するコンテナ船の大半は現在、いったん既存港であるハイフォンにも寄港し、試験運用中の位置付けだ。本格的な運用は19年になるという。

■米中貿易戦争も追い風

ベトナム北部で注目されるのは国際港がありLG電子が操業するハイフォン市や中国国境からのアクセスが良いバクニン省だろう。バクニンにはベトナムの輸出トップ企業でスマートフォンを生産する韓国のサムスン電子やプリンター生産のキヤノン、台湾系電子機器受託製造サービス(EMS)フォックスコンの工場がある。近年は、台湾・韓国系の中小企業も進出、中国からの生産移管であるケースも多い。

イエンビエン駅から車で15分。シンガポール政府系セムコープのベトナム・シンガポール工業団地(VSIP)の「VSIPバクニン」は、ハノイと中越国境を結ぶ国道1号線上にある。10年に完成し、18年末までに116社が入居し、レンタル工場を除き、ほぼ完売となった。

現在の入居企業は外資ベトナム合弁企業が全体の30%で、残りはすべて外資単独出資で日本(20%)、韓国(15%)、ASEAN(13%)、台湾(9%)と続く。当初は日系が多かったが、後半は他国・地域が増えた。中国系はわずかだという。

VSIPはバクニン省で2番目の工業団地運営に乗り出すもようだ。米中貿易戦争を追い風に、中国で製造する日系を含む外資や地場の進出を見込む。VSIPはベトナム6省市で7つの工業団地を運営し、入居企業は800社を超える。

バクニン省の国道1号線沿線の地元企業が運営する工業団地には台湾・韓国系メーカーで半分以上を占める団地もある。最近では隣接するバクザン省も含め中国系メーカーも増えている。

中国・太陽光発電製品のJAソーラーも新たに進出=バクザン省

中国・太陽光発電製品のJAソーラーも新たに進出=バクザン省

製造業のトレンドについては、物流会社がよく知っている。前述の憑祥の業者はバクニンにも拠点がある。同社幹部によると、広東省の東莞や深センの地場中小企業が工場を閉鎖してバクニン省などベトナム北部へ移転する動きは10年以降にあったものの、2年前が顕著だったと話す。電子製品などの原料をベトナムへ輸出し、半完成品として中国へ戻す貨物も多いという。

米中貿易戦争の影響についてこの幹部は、「自分たちはやらないが」と断った上で「生産地を中国ではなくベトナムにする産地偽装の相談は荷主からよく受ける」ともらす。

日本人が知らない、中越間のモノ・人の流れは、米中貿易戦争を契機に加速しそうだ。

(次回は1月8日掲載予定)


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