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無店舗飲食業への関心高く 料理宅配の需要増で、日系も参入

シンガポールで、実店舗を持たない飲食業への関心が高まっている。現地の配車サービス大手などが同形態の飲食店向けの共同調理施設を提供している。新型コロナウイルスの影響で店内飲食の禁止措置などが導入される中、料理宅配サービスを利用する人が増えていることが背景にある。人件費・賃料が高額な市場で、事業の成長可能性に注目する日系企業も参入を計画している。業界関係者からは需要継続を見込んで事業拡大を続けるとの声が出ている。【上村真由】

シンガポールでは、料理宅配サービスの需要拡大を背景に、実店舗を持たない飲食業への関心が高まっている=シンガポール東部(NNA撮影)

シンガポールでは、料理宅配サービスの需要拡大を背景に、実店舗を持たない飲食業への関心が高まっている=シンガポール東部(NNA撮影)

シンガポールの配車サービス大手グラブは2020年1月、西部ブキバトックに共用調理施設「グラブキッチン」を開設。同年10月には、中央部アルジュニードに2カ所目の施設を設けた。

料理宅配サービスを提供する飲食店向けだが、飲食スペースも併設している。いずれの施設も既に入居率は100%で、計30店以上が利用している。

英料理宅配サービス大手デリバルーは17年、ドイツの同業フードパンダは18年に、シンガポールで同様の事業を開始。それぞれ現在、国内で2カ所を運営している。

大手3社に加え、外食・ケータリングサービスを手掛けるセレクト・グループは、郊外を中心に8カ所の共同調理施設を展開する。現地のスマートシティー・キッチンズは今年6月、国内6カ所目となる拠点を中央部ビシャンに設置した。

共同調理施設は、飲食店にとって大きな利点があるようだ。スマートシティー・キッチンズのカントリーマネジャー、エイリン・アガザリアン氏は「飲食店は人口の多い場所に調理施設を設置し、(インターネットの)プラットフォームを通じて料理を販売できる。従来の飲食店運営よりもはるかに少ない経費で、短期間で事業を始められる」と説明した。

グラブの広報担当者は「飲食店は低コストで、新しい消費者に到達できる機会を得られる。消費者にとっても飲食店の選択肢が広がる点が魅力だ」と語った。

■感染対策導入で需要拡大

シンガポールで、実店舗を持たない飲食業への注目度が高まっている背景には、新型コロナの影響で、料理宅配サービスに対する需要が拡大していることがある。

シンガポール政府は20年4月上旬から約2カ月間、感染対策として経済・社会活動を制限する「サーキットブレーカー」を導入。大半の小売店を閉鎖し、飲食店での店内飲食を禁止した。

今年に入ってからも、感染が再拡大するたびに規制を強化。直近では7月中旬から8月9日まで店内飲食を禁止していた。現在も人数制限やワクチン接種の完了を店内飲食の条件としており、飲食店はフル稼働できていない状態だ。

スマートシティー・キッチンズは、6カ所目の拠点開設時の声明で「コロナの感染拡大が続く中、飲食店は大きな打撃を受けている」と指摘。閉店を選択する店舗の数も増えるなど、先行きが不透明な中、共同調理施設という新しい事業機会が生まれていると説明した。

フードパンダの広報担当者は、「サーキットブレーカーの期間中に、多くの人が料理宅配サービスに頼るようになった。飲食店は共用調理施設を利用すれば、コストを削減しながらオンラインで注文した顧客に素早く商品を届けることができる」と語った。

シンガポール統計局によると、21年6月の外食産業全体の売上高のうち、オンライン販売が占める割合は48%とほぼ半分を占めた。同比率は、19年通年では平均9%だったが、サーキットブレーカーの2カ月間には平均44%に上昇。その後も高水準を維持している。

■7億米ドル市場に照準

ドイツの調査会社スタティスタによれば、シンガポールでの料理宅配サービス市場の収益は、21年に4億6,700万米ドル(約513億円)となり、前年から16%、19年から82%それぞれ増加する見通しだ。25年には6億8,900万米ドルに拡大すると予想されている。

需要増を受け、日系企業も無店舗飲食業への参入を計画しているほか、現地・外資系大手は事業拡大を続ける方針だ。

日系コンサルティング会社YCPグループ(本部・シンガポール)のマネジングパートナー兼東南アジア統括責任者の粕本晋吾氏は、「実店舗を構えず、配達のみで営業する飲食店の設立に向けて準備を進めている。今年9~10月にも営業開始を見込んでいる」と明かした。

粕本氏は「当地は賃料と人件費が極めて高い。拡大する料理宅配サービス需要に応えつつ、コストを低く抑えながら運営できる」と利点を強調する。

グラブの広報担当者は「料理宅配サービスの時流に乗って引き続き、共用調理施設のビジネスは拡大するとみている。同市場での成長機会を模索し続ける計画だ」と述べた。

フードパンダの広報担当者は「今後、店内飲食が完全に認められるようになっても、すぐに料理を受け取れるという利便性から、消費者はオンライン注文を利用し続けると予想している」と説明。同サービスの伸びを見込んで、シンガポールでの共同調理施設の拠点数を増やす予定だ。

デリバルーの広報担当者は、「コロナ流行下で発展した消費者の習慣が消えることはないだろう。確実に料理宅配サービスはニューノーマル(新常態)になる。多くのビジネスチャンスがあると言える」とコメントした。

配車サービス大手グラブが西部で運営する共同調理施設の一般開放スペースのようす。写真左の壁に入居している飲食店のロゴが掲げられている=シンガポール西部(NNA撮影)

配車サービス大手グラブが西部で運営する共同調理施設の一般開放スペースのようす。写真左の壁に入居している飲食店のロゴが掲げられている=シンガポール西部(NNA撮影)


関連国・地域: シンガポール
関連業種: 食品・飲料建設・不動産運輸IT・通信サービス

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