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《香港セミナー》香港返還20周年を振り返る

NNA香港は2017年12月22日、香港日本人倶楽部でセミナーを開いた。NNA香港・華南版編集長兼NNA香港社長である黒川真吾が昨年7月に香港・華南版に掲載された特集「香港新成長への道~中国返還20周年企画」を振り返ったほか、上海市錦天城(深セン)律師事務所のパートナー弁護士、高田(コウ・デン)氏が「中国における外国人就労許可管理制度改革の解説」をテーマに講演した。

■<黒川編集長>香港返還20周年企画を振り返る

150年以上にわたってイギリスの植民地だった香港が1997年に中国に返還されてから、2017年に20周年を迎えた。記者の視点から、17年は香港にとって節目の年であったと感じられる。3月末に香港の行政長官が交代したことや、習近平氏が7月1日、中国国家主席に就任して以来初めて香港を訪問したことがメディアに大きく取り上げられた。

前政務長官であった親中派の林鄭月娥(キャリー・ラム)氏が中国の支持を得て、対抗馬にダブルスコアの大差を付け行政長官に当選。「個性がないことが個性だ」と揶揄(やゆ)される中にあって、経済政策、民生政策を矢継ぎ早に打ち出したほか、前政権時にあった民主派との対立の溝を埋めようとする積極的な動きを見せている。

10月に行われた施政方針演説の目玉の一つに減税措置がある。中小企業を中心に産業界の底上げを図る法人税の減税、投資促進に向けた減税や住宅政策という施策を打ち出した結果、新措置による支出が700億HKドル(約1兆80億円)と、かなりの大盤振る舞いとなった。社会の各層に向けた演説内容は、政治的に敏感な層の地雷を踏まなかった。就任当初、親中派を理由に林鄭行政長官の支持率は決して高くなかったが、施政報告はかなりの高評価で、順調な滑り出しとなった。

◇好調な経済とその背景

経済においても好転した1年だった。1~9月の域内総生産(GDP)成長率が前年同期比3.9%となり、このままのペースで行けば通年のGDP成長率は前年比3.7%は堅いと行政長官は予測している。過去10年のGDP成長率の平均は2.9%だったため、今年はそれをかなり上回ることになる。11年の4.6%に次ぐ6年ぶりの高い水準だ。

好調な経済の背景には、アジアの製造業の活発化がモノの輸送需要、輸出の増加に結びついていることがある。中国からの旅行客数も回復し、観光業が好調だ。株式市場や住宅市場の活況が資産効果を生み、消費拡大にもつながる好循環になっている。また失業率も3%と低く、市民の収入の増加が小売売上高を4年振りにプラスに転換させそうだ。

香港への旅行者は通年で5,500万人となり、3年振りに前年比プラス転換する見通し。その80%が中国からの旅行客である。住宅価格が前年比10%増、株式が5,000ポイント増となっている。大方の経済アナリストは、18年もGDP成長率は3%前半で好調に推移するとみている。

◇今後の林鄭政権

ただし、政治的に見て今後の道程は決して平坦ではない。12月15日に議会で可決された、民主派による審議の引き延ばしを難しくする議事規制の改正案が、民主派と親中派との新たな対立の火種となってしまった。さらに、国家分裂行為を禁じる香港基本法(憲法に相当)23条に基づく「国家安全条例」の制定が18年以降で最も大きなヤマ場となり、社会を巻き込んで紛糾することが予想される。

23条の具体化および運用は、返還後の香港政府に委ねられていたが、03年に起こった市民の反発により草案が撤回に追い込まれた経緯がある。林鄭政権としては、国家分裂活動の発生を恐れ23条の追加を強く求める中国側の顔を立てつつも、広く市民の要望も聞くという、非常に難しいかじ取りが迫られている。

◇香港の新たな成長に向けて

経済面は長期的には緩やかな衰退期に入っている。背景には中国産業の台頭があり、特に物流業界が影響を受けつつある。すぐにではないが、将来的に香港が優位性をもって生き残ることができる分野は金融だけだと財界人は指摘する。危機感はかなり大きく、どのように現状を打破していくのかが課題だ。

その課題に対し香港政府は、中国の習近平政権が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」や華南地区を巻き込んだ「粤港澳大湾区(広東省、香港、マカオの経済連携を図るビッグベイエリア構想)」に代表される大型経済政策に乗り、強みの金融専門サービスを使って香港を利用してもらおうという考えである。

