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【アジアの本棚】『IoT最強国家ニッポン ──日本企業が4つの主要技術を支配する時代』

家電から工作機械まですべてのマシンをネットで結ぶ「インターネット・オブ・シングス(IoT、モノのインターネット)」が次世代の産業をけん引すると言われる。だが、IoTは何を何のために効率化し、どのような成果が期待できるのか、という点をきちんと説明した書物や資料は少ないように思う。今回紹介する南川明「IoT最強国家ニッポン──日本企業が4つの主要技術を支配する時代」(講談社+α新書)を読むと、IoTの究極の目標のひとつは「電力消費のムダの削減」にあることが分かってくる。

筆者は外資系証券などで長く半導体産業のアナリストを務めた。本書によると、新興国の成長、人口増加、都市への集中などにより、世界の電力需要は今後も右肩上がりに増えていく見通し。今注目されているビッグ・データの解析にも大きな電力が必要になるため、データセンターの消費電力が世界の電力消費に占める比率も現在の3%から2030年には8%程度まで上がっていくと予測されている。筆者は、そうした要因が複合し、25年以降世界的に電力不足が起きる可能性が高いとして、工場から医療、流通、交通までIoTによる抜本的なエネルギー効率向上を進める必要があると指摘する。

■IoTで年360兆円の省エネ効果

具体的には、鉄道車両や産業機械に大量のセンサーを取り付け、異常音や振動などの情報をネットで集約し、事前に故障を回避する。日本の電力消費の5割近くを占めている産業用モーターにエアコンの温度調節機能でおなじみのインバーターを普及させ、ネット経由で生産量の増減を調整して電力消費を抑制する。筆者はそういったきめ細かい省エネを広範囲に実現できるのがIoTだと解説。省エネ効果の積み上げで削減できる金額は年間360兆円に上るとしており、社会全体がIoTの効果を享受できるという。

本書はそのうえで、世界人口77億人に対しすでに年産18億台になっているスマートフォンの成長余力は少ないが、自動車や産業機械はまだ大半がネットでつながっていないため、IoTは巨大な需要を産むと予測。産業の主役である「モーター」、インバーターを制御する「パワー半導体」、コンデンサーやコイルなど「電子部品」といったIoTに不可欠な技術の大半は、日本メーカーが高い世界シェアを持っており、デジタル技術では世界トレンドに立ち遅れた日本の失地回復の絶好の機会だと訴えている。本当にこのシナリオ通りになるかは今後の展開次第だが、日本の電機・電子産業が再び力強い成長軌道に乗るかどうか大いに注目したい。

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『IoT最強国家ニッポン──日本企業が4つの主要技術を支配する時代』

南川明著 講談社

2019年8月発行 880円+税

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【本の選者】岩瀬 彰

NNA代表取締役社長。1955年東京生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業後、共同通信社に入社。香港支局、中国総局、アジア室編集長などを経て2015年より現職

※特集「アジアの本棚」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年10月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 日本
関連業種: 自動車・二輪車IT・通信

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