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【トップは語る】中国事業を成長の軸に戦略転換で高成長図る

二トリホールディングス代表取締役会長兼CEO 似鳥昭雄

「お、ねだん以上。ニトリ」のキャッチフレーズで家具・インテリアの製造・小売りを全国展開するニトリホールディングス(ニトリHD)。創業者の似鳥昭雄会長は、1972年に視察した米国西海岸の住まいの豊かさに衝撃を受け、家具・インテリアの提供を通じて日本人の暮らしを高めようと誓った。それから半世紀。新たな使命として、アジアの人々の暮らしを豊かにすることを目指している。(取材=NNA東京編集部 須賀毅、文=同 江康慧)

Photo by Mayumi Takahashi

Photo by Mayumi Takahashi

ニトリHDが現在のような成長につながったきっかけは、1972年に参加した米国家具業界の視察でした。私が家具の商売を始めた67年当時は、家具は高価なため多くの日本家庭には浸透していないというのが実態でした。米国では当時、機能と品質に優れた家具が日本の2分の1から3分の1程度の価格で売られており、暮らしの豊さと日本との格差に衝撃を受けました。

米国では家具の小売りがチェーンストア化されていて全米に100店、200店といった規模で店舗網を広げていました。そのスケールメリットによって仕入価格を抑え、品質の良い製品をより安く提供できるわけです。

帰国後、「住まいの豊かさを日本の人々に提供する」という目標を掲げ、当時の日本の常識では考えられなかった家具店のチェーンストア化に取り組みました。

さらに、商品企画や原材料の調達から製造、物流、販売までを一貫して行い、アジア中心の生産体制と効率的な物流網を構築することで、機能と品質に優れた製品を安く提供できるようになりました。

人々の給料を2倍にするのはなかなか難しいですが、モノの値段を半分に下げれば収入が倍増したのと同じです。品質の良い製品を安く提供することで日本の暮らしの改善に取り組んできました。

われわれは、米国でチェーンストアについて学び、欧州のデザインやスタイルを取り入れ、アジアで生産し、日本で販売してきました。今後はアジアでも消費が増えるでしょう。

日本は現在米国より20年遅れており、アジアの暮らしを見ると、日本より20年前後遅れているように感じます。品質の良いソファやダイニング用品もありますが、価格は日本よりも高いです。品質で劣るものは安く売られていますが、品質やデザインの優れた商品で安いものはない。家具やインテリアのコーディネートといった考え方も未熟ですから、日本のライフスタイルを丸ごと輸出し、アジアにおいても価格以上の価値ある商品を提供することで暮らしを豊かにしていきたいと思います。

■中国事業の課題

ニトリHDの2019年2月期時点での海外店舗数は71店舗で、その半分以上の37店舗が中国です。中国には、家具やインテリア、雑貨などをトータルにラインアップした店舗は少なく、ニトリが強みとするホームファッションという業態が未熟なことから、大きなチャンスが広がっています。

中国事業は14年10月の湖北省武漢市を皮切りに展開を始めました。現地のショッピングモールなどのテナントを中心に、18年は新エリアとなる天津、深セン、成都などに1年間で13店舗を出店しました。

急速な出店拡大に伴って、人材育成が追い付いていないといった課題も見えてきました。日本からの熟練者を送ることで、今後は現地社員の教育にも力を入れていきたいと思います。

出所:ニトリホールディングス

出所:ニトリホールディングス

出所:ニトリホールディングス

出所:ニトリホールディングス

また、商品についてはサプライヤーの共通化、品質管理、在庫管理などがまだ遅れていることが分かりました。そうした課題の解決に向けて、18年10月にグローバル商品本部を立ち上げて取り組んでいます。

品質の良いものをより安く提供するには、大規模なチェーン展開が不可欠です。ドミナント戦略で一定の地域に20~30店舗を集中的に出店するのが理想です。少なくとも11店舗以上ないとドミナント戦略が成り立たないので、内陸部は当面出店しない予定です。

