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【有為転変】第162回 CBAの不祥事と日本市場

最近、オーストラリアと日本の商業慣行の違いを象徴するようなニュースがあり、考えさせられている。オーストラリアの銀行最大手、コモンウェルス銀行(CBA)が複数にわたりシステム障害を起こし、ネットバンキングなどが使えなくなる事態になったことだ。ご多分に漏れず、オーストラリアでこうしたトラブルが起きるのは特筆するに値しないが、さすがに驚かされたのは、CBAによるその後の対応だった。

今年最初のCBAのシステム障害が発生したのは6月17日。続いて同23日には、顧客店舗の決済ターミナルやオンライン・バンキング・システムがダウンした。顧客の認証システムと別銀行をつなぐシステムに誤作動があったとされる。

さらに7月6日午前には、店舗やオンラインショッピングなどで決済できないCBA口座の利用者が続出した。CBAのアプリや決済システムなどのサービス間でデータ交換が不能になったのが原因で、報告を受けたものだけでも、数千件の被害があった。決済できず、100豪ドル(約8,300円)相当の損失まで被り、補てんもされなかったという被害者もいたという。システムダウンは、夕方5時半になってようやく復旧した。

これらはオーストラリア国内でもテレビや新聞などで報道はされたものの、その扱いは大きくはなかった。

■不祥事とあっさりした対応

CBAは6日午前11時過ぎ、自身のフェイスブックのページ上で、謝罪文らしきメッセージを載せたものの、それもたった1回だけ。最後に載せた「近くアップデートします」との言葉もむなしく、2日後にはCBAが協賛した文化芸術イベントに関する、システムダウンとは全く関係のないメッセージを上げている。

日本人としていささか驚いたのは、現在にいたるまでCBAが「リリースを出して」正式に謝罪することがなかったことだ。ましていわんや、CBAのマット・コミン最高経営責任者(CEO)が謝罪会見するなど、万が一にもあり得ない雰囲気だ。

さらに最初の障害から2週間以上もたってから、CBA決済部門長のサイモン・バーチ氏が、オーストラリアン紙(4日付)に「これは単に、幾つもある保守作業の人的ミスで、サイバー攻撃とは関係がない」と、身内のミスであることを認めていた。総務でも広報でも、ましてCEOでもない、決済担当の部長が直接メディアに回答したことも、CBA幹部が事態をさほど問題視していないことを示しているかのようだ。

実はCBAの不祥事は、今回だけではない。

CBAは今年4月、1万件以上に上る顧客への金利過剰徴収が判明し、500万豪ドルもの罰金を受けている。

さらに呆れるケースでは、約3年前に5万3,000件以上に上るCBAを通じた資金取引が麻薬取引組織への資金流入につながったとし、反マネーロンダリング(反資金洗浄)違反などで、当局から7億豪ドルに上る巨額罰金を受けたことも記憶に新しい。これはオーストラリア史上最高の罰金額である。

■対照的な日本での対応

こうした事態に驚きをもって見たのは、同じ時期に、同じようなニュースが日本で流れていたからでもある。みずほ銀行が、2月末から4回にわたってシステム障害を起こしたことだ。

これに関しては、日本のテレビや新聞などの大手メディアは軒並み、トップ級の大ニュースとして扱った。同行は、発生直後の2回にわたり記者会見を開催し、トップの頭取含めた幹部が顔を見せて謝罪した。持ち株会社の社長も謝罪し、同社長と頭取の報酬削減のほか、担当役員が退任するけじめを見せた。

メディアで非難されただけでなく、同行は第三者委員会を設置して調査報告書をまとめ、再発防止策を導入することになった。この上さらに、近く金融庁の処分が下される。

2つのメガバンクを巡り、同じ時期の同じようなシステムダウンに見えるが、その後の対応があまりに違うのでいささか戸惑っている。海外各国では、銀行のATM(現金自動預払機)の故障などニュースにもならないが、日本の銀行は、公的機関としての厳格な運営や規律を国民に求められているところがある。その厳格さは、おそらく世界随一だろう。

それはいいとしても、考えさせられるのは、このグローバルな時代に、銀行だけでなく、日本企業や日本市場だけが求められる基準の敷居が極めて高いことである。そのことが、日本企業の高品質な商品や歩留まりの高さを生み、日本製の評価を高め、高度なサービスも世界で絶賛されてきたのは事実だ。

だが近年、外国企業が力を付けるにつれ、それが日本企業の国際競争力を失わせ、首を絞める例が目に付くようになっている。閉じられた市場の厳格な規制や敷居の高さは必ず、外国企業が課せられることのない、莫大な運用コストや人員増を背負わされるからだ。

銀行だけでなく、環境基準、不動産の品質、加工食品、ホテル業界などでの過剰なサービスなど、その分野を挙げたら切りがない。だからといって、その厳しい基準を下げることもままならない。

ちなみにオーストラリア株式市場のCBAの株価は、まさにシステム障害の渦中にあった6月17日に過去最高値を付け、今も絶好調である。【NNA豪州・西原哲也】


関連国・地域: オーストラリア
関連業種: 社会・事件

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