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【アジアの本棚】『2030中国自動車強国への戦略 ――世界を席巻するメガEVメーカーの誕生』

新エネ車で日米欧へのキャッチアップ目指す中国

中国は世界最大の自動車市場だが、国有企業と合弁で生産する外資ブランド車が依然大きなシェアを持ち、民族系メーカーは苦戦している。自動車の中枢であるエンジンやトランスミッションの生産技術でなかなか日米欧のメーカーに追い付けないことが大きな壁になっているためだが、中国はいま新エネルギー車(NEV)開発で「自動車強国」に脱皮しようという大きな戦略を描いている。エンジンが電気に置き換わるNEVなら、既存のガソリン車で必要だった多くの部品が不要になる。先進国との技術差は一気に縮められる上、中国の大きな社会的問題で成長阻害要因にもなっている環境問題の改善にもつなげられる。こうしたNEV産業育成戦略は米中貿易戦争の争点のひとつである「中国製造2025」の柱にもなっている。中国政府にとって極めて本気度の高い産業政策だ。『2030中国自動車強国への戦略─世界を席巻するメガEVメーカーの誕生』(湯進 著)は2030年に市場全体の5割をNEV車にするという中国の次世代自動車戦略の全体像を詳述するとともに、日本企業の対応へのヒントも提示している。

■IT大手「BAT」とも連携

筆者は中国出身で、日本の銀行で長く中国の産業調査を担当してきたアナリスト。現場主義を掲げ、これまで日本ではあまり肉声を聞く機会のなかった比亜迪(BYD)、寧徳時代新能源科技(CATL)など今後のNEV産業を担うメーカーのトップにも会って、各社の戦略も詳しく紹介している。本書を読むと中国メーカーの電池製造技術が相当なレベルに達しつつあることや、自動車大手の再編によって資金力のある「メガ電気自動車(EV)メーカー」誕生の機運が高まっていること、自動運転技術を巡り自動車各社と百度(バイドゥ)、阿里巴巴集団(アリババグループ)、騰訊控股(テンセント)の中国IT大手「BAT」との連携も始まっていることが分かってくる。

■日本企業が勝ち残るために

このイノベーションの大きな波には、自動車産業に依拠してきた日本企業ももちろん大きな影響を受ける。本書の序文が触れているように日本の産業界からは「エンジン不要論への危機感」が出る一方で、「新規参入への期待」も浮かんでいる。筆者は、中国企業がなお高度な生産技術に弱みがあること、中国NEV産業の急速な発展を支えてきた政府の補助金が切れた後はどうするのか、といった問題点にも触れている。その上で中国の消費者に日本車の品質を客観的に評価する傾向が高まっていることや、急速に追い上げられているとはいえ日本企業がハイレベルの電池技術を持っていることなどの優位性を挙げ、電池技術のさらなる高度化、中国企業との連携などを通じて日本企業がどう勝ち残るかの方策も具体的に提案している。中国の自動車政策の全貌を把握するためには好適な一冊。豊富なデータや図表も非常に参考になる。

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『2030中国自動車強国への戦略

――世界を席巻するメガEVメーカーの誕生』

湯進 著 日本経済新聞出版社

2019年10月発行 1,800円+税

筆者の湯進(タン・ジン)氏は、みずほ銀行法人推進部国際営業推進室主任研究員、上海工程技術大学客員教授、専修大学社会科学研究所客員研究員。08年にみずほ銀行入行。国際営業部で自動車・エレクトロニクス産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、中国の自動車メーカーや当局とのネットワークを活用した日系自動車関連の中国戦略を支援している。

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【本の選者】岩瀬 彰

NNA代表取締役社長。1955年東京生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業後、共同通信社に入社。香港支局、中国総局、アジア室編集長などを経て2015年より現職

※特集「アジアの本棚」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2020年1月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 中国-全国日本
関連業種: 自動車・二輪車IT・通信

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