中国では米中貿易摩擦の激化や経済の鈍化が懸念されていますが、それでもニトリにとって中国は重要な市場ですし、大きな可能性があります。人口は日本の10倍ですので、日本の10倍は出店できると考えています。これまで日本国内で培ってきたノウハウを中国で共用し、現地の仕組みで運用していくことをまず目指します。現在は、次のステップに進むための準備期間だと捉えています。

■東南アジアも視野に

中国以外では、07年に台湾・高雄、13年に米国・ロサンゼルスにもそれぞれ進出し、19年2月期では台湾31店舗、米国3店舗を展開しています。

台湾は13年2月期から単年度での黒字化を達成し、市場が安定期に入っているため、年間2~3店舗のペースで店を増やしていきたいと思います。

米国事業は現在、ホームファッション中心の品ぞろえから家具中心の品ぞろえに方向転換しながら、年間1~2店舗ずつ増やしていきたいと思います。米国は世界最大の消費地で、日々厳しい競争にさらされるため、厳しい環境を勝ち抜くためのノウハウを学ぶことができます。

新たな海外展開先としては、東南アジアを視野に入れています。なぜなら、日本発のヒット商品、接触冷感素材を使用した「Nクール」などは特に、暑いアジアに向いていると考えるからです。経済が著しく発展し、国民所得も増えているため可能性は大きいでしょう。

東南アジアでは日本で主力の家具やホームファッションを扱った大型店だけではなく、日本でも最近、都市部を中心に出店を進めている小型店、人気の高いベーシックアイテムやインテリア雑貨を扱う「デコホーム」やホームファッションをラインアップの中心に据えた「ニトリEXPRESS」といった店舗を広げていく可能性があります。

■若手社員よ、海外を目指せ

最近、日本では海外志向の社員が減っているとよく聞きますが、弊社の場合は海外に行きたくて応募してくる人のほうが多い。「かわいい子には旅をさせよ」と言いますが、若い時は二度とないから、いまのうちにありとあらゆることを体験してほしいです。日本国内でも転々としたほうが勉強になるし、自己成長につながります。海外に行けば、食べるものも見るものも違うので、海外の友人をたくさん作って国際交流をしたらいいと思います。

私自身も月の半分を海外で過ごしています。工場や店舗を視察したり、現場指導したりするほか、ニトリを支える商品開発の現場に携わることも多いです。

2014年10月に中国湖北省にオープンした同国初出店となる「武漢群場城店」(ニトリホールディングス提供)

2014年10月に中国湖北省にオープンした同国初出店となる「武漢群場城店」(ニトリホールディングス提供)

■人材がすべて

ニトリ製品の家具はベトナムのニトリファニチャー、その他はアジアから輸入しています。アジアの国々への恩返しということで、日本に留学に来た学生を支援する似鳥国際奨学財団を04年に立ち上げました。奨学財団生は優秀な方々が多くて、日本の大手企業に就職したり、母国で起業したり、日本と自国の間で大きな役割を担ったりするようになってきた人も大勢います。

中国事業の拡大を見込む中、18年度はニトリ中国で働く中国人留学生60人を採用しました。日本語も中国語も堪能な人は最良の人材です。将来的に中国事業の中堅的な力を担ってほしい。人材は一番大切、人材がすべてです。

<プロフィル>

似鳥昭雄(にとり・あきお)

日本国内外問わず、休日はゴルフ。社員からもらった、似鳥会長夫婦をイメージしたゴルフクラブカバーを大切にしている。(ニトリホールディングス提供)

日本国内外問わず、休日はゴルフ。社員からもらった、似鳥会長夫婦をイメージしたゴルフクラブカバーを大切にしている。(ニトリホールディングス提供)

1944年樺太生まれ、75歳。67年に似鳥家具店を札幌で創業。72年に米国視察ツアーに参加。2002年に東京証券取引所一部に株式を上場。03年に100店舗、売上高1,000億円という「第1期30年計画」を達成。16年から現職。

※特集「トップインタビュー」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年9月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 中国日本
関連業種: その他製造小売り・卸売り

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