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【農業通信】最強ブランド「オージービーフ」の拡大を 豪MLA駐日代表インタビュー

オーストラリアの2021年の牛肉輸出量は、88万トンを超えた。その4分の1以上の23万トンを輸出する最大の貿易相手国は日本だ。日本から見ても輸入牛肉市場のシェア1位は「オージービーフ」で、強いブランドを確立していると言える。オーストラリアの畜産業界の中心的な組織で、食肉輸出の促進や各種制度の設計などを行うオーストラリア食肉家畜生産者事業団(MLA)のスコット・ウォーカー駐日代表に、「オージービーフ」の日本市場における展開について、話を聞いた。【オセアニア農業食品専門誌ウェルス編集部】

「オージービーフ」は最強のブランド、とウォーカー代表

「オージービーフ」は最強のブランド、とウォーカー代表

――日豪貿易におけるMLAの役割は?

日本はオーストラリアにとって牛肉輸出高の23%を占める大変重要で活発な市場です。一方で日本ではオージービーフは輸入牛肉の41%の市場シェアを占め、最も好まれ高く評価されている牛肉です。

MLAは、この高い評価と良好な市場アクセスの強化のため、畜産農家の賦課金を活用してさまざまなプログラムを展開しています。主な目的は業界や政府と協力し貿易交渉におけるオーストラリアの地位を引き上げ、非関税障壁を取り除くことですが、MLAジャパンが最終的な責任を負っているのはオーストラリア産食肉の日本における需要の促進と拡大です。具体的にはビジネス向けのセミナーやトレードショー、消費者向けには大規模キャンペーンを実施し、市場調査や消費者教育も行います。

例えば、昨年は東京オリンピックに合わせ「レッツ・バービー」キャンペーンを豊洲で開催しました。レインボーブリッジの正面の会場で、一度に1,000人がバーベキューを体験できるイベントです。期間中に8万人の来場者を迎え、われわれにとっても「オリンピック級」のキャンペーンとなりました(笑)。

こうした活動が、日本の消費者に対しオーストラリア産食肉の強みを訴求すると同時に、良好なイメージを喚起し需要を促進するという目的達成につながります。

オーストラリア産牛肉の基礎は、「『クリーン&グリーン』で安全、信頼性が高く、しかもおいしい」という点にあります。

消費者はわれわれが想像している以上に、食の安全を重視しています。そのためMLAは、日本の消費者に向け、オーストラリアの食肉でより食の安全に自信を持てる、というメッセージを発信したいと思っています。

また、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で外食もままならない中、これまでは日本の家庭ではあまりなじみのなかった厚さ3センチのステーキを、おいしく安心して味わってもらいたいですね。

――ビジネス向けにはどのような活動を?

日本企業とパートナーシップを構築し、彼らのビジネスの成功を支援することも多数行っています。最近では大手ホテルのシェフらに、カーカス(枝肉)の効率的な処理と二次カット肉の有効利用のトレーニングを実施しました。そのホテルグループの飲食部門の売り上げを伸ばし、コストを削減すると同時にオージービーフの販売を拡大することにつながります。

また、商品に対する消費者の信頼度を高めたいファストフード・チェーンとも協力しました。オージービーフの高品質で安全、安心という点を強調することで、そのチェーン自体が消費者の信頼を得て利益を回復する、そういった形のビジネス支援も行っています。

このほか、MLAには市場調査や消費者のインサイト(洞察)を提供する業務もあります。MLAは商業的な議論に加わることはありません。ですが市場参入を目指す企業に対し、消費のトレンドを動かしているのは何か、どの商品がどの市場に適しているのかといったナレッジ(知識)を提供することができます。

例えば、オーストラリアの牛肉業界は2030年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を実現することを目指しています。日本の商社、小売業者、飲食業者はこのことがいかに自社の利益につながるか理解し、どう顧客の需要を引き上げるか検討する際に、MLAは協力することができます。

日豪貿易を計画している日本企業は、ぜひわれわれに連絡してほしいですね。MLAが行う業務は、すべて彼らを支援するためにある、と言ってよいと思います。

――米国産牛肉との競合は?

米国産牛肉との競合に対処するためには、オーストラリア産牛肉の差別化が重要だと考えています。繰り返しになりますがオージービーフのアピール点は「『クリーン&グリーン』で安全で信頼できる」という点です。この点を強調することが大事ですね。

ただ、実際のところ米国産と直接の競合になっているとは思いません。両国はそれぞれの強みに焦点を当て、異なったマーケティングやプロモーションをしています。われわれは業界全体をサポートすることで、オーストラリア産の牛肉や羊肉に対する需要を大きくしていきたいですね。

――オージービーフは日本市場に定着したと思いますか?

一般的にオーストラリアの食品は、日本人に高く評価され信頼されていると思います。食肉はその中の最大の品目で、オージービーフは最も知られているブランドです。私もタクシーの運転手さんに「オーストラリアから来ました」と伝えると、必ず「おぉ、オージービーフですね!」と言われます(笑)。そのくらいオーストラリア産の牛肉は日本で認知されています。これは過去数十年にわたる堅実なマーケティングやプロモーションの成果だと思います。日本とオーストラリアには良好な貿易環境が整っており、業界間には、多くの共通の価値や相互理解、ロイヤルティーが存在し、消費者はこれまでの数十年の関係を記憶しています。そのおかげでオージービーフは高品質の代名詞として認知され、オーストラリアは日本市場に対し、安定した供給を続けられるのだと思います。

また、オーストラリアの食肉は、日本人の食べ方にうまく適応できます。日本に独特な牛丼から、厚切りステーキまで用途が広い。用途の広さと高い知名度が強い需要を生むと考えています。

――オーストラリアの畜牛価格が高騰しています。日本市場に影響しますか?

