交通事故、渋滞、大気汚染、温室効果ガス
中間層が厚みを増し、念願のマイカーを手に入れる人々が増えているアジア。急速な自動車の普及(モータリゼーション)は同時に、慢性的な交通渋滞や排ガスを原因とする大気汚染、交通事故などの社会問題を引き起こしている。「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared/Service(シェア・サービス)」「Electric(電動化)」のいわゆるCASEは、アジアのこうした課題の軽減に新たな波をもたらそうとしている。
■交通事故
世界保健機関(WHO)によると、2016年の交通事故死者数は世界全体で135万人だった。人口10万人当たりの死者数は世界全体で18.2人。これに対し、東南アジアでは20.7人と世界全体を上回り、地域別でアフリカに次ぐ多さだった。国別ではタイが32.7人で最も多く、次いでベトナムが26.4人、マレーシアが23.6人で続いた。
■交通渋滞
アジアの主要都市で共通の課題となっている交通渋滞。オランダのデジタル地図サービス大手「TomTom(トムトム)」がまとめた報告書によると、最も渋滞がひどいのはムンバイとニューデリーのインドの2都市。順位は、渋滞していない場合と比べて、移動時間がどの程度長くかかるかを基準に決められる。ムンバイの2018年の「混雑レベル」は65%。渋滞のない場合と比べ、ムンバイでは通勤などの移動に1.65倍の時間を費やしていることになる。ワースト10位中半分は中国の都市が占めた。
■大気汚染
大気汚染の指標となる微粒子状物質(PM2.5)濃度。アジアではワースト1位のネパールと2位のインドが1立方メートル当たり90マイクログラム(μg)を超えた。続いてバングラデシュ(60.6μg)、パキスタン(60.3μg)が続き、南アジア諸国の大気汚染の深刻さが浮き彫りになっている。中国は53.5μgで、世界全体の44.2μgを上回っている。
■二酸化炭素排出
地球温暖化の一因とされる二酸化炭素(CO2)。2016年の世界のエネルギー起源のCO2排出量は323億トンで、中国が最大の91億トンと全体の28.2%を占めた。中国、インド、日本、韓国、インドネシアのアジア5カ国を合わせたCO2排出量は133億7,000万トンに達し、世界全体の41.4%に上った。自動車からのCO2排出抑制に向けては、車両の燃費向上とともに、交通渋滞の改善が不可欠だ。
※特集「アジアを走れ、次世代モビリティー」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年9月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。
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