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【アジアを走れ、次世代モビリティー】自動運転車のある風景 日本・中国・欧州で乗ってみた

自動運転」という言葉が新聞紙面を賑わしている。トラック運転手不足の解消、相次ぐ高齢ドライバー事故の対策や過疎地で移動手段を確保するという「ラストワンマイル」の解決策として期待が高まる。日本、中国、欧州の自動運転の現場を歩き、モビリティーの将来像を考えてみた。

フィンランド・アールト大学内を運行する自動運転バス「ガチャ」。右上は車内。右下はガチャを笑顔で見送る人たち

フィンランド・アールト大学内を運行する自動運転バス「ガチャ」。右上は車内。右下はガチャを笑顔で見送る人たち

■良品計画デザインのバス、フィンランド発でアジアへ

「無印良品」を展開する良品計画がデザインしたハンドルのないバス「ガチャ(GACHA)」。フィンランド首都ヘルシンキ近郊の公道で6月27日、自動運転の実証走行を開始した。会員制交流サイト(SNS)で運行を知り訪れたという男性は「自分の町に自動運転車が走るのかと思うと興奮する」と語った。

実証が行われたのは工科系のアールト大学キャンパス内の公道。地下鉄の駅から最も遠い研究棟までは1キロ離れている。乗り込んできた大学院生らは「バスを見た時、なんだろうと思ったが、気軽に乗れる雰囲気がいい」「内装に温かみを感じる」と感想を語っていた。

バスを製造したセンシブル4はアールト大学発のスタートアップ企業で、雪や凍結路面対応など全天候型の自動運転ソフトと運行管理システムの提供に強みを持つ。担当者によると、2021年には世界販売に向けた量産を予定しているが、製造のパートナーは現在、検討中だ。来年には日本、シンガポールでの実証走行を視野に入れている。

良品計画がバスのデザインというのは意外だが、街と住宅と車が将来、融合していくことを象徴しているかのように思えた。

工事区間だけは手動運行に切り替えて走行

工事区間だけは手動運行に切り替えて走行

■問われるユーザーの満足度

ガチャに乗る前日は、ヘルシンキ市内の商業街で公道運行している仏ナビヤ製の自動運転バスに乗ろうとしたが、「技術的な問題」があり運休。ガチャに乗った翌日はスウェーデン西部イエーテボリで、これもナビヤの自動運転バスに乗るべく、午後5時頃に乗り場に到着したが、既に運行は終了していた。案内には「午後6時まで運行」と書いてあったのだが。

中国・北京近郊の雄安新区で運行されている検索大手の百度(バイドゥ)が運行している「アポロ」は席がガラガラだったので乗ろうとすると、「この便の予約者以外は乗れない」と断られた。

自動運転の技術精度は向上していくだろうが、ユーザーの満足度向上も忘れてはならない視点だ。

■出遅れの日本

SBドライブが運行管理した仏ナビヤの自動運転バス=東京・港区

SBドライブが運行管理した仏ナビヤの自動運転バス=東京・港区

欧州各地では数カ月~1年単位でデータ収集なども兼ねた公道での実証走行が行われているが、日本での自動運転専用車両の公道運行は今年7月、ナビヤのバスを使って東京・汐留で行われたのが事実上初めて。法整備の遅れもあり、日本は出遅れている。

7月にソフトバンクグループが行ったイベント会場で、ナビヤ製の自動運転バスに初めて乗車できた。乗車前に承諾書にサインする義務があるのが、いかにも日本らしい。

「プログラムに組んでいなかった道路のわずかな斜面、鳩を感知して急停止してしまう。精度が高すぎるのも問題だ」と運行を管理するSBドライブの担当者が明かす。

自動運転はどこまで実現するのだろうか。

PwCジャパングループ自動車セクターの藤村俊夫顧問は、「歩行者や自転車も入り乱れた市街地などでの完全な自動運転は相当先の未来の話か、ありえない」と考えている。ただ、日本では、高速道路での隊列走行、高齢者の多い過疎地、歩車完全分離のスマートシティーなど導入可能なところから進むとみる。

インドの業界団体首脳は「道路にいるのは歩行者だけではない。野良牛もいる。その国・地域特有の自動運転の開発が求められるはずだ」と話す。

■中国の「アポロ計画」、トヨタも参画

「アポロ」の自動運転の実験が進む「北京経済技術開発区」

「アポロ」の自動運転の実験が進む「北京経済技術開発区」

北京市内の海淀公園でも自動運転の「アポロ」に乗れる

北京市内の海淀公園でも自動運転の「アポロ」に乗れる

トヨタ自動車が、百度が主導する自動運転開発の企業連合「アポロ計画」に参画することが6月下旬に明らかになった。中国で進む自動運転の開発に相乗りすることで、トヨタは自動運転の実用化への加速を図る。アポロ計画では、雄安新区で自動運転を前提としたスマートシティー開発が見込まれる。

雄安新区で将来のモビリティーはどうなるのか。自動運転マイカーの走行レーンやバスの予約が、各自の持つ携帯端末を使って管理されることは想像に難くない。渋滞や交通事故が抑制できる一方、運営主体が人々の移動を管理しやすい都市となるかもしれない。

日・中・欧を駆け足で回って実感したのは、「自動運転がもたらす未来の社会は、人々を幸せにするのか」という想像力を鍛える必要性だった。

※特集「アジアを走れ、次世代モビリティー」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年9月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 中国日本欧州
関連業種: 自動車・二輪車運輸IT・通信サービス

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