オーストラリアは現在、牛肉の生産量が歴史的な水準にまで減少しています。2020年以降、それまでの干ばつから気候条件が回復したことで畜産農家が牛の飼育頭数を増やし始めたことが背景ですが、それらの牛が年末までに市場に出てくる。つまり供給が増加します。21年の供給量は前年比7%増で、22年までは増加傾向が続くとMLAは予想しています。

一方、実際に日本向けの21年9月の牛肉輸出量は9%減少しました。日本の飲食業界は厳しい状況ですが、需要は安定しています。コロナによる不確実性が強く、供給がタイトな中でも、多くの顧客がオージービーフを選択した結果だと思いますが、過去12カ月は流動的な状況が続きました。全般的に畜牛価格の上昇は日本市場にも影響を与えると思いますが、牛の数を増やしている時期ですから、すべての市場に対して状況は同様です。

ただ、われわれの最大市場である日本とは、現時点では少し厳しくても、オーストラリアとの貿易に関し長年の安定した関係が築かれています。互いの価値をよく認識し、高く評価していることから、他の市場よりも回復力があると思います。

――新型コロナの影響はありますか?

これは最大級の影響と言ってよいと思います。コロナは消費者に対し、どう食事を用意するかあらためて考えさせる契機になりました。自宅で食事をとる傾向が強まったことで、小売業界の需要が増加しました。また興味深いことに、消費者がこれまでに食べなかったタンパク質を試してみるという流れが現れました。これは羊肉にとって望ましい傾向です。

一方で、われわれの重要なパートナーでもある飲食業界は大変厳しい状況です。営業時間の短縮や酒類の提供中止、在宅勤務の増加などで、レストランや居酒屋などへの打撃は大きいものがあります。ただし飲食機会の多様化が進んだことで、ファストフードやデリバリー業界の需要は増加し、オーストラリア産牛肉はこうしたチャンネルに浸透しました。またコンビニ業界と調理済み食品業界にも、です。日本は世界一コンビニ産業が進んだ市場ですから、ここ数年この分野への進出を目指していたわれわれにとって前向きな影響を与えました。

とはいえ、過去2年間で飲食業界は大きく苦しんだことは間違いありません。

ただ、われわれはパンデミックの初期に、通常のレストランが焼肉店に業態替えをする傾向があることに気付いていました。テーブルの上のファンが換気を促し、感染のリスクが減るということなのでしょう。この傾向は現在でも継続しているので、MLAとしては良い傾向ということになります。

今後オミクロン株がどう影響するか分かりませんが、いずれ多くの人が国内を旅行し、出張需要も高まっていくと思います。私も先日福岡に行ったところ、現地の人は忙しいと言っていました。これは回復の兆しだと思います。経済が上向き、消費者がさまざまな機会や場所で食事を楽しめるようになれば、オーストラリア産牛肉も恩恵を受けるでしょう。消費者がオージービーフを自宅で消費する傾向も素晴らしいことですし、需要は継続して安定すると考えています。

――植物由来食品が世界的に広がりを見せています。日本では?

実際に日本でも、主要な食肉会社の多くが肉代替製品の販売を始めています。今では加工食品から即席麺まで、さまざまなカテゴリーで植物由来肉の商品が見られます。これに関しMLAは2020年に消費動向を調査しました。日本の消費者の55%は植物由来食品について聞いたことがありますが、実際に購入したことがある人は16%に過ぎないということが分かりました。世界では71%の消費者が聞いたことがあると回答していますので、日本ではまだ認知度が低いですね。東京に居住する比較的裕福な層が試している、といった状況だと思います。

植物由来食品に関しては、特に味がまだまだ普及の障害になっていると思います。特に日本の消費者は本物の肉の味を好みますね。また、調査では価格が再購入をためらわせているという結果も出ています。

――韓国の代表も兼任されていますが、韓国市場の状況は?

オーストラリア産食肉にとって、韓国は昨年最も成長した市場の一つです。消費者1人当たりの牛肉年間消費量は、日本を超えています。韓国の消費者にとって最も重要なのは信頼で、オージービーフはそれに応え、力強いイメージを与えています。オーストラリアにとって韓国は2番目に大きい市場となり、昨年は後半に輸出量が関税割当量に達してしまいました。

私は昨年3月に来日する前は、韓国に11年間在住しており韓国語も話せます。

私のバックグラウンドは国際ブランドマーケティングなのですが、マーケッターとしての視点で言うと、日本市場における「オージービーフ」は最高の認知度を誇る最強のブランドだと思います。このような素晴らしいブランドをすでに手に入れているので、私の仕事はこれをいかに拡大させるかだと思っています。(聞き手=湖城修一)

<メモ>

オーストラリア食肉家畜生産者事業団(Meat & Livestock Australia、MLA)

1998年に生産者の出資により設立された業界団体で、前身はオーストラリア食肉畜産公社。オーストラリア産の牛肉と羊肉および生体牛・羊の国内外における販売促進、研究・開発、市場開拓、品質保証制度の推進など多面的に活動する。生体牛の価格の目安となる、東部地区若齢牛指標価格(EYCI)などの市況情報も集計・発表している。


関連国・地域: オーストラリア日本
関連業種: 食品・飲料農林・水産サービスマクロ・統計・その他経済

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