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【アジアの風、日本のゆくえ】(第7回) コロナ後に備えよ、新興国経済の質の変化に注意

1人当たりGDP(国内総生産)が4,000米ドル(約50万円)にも満たないベトナムで、同国新興企業のビングループが電気自動車(EV)の国産化に乗り出した。これは先進国と新興国・途上国との情報格差が急速に縮小していることを反映している。そしてこのトレンドはコロナ後もデジタル化によって加速する。準備を急ごう。【亜細亜大学アジア研究所教授・大泉啓一郎】

■新興国・途上国経済が先進国を凌駕

20世紀末に世界経済の8割を占めていた先進国のGDPシェアは2021年には6割に縮小し、新興国・途上国のそれは2割から4割へと拡大した(図)。このトレンドを延長すると、2030年代に先進国と新興国・途上国の経済規模は逆転する。

図が示すように、20世紀と21世紀では、そのトレンドはまったく異なる。

20世紀は先進国と新興国・途上国の間に明確な経済格差があった。これは南北格差と呼ばれ、そこから派生する問題は南北問題として議論された。しかし、21世紀に入って新興国・途上国経済の躍進は、南北問題を終焉(しゅうえん)させる方向へと進んでいる。

■20世紀は生産技術情報を先進国が独占

南北問題の時代とは、先進国が生産技術に関する情報(以下、生産技術情報)を独占した時代であったといえないか。英国で起きた産業革命以降、工業製品の大量生産の技術情報を独占したのは先進国であった。いや生産技術情報を独占することで先進国になったというのが正確だ。欧米・日本がそれだ。そのような生産技術情報を取り入れることができなかった国は途上国にとどまった。

■グローバル化とデジタル化が情報格差を縮小

しかし、この構造は1980年代後半から多国籍企業による新興国・途上国への進出の本格化によって徐々に変化した。先進国企業は、コアの生産技術情報を先進国に残しながらも途上国へ技術・経営ノウハウなどの情報を伝達した。他方、技術のデジタル化は部品の標準化を進め、途上国でも高技術製品の生産を可能にした。さらにインターネットの出現は、生産技術を含めてさまざまな情報格差を急速に縮小させている。南北格差の原因であった先進国が情報を独占する時代は終わったのだ。

■サービスに関する情報格差も縮小

そして2020年以降のコロナ禍で、非接触型技術としてデジタル技術の活用が世界中で加速した。新興国・途上国でもキャッシュレス決済、電子商取引(EC)、デリバリーなどは当たり前のものになろうとしている。サービスに関する情報も急速に世界で共有されるようになっているのだ。

■コロナ後のアジア戦略、点検を

これらのことを考えれば、1人当たりGDPが4,000米ドルに満たないベトナムのEVの国産化は驚くべき出来事ではない。もちろん、ベトナムが日本のライバルになるのは、まだまだ先の話である。しかし、私たちが直視すべきは、ベトナムのような10年前までは低所得国と言われた国でも高度技術製品の国産化が実現可能な時代に突入しているということだ。加えて、このトレンドは、コロナ禍で加速していることにも注意を払おう。

もう一度、図をみてほしい。世界の経済構造は20世紀のものとは大きく異なる。それに対応する準備ができているのか。コロナ感染対策の規制が各国で緩和されるなか、コロナ後のアジア戦略を点検しよう。


関連国・地域: 中国香港台湾韓国タイベトナムミャンマーカンボジアマレーシアシンガポールインドネシアフィリピンオーストラリア日本
関連業種: 自動車・二輪車電機マクロ・統計・その他経済

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