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【アジアインタビュー】 インド出身の区議会議員よぎさん 「江戸川区から日本を変革したい」

「日本人と外国人の架け橋になりたい」と日本国籍を取得したインド出身のよぎさんは今年4月、東京・江戸川区議会議員選挙に立候補して見事当選した。同区の都市開発構想「スマートシティー」を打ち出し、区民の生活環境の向上を目指すとともに、インド人コミュニティーとも連携してインド人街の創設や、外国人移民受け入れの課題、少子化問題にも取り組んでいる。江戸川区に新しい風を吹き込む異色の区議会議員・よぎさんに、日本が直面している課題について伺った。(取材・写真=セガラン郷子)

今年4月の江戸川区議選で初当選したよぎさん。自宅2階のインド・カルチャーセンターで(セガラン郷子撮影)

今年4月の江戸川区議選で初当選したよぎさん。自宅2階のインド・カルチャーセンターで(セガラン郷子撮影)

――東日本大震災後、よぎさんは他の外国人とは逆に日本に永住する決意をされたそうですが、なぜでしょうか

大震災が起きて、多くの方々は本国に慌てて帰国しました。でも私はその時、みずほ銀行に勤務していましたから、業務に支障をきたしてはいけませんし、何より被災地の人々に何かしたいと思いました。大学生の時に1度日本を訪れ、すでに10年を日本で過ごし、将来も住み続けたいと思っていました。仕事に恵まれ、キャリアを積み、親切な日本人に囲まれて多くのインド人の友人もいます。逃げ出したいなんて思いませんでした。福島には計4回通ってボランティア活動をして、東京では募金活動もしました。このような時に「自分は日本人になるんだ」と自然に思えたのです。その年のうちに申請して日本国籍を取りました。インドにいた母や兄弟も賛成してくれましたよ。母は今日本で私と一緒に暮らしています。インドでは親戚のしがらみが嫌になりまして、日本にいた方がせいせいするみたいです。

――インド人街を創設するという計画があるそうですが、どのような状況ですか

西葛西周辺にインド人の中心となるインド人街――つまりインド人が必要とする食材や衣類を販売するインド人御用達の商店街を作るのは、多くの在日インド人の希望です。

ただ、どんな街にしたいか、構想をちゃんと持たなければいけません。私は銀行に勤務していたころに世界中をビジネスで訪れ、さまざまなインド人街を見て歩きましたが、参考にしたいと思えるところはありませんでした。シンガポールのインド人街だって、シンガポールは全体的に清潔な街なのに、インド人街に行くと雑然としていますよ。インド人街にある多くの商店、レストランは、インド人以外の人達によって経営されている。西葛西あたりに10軒ほどあるお店だって、インド人が経営しているのは3軒くらいです。衣食住を支えるインド食材のお店、伝統衣装のお店をきちんと経営するインド人がいるのか、インド人街の中心となるヒンズー寺院の建設費や運営費をどのように調達するのか、まだ解決しなければいけない課題がたくさんあります。

――江戸川区議会議員に立候補された理由は、インド人街創設も含め、同区の都市開発を進めたいということですか

そうです。この地域で、今まで私はPTAや自治会などにも積極的に関わってきました。もっとこの地域に貢献するため区議会議員になって予算を付けるなど、現実的に問題を解決したいと思ったのです。私はまず江戸川区を20年後、30年後、どんな街にしたいのか、将来のビジョンを持つことが大事だと思っています。江戸川区を“スマートシティー”と名付け、5つのカテゴリーを柱としました。「スマート統制」(民意の反映や情報共有のシステム)、「スマート経済」(生産性やインフラ)、「スマート生活」(健康・教育・安全)、「スマート区民」(多様性・人材開発)、「スマート環境」(持続可能性、災害・防災)です。それぞれ何が必要か、これから区民と議論していきたいと考えています。

――日本人と外国人の架け橋になりたい、とのことですが、具体的にはどのような取り組みをする計画ですか

まずは移民政策をもっとしっかりとしたものにしなくてはいけません。移民を受け入れることに反対しているのではありません。人手不足の業界に必要な人材を迎えるようにすることは大切です。雇用機会を増やし受け皿を作ること、またその外国人が日本に来る前に基本的な技能を本国で身に付けてから来ていただくシステムをきちんと作らなければいけません。そのためには日本に移民を送り出す国との話し合いも必要です。外国人労働者を紹介するエージェントや入国管理局が現在しているような方法では駄目だと思います。技能実習生の制度の見直しも必要です。エージェントが不当な紹介料を取ってきたために外国人労働者の給料が低く抑えられてきました。今やっとそのような現実に向き合い、制度をどうするか議論しているところです。

