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【有為転変】第175回 総選挙をかき回すコガモ(Teal)

いよいよ明日21日に迫ったオーストラリアの総選挙は、最大野党労働党が優勢といわれる。だがシドニー・モーニング・ヘラルド(SMH)紙の最新の支持率調査によると、ここに来て与党保守連合(自由党・国民党)が34%と、労働党(31%)を逆転している。今回の選挙で大きな混乱を引き起こしているのは、二大政党から距離を置く小政党や「ティール(Teal)無所属」と呼ばれる候補である。もしも過半数議席を持つ政党がない「ハング・パーラメント(宙づり議会)」になった場合、彼らは完全にキャスチングボートを握る存在となる。一体、そのティール無所属とは何者なのか。

オーストラリアの保守連合のイメージカラーは青、労働党は赤で、グリーンズ(緑の党)は当然ながら緑だ。そこに台風の目となっているのが、無所属で保守寄りの環境派、つまり「緑がかった青」や「コガモ」を意味する「ティール」である。

先の支持率調査では、◆グリーンズ=14%◆右派政治家のポーリン・ハンソン氏率いるワンネーション=6%◆富豪クライブ・パーマー氏率いるユナイテッド・オーストラリア・パーティー(UAP)=4%――などと、小政党だけで計28%。これらに加えて、無所属候補への支持率が6%ある。このため特に、ティール無所属が保守連合の票を食う構図が問題になっているわけだ。

17日付でオーストラリアン紙に掲載された風刺画。緑がかった青のコガモ(Teal)が温めた卵から、緑がかった赤の鳥(労働党政権)がかえろうとしている。ダボス会議のテーマ「グレート・リセット」と総選挙を引っ掛けたものだ。

17日付でオーストラリアン紙に掲載された風刺画。緑がかった青のコガモ(Teal)が温めた卵から、緑がかった赤の鳥(労働党政権)がかえろうとしている。ダボス会議のテーマ「グレート・リセット」と総選挙を引っ掛けたものだ。

具体的には、ティール無所属は、アレグラ・スペンダー氏(NSW)、モニーク・ライアン氏(VIC)、ザリ・ステガル氏(NSW)、ケイト・チェイニー氏(WA)ら22人の候補者である。

大半が女性で、弁護士などの専門職を持つ。主に労働党やグリーンズの勝ち目がない、保守系男性議員が長年居座ってきた選挙区で立候補していることから、票を奪われる保守連合が眉をひそめている構図だ。前回の総選挙で、ザリ・ステガル氏がトニー・アボット元首相を引きずり下ろしたのはその典型例である。

保守連合だったターンブル元首相は、後継のモリソン政権閣僚らと対立関係にあるため、「保守派の論調を嫌うなら無所属に投票したらいい」などと、ティールを宣伝する発言をして物議を醸したこともある。

■富豪のファンドが資金源

ではティールの支持基盤やその主張は何なのか。

ティールは、基本的に「無所属」として立候補しているものの、彼らは主に「気候変動への取り組み」と「反汚職委員会の設置」という2つの共通政策をシェアしている政策連合のような存在だ。その意味ではグリーンズに近い左派とも言える。

ティールの存在は、先の2分野で保守連合政権は十分に責任を果たしていない、と考える保守層の支持を得ており、今回の選挙では『緑がかった青』を選ぶ、というイメージ戦略に成功しているのだ。

候補者22人の資金源は主に「クライメート(Climate)200」と呼ばれるファンドである。SMHによると、このファンドが、ティール1人当たりに約50万豪ドル(約4,600万円)支給する。メディアに資金源を尋ねられると、22人全員が「クライメート200からの資金は、選挙活動費の半分以下だ」という型にはまった回答をするという。独立系議員が一つのファンドに資金を依存している状況に、「実際には独立しているのか」という疑念も強まっている。

■2大政党のどちらに付く?

このファンドの設立者は、富豪で政治活動家のサイモン・ホームズコート氏である。同氏は以前、フライデンバーグ財相の資金団体「クーヨン(Kooyong)200」の資金提供者だったが、同氏がエネルギー大手AGLのリデル石炭火力発電所の閉鎖を主張したため、フライデンバーグ財相から追放された。同氏がその後自分で創設したのが、「クライメート200」だった。

メディアで注目されるのは、総選挙でハング・パーラメントになった場合、ティールは保守連合か労働党かどちらに付くのか、ということだ。モリソン首相は「ティールに投票するということは労働党に投票するということであり、議会の混乱を生むということだ」と、秋波は送らない方針だ。

ともあれ、保守連合が追い上げているとはいえ、フタを開けてみれば、下馬評通り労働党が政権を奪い返す可能性は高い。

近年日本政府は、アボット政権以降、約9年間にわたり、保守連合政権との蜜月期を築いてきた。中国寄りで、旧日本軍による攻撃をあからさまに非難してきた労働党幹部とは明らかに一線を画していたと言える。

その意味で、もしも今回労働党政権が誕生する場合、日本にとっては、外交上いささか「ぎこちなさ」があることを、覚悟しておいた方がいいかもしれない。【NNA豪州・西原哲也】


関連国・地域: オーストラリア
関連業種: 社会・事件

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