もうひとつは、人工知能(AI)、フィンテック、ロボットと言った新興産業の育成に乗り出すことだ。これらの産業については中国に倣えと、香港政府として支援金を出そうという動きもある。政府は新興産業での新たな成長に向けて青写真を描いている。

これら香港の構想に外資が参入できるのではないかという視点の下、NNAでは一帯一路、越境電子商取引(EC)、再工業化、香港、マカオと中国本土の広東省珠海を結ぶ海上大橋「港珠澳大橋」、粤港澳大湾区の5分野を取材した。

一帯一路や粤港澳大湾区は壮大なプロジェクトではあるが、それだけに全体像が見えづらい。しかし、将来の商機をつかもうと今から中国側とのパイプを作る動きが出ていることが注目すべき点であると分かった。

20年までの資金需要は8兆米ドル(約900兆円)と言われている。膨大な資金が動く中で、中国企業から出て行く資金の経由先の大半は香港である。このような状況下で、香港としては各種サービス業、金融業などでのサービス提供を目指していく計画だ。その上で、外資企業には必ず商機があるという見方を示す。特に欧米企業は香港を利用して、一帯一路に参画しようとする動きを積極化している。

香港の政府幹部、消費者、地元企業が何を考えているのか。今後もNNAは、「市場を深く知る」をキーワードに、地場に根ざした情報配信をしていきたい。

■<高田弁護士>中国における外国人就労許可管理制度改革

高弁護士は「中国における外国人就労許可管理制度改革」をテーマに講演=2017年12月22日、香港日本人倶楽部(NNA撮影)

高弁護士は「中国における外国人就労許可管理制度改革」をテーマに講演=2017年12月22日、香港日本人倶楽部(NNA撮影)

習近平氏が国家主席となって以降、「改革は深く、開放は広く」というスローガンの下、先進国ではない国・地域からの外国人の入国管理を強化する制度改革が行われた。

制度改革の特徴の一つが、2種類の管理制度を統合する「二証統合」である。

一般人材と高級人材の2種類の管理制度下にあった「外国人入国就業許可」と「外国専門家訪中就労許可」をまとめて一本化し、「外国人訪中就労許可」とした。

特徴の二つ目に、評価基準による分類管理も行われ、外国人人材はA・B・Cの3つにランク分けされている。Aランクは、外国ハイレベル人材。「奨励類」で制限なしとされた人材で歓迎されている。続いて Bランクの外国専門人材。「制御類」で市場ニーズや、どの産業に帰属するのかによる制限を受ける。次にCランクの外国一般人員。「制限類」で、制限は国家の関連規定による。

能力や実績、市場評価などと総合的なポイント加算制度によりランクが決まる。ポイントやその他の条件はどれも満たさなければならないわけではなく、どれか一つを満たせれば良いというものだ。

実務では、外国人が従業員総数の10%を超えないこと、特殊技能を要しない単純労働についての現地採用(外国人就業は認められない)に制限が設けられている。

◇ペーパーレスと手続きの簡素化

習政権はまた、査証(ビザ)の申請における手続きの簡素化やペーパーレス化を推進した。会社登記も許可制から届出制にするなど、以前より非常に便利になっている。

ビザの申請にあたり、外国人訪中サービス管理システムにアクセスした後に、仮審査をネットで申告し、オンライン審査を通過すれば外国人就労許可通知が発行される。この通知さえあれば、後は事務的な手続きでビザが下りる。

外国人就労許可証の手続きが不要な対象もある。実質的な変更がない名称のみの変更や、外国人就労許可証なしでZ(就労)ビザおよび関連証明で直接就業証を取得する場合、労働契約が国外法人と締結され、労働報酬が海外から支給される場合、中国における就労期間が3カ月を超えない場合がそれに当たる。

◇外国人就労許可証手続きを行わない場合

外国人就労許可証の手続きを行わない場合は、労働関係の存在が認められず、労働者、雇用者ともに行政処罰が下る結果となるため、中国進出にあたって注意しなくてはならない。

外国人労働者に関連就労手続きを行うよう促すとともに、外国人就労許可証の定期的なチェックや、新制度を熟知した上で年齢や学歴を前もって社内で精査し、技術者として派遣するのか、管理職として派遣するのかを考慮する必要がある。


関連国・地域: 中国香港日本
関連業種: その他製造金融建設・不動産IT・通信電力・ガス・水道マクロ・統計・その他経済雇用・労務政治

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