――議会に出席してどのようなことを感じられましたか

たくさんの問題があり、大きな目標に向けた計画がなくてはいけないのに、ひとつひとつを議論する際に、場当たり的に細かいことを話し合う傾向が多いと感じています。例えば、ある道路を拡張しなければならない、という話では「車が多くなっているし、いずれ高速道路につなげたいから」という理由が挙げられましたが、車の台数は過去10年変わっていなかった。そのデータを見せたら、「でも防災上も拡張した方がいい」という話にすり替わりました。先に「道路を拡張する」という結論ありきなのです。計画性が欠けていると感じました。

また子育て支援の問題でも、個々の事業をどうこうするという前に、保育園、小学校、中高のそれぞれがどういう現状で、個々の事業がどうつながっているか、ということを表にして整理して、何を先にしなければいけないか計画を立てる必要があります。その上で問題に取り掛かかるべきでしょう。

――子育て支援問題をどう考えておられますか

少子化対策は女性も男性も考えなければいけない問題です。私は他の市に住んでいた時、子供の保育園が見つからなくて困り、市役所に直接行って交渉しました。私はシングルファーザーなので子供を預かってくれる保育園がなければ働けません。そうやって市民が発言すれば変わります。ジェンダーに関して日本はインドより遅れているのではないか、と思われることさえあります。インドではもうずっと前に女性首相が出ていますし、アジアの他の発展途上国だって女性がもっと政治に出ていますが、日本では自治会やPTAの会長ですら男性ばかりで驚きました。もっと多方面で女性が活躍するようになれば、子育ての状況だって変わるはずですし、少子化対策も進むかもしれません。

移民問題や少子化対策などは国政で議論されなければならない大きな課題です。すでに支援者の皆さんから国会議員に立候補してください、と言われていますが、私はまずは江戸川区で実績を残したいと思っています。

――ご自身のアイデンティティーについてどのように考えておられますか

レカで提供されているインドカレーのランチ(セガラン郷子撮影)

レカで提供されているインドカレーのランチ(セガラン郷子撮影)

私自身はインド人とも日本人とも思っています。先日バドミントンの試合を見ていると、インド人選手と日本人選手が戦っていました。私はどちらも応援しましたし、それがとても楽しかったのです。

日本とインドがもっと交流できることが私の希望です。今いるこの部屋はそのために作りました。ヨガやインド音楽、インド舞踊を練習したり、公演したりできるスペースで、日本人の方々がインド文化に触れていただける場所です。「インド・カルチャーセンター」の構想は、インド人コミュニティーの間で前からあったのですが、なかなか進まなかったので、自分でこの建物を建てたのです。1階は母の名前「レカ」と名付けた西インド料理のレストランで、母が料理の腕をふるっています。日本には数多くのインド料理レストランがありますが、本場と同じ食材・スパイスを使っているレストランばかりではありません。レカでは西インド料理を中心として、インドのどこでも食べられるチキン・カレーなども出しています。ぜひインドの家庭料理を食べに来てください。

<プロフィル>

よぎ(プラニク・ヨゲンドラ)

1階の西インド料理店「レカ」でよぎさんと母親のレカさん(セガラン郷子撮影)

1階の西インド料理店「レカ」でよぎさんと母親のレカさん(セガラン郷子撮影)

1977年生まれ、インド西部出身。サビットリバイ・フール・プネー国立大学(Savitribai Phule Pune University)にて国際経済、国際経営の修士号と同時に情報技術(コンピューター開発)と日本語の学位を取得。97と99年に国費留学生として来日。2001年から日系企業・日系銀行で15年以上勤務し、システムエンジニア、プロジェクトマネジャー、日本支社長など要職を務める。役所、外務省、企業などで客員講師としても活躍。12年に帰化。17年に江戸川印度文化センター(東京都江戸川区東葛西)を設立。19年4月に江戸川区議選に出馬し初当選した。「よぎ」は知人からの愛称。

※特集「アジアインタビュー」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年11月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しました。


関連国・地域: インド日本
関連業種: 政治社会・事件

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