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【Aのある風景】 日本に生きるクルド人、異国で灯す自由の火

まだ肌寒い3月のよく晴れた日曜日、さいたま市の秋ヶ瀬公園でクルド人の新年の祭り「ネウロズ」が開かれた。シリアなど中東各地から難民として日本に逃れてきたクルド人たちは、川口市や蕨市など埼玉県南部に多く暮らす。年に1度、手を取り合って踊り、同じ民族としての絆を確かめ合う。(文・写真=NNA東京編集部 片岡野乃子)

輪になってハライ踊りを楽しむクルド人女性たち(NNA撮影)

輪になってハライ踊りを楽しむクルド人女性たち(NNA撮影)

ネウロズは抑圧からの解放と新しい春を祝う祭りとして本来は春分の日に開催される。アルファベットで「Newroz」と書き、「新しい日」を意味する。炎と独特の踊りで知られ、2600年以上前から中東の広い地域で祝われてきたという。

「クルド人はこれまで、ネウロズで抑圧者に対し反乱の象徴としての炎を灯し続けてきた。今この時間にも、不安と恐怖に満ちた生活を送っているクルド人は多くいる。平和は戦争がないという意味だけではありません。貧困、勉強ができないことも戦争と同じ意味を持つ。私たちは日本人と一緒に真実の平和をもたらせないかを今後も考え続けたい」。クルド人留学生のソホラブ・アフマディヤーンさんは述べた。

クルド人はトルコやシリア、イラン、イラクに広がる山岳部に住む民族で、世界に約4,500万人いるとされる。だが、独立国を持てず、各国では少数民族として迫害を受けてきた。日本はトルコからの渡航にビザを必要としないことから、蕨・川口市周辺では30年ほど前からクルド人居住者が急増。同地域は通称「ワラビスタン」とも呼ばれ、迫害などによって住居や職を失った人々の避難先の1つとなった。

あるクルド人夫妻は「日本へは仕事を求めて来た。でも何より日本という国や文化にとても興味があった」と話す。日本クルド文化協会の会長、ワッカス・チョーラクさんによると、現在日本には2,000人前後のクルド人難民が暮らす。だが、大半は難民認定が下りず仮放免(在住は許可するが就労は不可)状態だ。

ネウロズの目玉である中東の伝統的なダンスの「ハライ(HALAY)」は、隣同士が小指をつないで輪になり、リズムに合わせてステップを踏み大きく輪を回転させるのが特徴だ。本来は火を囲んでハライを楽しむが日本では安全上の観点から火はたけない。楽しげに踊る女性たちに触発され、少しずつ男性たちもダンスを始めた。3メートルほどのハライの列は広場の芝生いっぱいに広がり最後は巨大な輪になった。

県内の学校に通っているという小学校5年生のゼラリちゃんが、はにかんだ様子の3歳のいとこ、ベジナちゃんの手を引いていた。

5歳ごろにトルコから来日したゼラリちゃん。「本当は友達と遊ぶ約束があったから来たくなかったけどお父さんから今日はクルドのお祝いの日だよってつれて来られたの」と流ちょうな日本語で話した。

クルド人を支援する団体の日本人らも手をつなぎハライに加わった(NNA撮影)

クルド人を支援する団体の日本人らも手をつなぎハライに加わった(NNA撮影)

中東伝統の打楽器ダフを演奏しながら歌うクルド人の女性。動物の皮を乾燥させた薄い円のふちに小さな輪がつけられており、面を叩いた振動で音を鳴らす。タンブリンによく似た構造だ(NNA撮影)

中東伝統の打楽器ダフを演奏しながら歌うクルド人の女性。動物の皮を乾燥させた薄い円のふちに小さな輪がつけられており、面を叩いた振動で音を鳴らす。タンブリンによく似た構造だ(NNA撮影)

日本で生まれ育ったクルド人の子供も多く、日本語はほぼネイティブ並みに話す(NNA撮影)

日本で生まれ育ったクルド人の子供も多く、日本語はほぼネイティブ並みに話す(NNA撮影)

シシカバブをほおばる女の子。終盤で屋台の野菜が無くなったのか「これ肉しか入ってないよ」と言っていた(NNA撮影)

シシカバブをほおばる女の子。終盤で屋台の野菜が無くなったのか「これ肉しか入ってないよ」と言っていた(NNA撮影)

女性たちの踊りを見守る男性たち。日本人男性に比べてがっちりした体格だ(NNA撮影)

女性たちの踊りを見守る男性たち。日本人男性に比べてがっちりした体格だ(NNA撮影)

クルドを知る会と日本クルド文化協会による物販コーナー。手前のCDはシンガーソングライターFerhat Tunç氏の「KOBANI」。クルドやアルメニアなど中東の人々の団結をテーマにしたアルバムだ(NNA撮影)

クルドを知る会と日本クルド文化協会による物販コーナー。手前のCDはシンガーソングライターFerhat Tunç氏の「KOBANI」。クルドやアルメニアなど中東の人々の団結をテーマにしたアルバムだ(NNA撮影)

女性たちのドレスは「ハフタン(XAFTAN)」と呼ばれるクルドの伝統衣装で特徴的な文化の一つ。結婚式など人生の節目で着用する。ゼラリちゃんのハフタンは赤いオーガンジー地に金色の飾りの付いた子供用のズボンタイプ。日本でお母さんから見せてもらった中からデザインを選び、トルコにいるお兄さんたちに頼んで現地で購入したものを日本に送ってもらったそうだ。

会場には屋台が1つ。メニューは「シシカバブ」(ラム肉の串焼き入りラップサンド)や「アイラン」(ヨーグルト飲料)などが販売されていた。正午過ぎには長蛇の列となる人気ぶりだ。

川口市近辺では日本人向けにクルド文化を知るためのワークショップやパーティーが頻繁に催されている。普段からこれらのイベントに通っているという日本人女性は、「ネウロズに参加するのは今年が4回目。これも手芸教室でクルド人の先生に作ってもらった」と、ビーズで編まれたネックレスとバングル(ブレスレット)を見せてくれた。

チョーラクさんに日本への要望はあるかと尋ねた。「私は長い間、入国管理局に拘留されているクルド人亡命希望者の解放を求めてきました。難民を拘留することは東京五輪を控える日本のイメージとしても良くありません。新元号の時代には、日本に長く住む犯罪歴のない者へ在留資格を与え、永住できるようにして欲しい」

※特集「Aのある風景」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年5月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 日本中東
関連業種: 社会・事件

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