オーストラリア連邦政府のテハン貿易相はこのほど、英国と欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)締結交渉の年内合意を目指す方針を示した。豪中関係が悪化する中、中国以外の新たな市場開拓を急ぐとしている。その一方で、豪中間の貿易摩擦解消に向け、中国政府との対話を模索していくことを明らかにした。また、米国のバイデン新政権と緊密に連携し、米国の環太平洋連携協定(TPP)復帰を促す構えを見せた。地元各紙が伝えた。
テハン貿易相は「FTAが締結されれば、新たに5億人規模の市場拡大が見込める」と説明し、「交渉は可能な限り迅速に進める計画で、年内にも英国とEUそれぞれとの間で合意に至れば理想的だ」と話した。同相は21日、英国のトラス国際貿易相と交渉前進に向けて対話を行っている。
オーストラリアがFTA交渉を急ぐ背景には、緊迫する豪中関係がある。中国政府はこれまで、農産物をはじめとするさまざまなオーストラリア産の商品に対し輸入制限措置を講じてきた。オーストラリア政府は現在、中国の港に入港できず海上に停泊中の60隻以上のオーストラリア産石炭の貨物船を巡り、中国政府との対話を模索するも難航している。テハン貿易相は「失望している。長期戦が予測されるが、粘り強く対話の糸口を探っていく」と述べた。
また、米国のTPP復帰に関し、同相は「復帰が可能かどうかを見極めたい」とコメント。「米国のTPP復帰を促すことは、バイデン新政権との間における重要な優先課題の一つだ」として、米通商代表部(USTR)の代表に就任するキャサリン・タイ氏と緊密に協議していく意向を示した。
■12月貿易速報値、対中輸出21%増
豪政府統計局(ABS)が25日に発表した、昨年12月の貿易収支(速報値)は、中国向け輸出額が前月比21%増だった。鉱物資源の輸出額は25%増加し、穀物は681%増だった。中国はオーストラリアに対してさまざまな貿易制限を課しているものの、オーストラリアの対中輸出は拡大した。
一方、日本向け輸出は24%増で、鉱物資源が44%増となった。一般炭と原料炭はそれぞれ、38%増と62%増だった。
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