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日系の9割、10日に事業再開 新型肺炎、安全確保には懸念も

新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、中国の多くの地方で旧正月(春節)明けの企業の事業再開が遅れる中、現地進出日系企業は再開に向けてどのような準備を進めているのか。NNAが実施したアンケート調査では、9割超の企業が「2月10日から事業を再開する」方針であることが分かった。また過半数の企業が、事業再開と同時に日本人駐在員の現地での勤務も再開する計画。一方「マスクが不足している」など、事業再開後の安全確保を懸念する声も多い。

今年の春節連休は本来1月30日までとなっていた。ただ多くの人が帰省先から戻り、新型肺炎が一気に拡大することを防ぐため、中国中央政府は連休を2月2日まで延長する異例の措置を実施。加えて地方政府の大半が、企業による事業再開時期を2月10日以降とする独自の連休延長措置を通達している。

このような中、NNAが2月4~5日に実施したアンケート調査(有効回答236社)では、回答企業の90.7%に当たる214社が事業再開時期を「2月10日」としていることが分かった。企業所在地の政府の指示に、歩調を合わせる企業が大半である実態がうかがえる。一方で再開時期を「未定」とする企業も3.0%(7社)あった。

日本政府が湖北省武漢市に滞在する邦人を帰国させるためにチャーター機を飛ばすなどする中、日本人駐在員を中国で継続して勤務させるかどうか、判断が難しくなっている。調査では、回答企業の56.4%(133社)が「事業再開と同時に駐在員の中国勤務も再開」するとしており、過半数の企業は、日本人社員が現場指揮をとる体制を保持する構えだ。業種別では、製造業の62.1%が「事業再開と同時に駐在員の中国勤務も再開」と回答しており、生産現場の管理など遠隔ではできない業務の性質上、駐在員を継続して現地に送り込む動きが目立つ。

一方「日本に一時帰国中の者はそのまま日本で待機」は16.9%(40社)、「全員を日本に一時帰国」は9.7%(23社)、「一部を日本に一時帰国」は8.5%(20社)と、安全確保のため駐在員を一時的に日本へ戻している企業も少なくない。

多くの地方で企業が業務を再開する10日以降は、通勤時、工場やオフィスビルでの勤務時に人と人とが接触する機会が一気に増えるため、いかにして感染拡大を防ぐかが鍵となる。事業再開時の勤務態勢(駐在員、現地雇用スタッフを含め)を聞いたところ、「全員が出社」とする企業が50.8%(120社)を占めた。業種別では製造業で55.2%、非製造業で47.5%で、ここでも製造業がいち早く通常の業務体制に戻す傾向が強い。

一方で、北京市が9日までの期間は企業にテレワークを促すなど、在宅勤務も感染拡大の予防策になるとみられている。事業再開時に「一部を在宅勤務とする」企業は32.2%(76社)、「全員が在宅勤務」は5.1%(12社)だった。非製造業では「一部が在宅勤務」が33.7%、「全員が在宅勤務」が5.9%と、在宅勤務を選択する企業が全体平均よりも多い。

ただ、一部で在宅勤務を導入しても、出勤する従業員の安全確保は必須。各社が事業再開後に計画する安全対策を聞いたところ(複数回答)、「出社時のマスク着用、手指消毒の義務化」が220件、「出社時の体温検査」が171件に上った。「出張の停止」と「他社への営業活動の停止」もそれぞれ151件、53件あり、移動や外出、他者との接触をできるだけ避けようとする企業も少なくない。

しかし中国各地でマスクや消毒液が極端な品薄状態となるなど、計画通りに安全対策を実施できるかは不透明な状況だ。当面の安全対策での不安な点を聞いたところ、「マスク、手洗い消毒液の不足」「日本でもマスクが不足しており、中国に戻る前に調達できない」「マスクなどの支援を日本に頼んだが、10日に届くのか不安」など、マスクを中心とした衛生用品の確保を挙げる企業が圧倒的に多かった。

このほか「社内で感染が発生した場合、どのように拡大を防ぎ、隔離していくか」「通勤時や昼食時の感染リスク」「入居オフィスビルで感染者が出て、施設が閉鎖された場合の対応」「未発症者からの感染」「(潜伏期限とされる)14日間の自宅隔離の事業への影響」などを不安視する声が上がった。

■売り上げ減への懸念

多くの企業がしばらくは不自由な形での操業を強いられることから、新型肺炎が企業経営に何らかの影響を及ぼすことは避けられない情勢となっている。各社に「当面の事業への影響」を聞いたところ、稼働日の減少や人員不足による売り上げ減を懸念する意見が目立った。具体的には「仕入れと出荷ができないので、その分売り上げ減」「2~3月の売り上げは通常の半分以下になる」「2月の事業収益が見込めない上に、固定費が発生する」といった回答があった。また、「消費の落ち込みが販売面に影響」と市場の冷え込みを警戒する見方のほか、「資金繰りへの影響」「資金繰りを銀行に依頼する」など、早くも経営の切迫感を訴える声も聞かれた。

売り上げ減への懸念以外では、各地が春節期間中に省をまたいだ車両の移動などを制限したことから、物流の滞りを不安視する意見が多かった。

■景気減速、生産の東南アシフト加速か

新型肺炎の拡大は、年初に米中両国が貿易摩擦の解消に向けて第1段階の合意に達するなど、明るい兆しも見え始めていた中国経済に冷水を浴びせる形となった。新型肺炎が中国経済、世界経済に及ぼす影響を聞いたところ「(中国の)短期的な景気後退」「中国の国内生産と消費が落ち込む。結果として、一部で人員削減が見込まれる」「中国経済のさらなる減速と、それに起因する世界経済の減速」など、経済成長の足を引っ張るとの意見が多かった。

「中国から部品を調達している企業が多いため、サプライチェーンが破綻する懸念がある」「サプライチェーンの停滞による世界的な物資不足」「サプライチェーンの寸断により、グローバル企業の業績が悪化」と“世界の工場”中国の生産停滞によるサプライチェーンの世界的な混乱への懸念も強い。「中国リスクが再び焦点となり、脱中国に拍車がかかる」「昨年は米中貿易戦争の影響回避で中国外への移転案件が多かったが、それがさらに加速する」「チャイナリスクを避けて、企業が中国以外へ生産工場を移す」と、中国から東南アジア諸国連合(ASEAN)などへのシフトが加速するとの見方も少なくなかった。

調査の有効回答数は236社。回答企業の業種、事業形態別の内訳は製造業(現地で加工・生産)が49.2%(116社)、非製造業(販売・サービスなど)が42.8%(101社)、駐在員事務所が4.7%(11社)、メディア・公的機関などが1.3%(3社・機関)、その他が2.1%(5社)だった。回答企業の中国拠点の所在地は上海市が138社と多く、ほか江蘇省、広東省、北京市、天津市、遼寧省、湖北省、浙江省などがあった。


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関連業種: 自動車・二輪車医療・医薬品マクロ・統計・その他経済社会・事件

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