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【食とインバウンド】 学校給食でもプラントベース

第34回

プラントベース(植物性)食品が学校でも広がり始めています。今年2月、米国ニューヨーク市は市内の公立学校で毎週金曜日にプラントベースの給食を提供することを始めました。「プラントパワーフライデー」と名付けられたこの取り組みは、1月に就任したアダムズ市長が主導したものです。ヴィーガン(完全菜食主義者)でもある同氏は、「子どもたちに栄養価の高い食事を提供するため」と述べています。そこで今月は米国の学校でも広がり始めたプラントベース食品について考察します。

■導入は肥満防止のため

ニューヨーク市教育局によると、対象となるのは同局が管轄している1,800の学校で学ぶ110万人の生徒たち。毎週金曜日に提供されるプラントベースの給食は、各学校内または付近の施設で調理され、新鮮な状態で提供されます。チーズサンドウィッチや牛乳など動物性食品も選択できることからプラントベースのみというわけではなく、あくまで金曜日のメインディッシュとして提供されています。

導入に際してアダムズ市長は、「生徒たちの肥満や糖尿病問題は深刻で、毎日通う学校での食事も見直さなければならない。健康的な食事は生徒たちからの要望でもある」と語りました。米国では子供の約3割が肥満で糖尿病予備群であると言われており、中でも学校給食のランチを食べる子供は肥満傾向にあります。かつてはミシェル・オバマ元大統領夫人が立ち上げた「子供の肥満撲滅キャンペーン」で給食の栄養価は改善されましたが、その後就任したトランプ政権がキャンペーンを排除してしまったため、給食改革は全米の課題となっていました。

ニューヨーク市の動きにマイアミ市、ロサンゼルス市、シカゴ市、テキサス州、ミネソタ州も追随しています。シカゴ市では「プラントフォワード(進める)サースデイ」と銘打ったキャンペーンを始めているほか、テキサス州ではオプションとして毎日プラントベース給食を提供しています。ミネソタ州のある学校では2024年までにメニューの10%をプラントベースへ置き換える方針を打ち出しています。

■米国ではこれからが普及期

こうした各都市の動きは、子供たちの健康問題もさることながら、彼らの食への意識も背景にあるようです。プラントベースフード協会の調べによると、Z世代(現在13~19歳)である回答者の79%が「週に1、2度はプラントベース食品を食べる」と回答しています。これは健康に対する配慮もさることながら、コロナ禍における環境意識が影響していると考えられます。これは英国でも同じで、同国のZ世代の35%は肉食を止めたか減らしていると回答しています。

図は米国のレストランのメニューにおけるプラントベースの浸透率の推移です。2008年はわずか1.9%ほどでしかなかったのが、10年後には11.2%にまで浸透しました。つまりどのレストランでも2、3品はあるイメージでしょうか。これはコロナ禍前のデータですので、現時点ではもう少し増えていると推定されます。なお、学校給食でプラントベースを提供している学区は全米の14%ですので、米国ではまさにこれからが普及期だと言えそうです。

■日本は極端な二者択一

一方で日本はどうでしょうか。昨年末ヴィーガン給食を導入した公立学校を絶賛する報道について、ある議論が巻き起こりました。ヴィーガンは健康上良くない、またそれでアレルギー対策になるというのは危険だというものです。前者についてはエビデンスを確認できていないので何とも言えませんが、後者については指摘は正しいです。ヴィーガンは全てのアレルギーに対応しているわけではありません。

ただ、この議論は少々極端なのではないかと私は感じます。ヴィーガンをプラントベースと言い換えれば、ここまで問題にならなかったかもしれません。ヴィーガンは確かに主義主張ですが、ようは動物性のものを使わないという方法論でもあります。従って、二者択一ではなく米国のように選択肢の一つとすれば良かったのではないでしょうか。お野菜たっぷりのメニューを健康上良くないと言うのは少々無理があります。

こうした議論からも垣間見えるように、日本の学校現場ではプラントベース食品の普及は進んでいません。そうしたニーズには除去食として限定的に対応しているのが実状です。除去とは中心となるものから取り除いて残ったものを指します。一方でプラントベースは野菜をベースにその他を取り込むことを指します。結果的に同じものであってもイメージは随分異なるものです。除去ではなく付加、排他ではなく

融和。学校給食においてもダイバーシティ&インクルージョンが求められているのではないでしょうか。

<プロフィル>

横山 真也

フードダイバーシティ株式会社 共同創業者

キャリアダイバーシティ株式会社 共同創業者

UMAMI UNITE PTE LTD 共同創業者

ヨコヤマ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役

2010年日本で独立開業後、12年Yokoyama & Company (S) Pte Ltd(シンガポール)を設立。

14年ハラールメディアジャパン株式会社(現フードダイバーシティ株式会社)、20年キャリアダイバーシティ株式会社を共同創業。

21年ドイツのProVeg International が主宰するアクセラレーションプログラムに選出(日本企業として初)され、UMAMI UNITED PTE LTD(シンガポール)を共同創業。

日本と海外での500社以上のプロジェクトマネジメントが評価され、16年シンガポールマレー商工会議所から起業家賞を受賞(日本人初)。

19年米トムソン・ロイター系メディアSalaam Gatewayから“日本ハラールのパイオニア”と称される。

著書に「おいしいダイバーシティ~美食ニッポンを開国せよ~」(ころから株式会社)。

ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科修了(MBA)

ビジネス・ブレークスルー大学 非常勤講師

東洋大学国際学部非常勤講師


関連国・地域: 日本
関連業種: 食品・飲料運輸社会・事件

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