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【一帯一路の現場から】課題以上にチャンスあり、インド企業に聞くアフリカ市場の魅力

アフリカと地理的に近く経済的なつながりも深いインド。進出企業も多く、エチオピアだけでこれまでに600社近くが投資しており、総投資額は40億米ドル(約4,472億円)以上に達している。アフリカ進出で、一日の長があるインド企業との連携を模索する日系企業もある。実際にアフリカに生産拠点を置くインド企業は、アフリカをどう見ているのか。大手アパレルメーカーに話を聞いた。(取材・写真=NNAインド編集部 Atul Ranjan)

レイモンドのエチオピア子会社で代表を務めるシャシ・ブシャン氏

レイモンドのエチオピア子会社で代表を務めるシャシ・ブシャン氏

■欧米市場への関税免除、低廉な労働・電力コスト

インドの大手アパレルメーカーのレイモンドは、欧米市場に向けたエチオピアの優遇関税を活用することで、欧米に向けた輸出拠点と位置付けている。インド人のシャシ・ブシャン氏は同社のエチオピア子会社シルバー・スパーク・アパレル・エチオピアで代表を務めている。

──シルバー・スパーク・アパレル・エチオピアについて聞かせてください。

シルバー・スパークは、レイモンドの海外展開に向けた戦略の一環として、最初の海外生産拠点として設立された。2017年にハワッサ工業団地でアパレル工場の運営を開始した。世界最大の市場である米国と欧州に輸出する場合の関税が免除されることから、両地域への輸出拠点と位置付けている。また、低廉な人件費や工場で使用する電力に関する優遇などによって、欧米市場に向けた高いコスト競争力を実現できている。

──エチオピアから欧米への関税上のメリットについてもう少し聞かせてください。

われわれの主力商品であるスーツ、ボトムス、ベストコートなどをインドから輸出しようとすれば、米国向けには27%、欧州向けには17%の関税を払う必要がある。エチオピアからの輸出ならば、米国、欧州とも関税を払わなくて済む。これらの市場での価格競争力を維持する上で、エチオピアでの生産は大きなメリットがある。

──エチオピア工場の現在の生産能力と稼働状況を教えてください。

ハワッサ工業団地の工場は、1日当たりジャケット4,000着、ボトムス4,800着、ベストコート400着を生産する能力がある。現在はそれぞれの品目について、実際の生産量は5~6割といったところだ。来年までにはフル稼働することを目標にしている。エチオピア工場の製品は全て米国または欧州向けだ。

──アフリカに生産拠点を置くことに不安を抱く企業もあるが、御社がエチオピアでの生産で直面する課題はありますか。

エチオピアは、他のアフリカ諸国に比べて相対的に政情が安定しており、治安もいい。エチオピア政府は、献身的にサポートしてくれている。もちろん課題はある。しかし、それは他の途上国でも当然直面する種類のものだ。

現在の生産量はフル稼働の5~6割だという

現在の生産量はフル稼働の5~6割だという

■豊富な英語人材

──製造業にとって熟練労働者の確保は必要不可欠ですが、エチオピアでそうした労働力の確保とトレーニングを施す上での課題は何ですか。

エチオピアには一定の教育を受けた若年労働者が豊富にいるが、工場労働者としてはトレーニングが必要だ。幸いエチオピア人の多くは英語を理解できる。

一方で、農業人口が8割のエチオピアでは、1日8時間、座ったまま反復的な作業を行う工場労働者という概念を根付かせるのが最大の課題。時間厳守などの労働倫理もエチオピア人にとってはまったく新しい考えだ。

しかし、エチオピア政府は、国際水準に追い付こうとする野心がある。今はそれがどうすればできるかを理解していないだけだ。われわれは工場の目標達成に向けて、勤勉の必要性を教えており、エチオピア人はそれを素早く吸収している。労働上の摩擦はあまりない。

エチオピア人を工場労働者として育てるのは大変だが、英語でのトレーニングが可能だ

エチオピア人を工場労働者として育てるのは大変だが、英語でのトレーニングが可能だ

■原材料の国内調達に課題

──エチオピアでの原材料の調達で課題はありますか。

現在のところ原材料の大半をインドと中国から輸入している。価格競争力のさらなる向上や安定的な生産のためには、エチオピア国内でのサプライチェーンの構築が課題だ。ただし、欧米に輸出する上での関税上の恩恵、低廉な労働力や電力といったメリットは、未発達なサプライチェーンのデメリットを上回っている。

加えて、われわれはエチオピアでの生産を長期的な視点で見ている。世界的に労働コストの上昇や労働上の規制強化が進む中で、将来的にエチオピアが理想の生産拠点になり得ると考えている。

──アフリカ進出に関して経験豊富なインド企業が日本企業と連携する可能性はありますか。

日本とインドの企業が相互に補完し合えれば、アフリカにおいてwin-winの関係を構築できるだろう。われわれとしても日本企業との連携は一考の価値があると考えている。

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レイモンド

インドを代表する生地・アパレルメーカー。1925年創設。紳士服ブランドの「レイモンド」「パーク・アベニュー」「カラー・プラス」などのブランドを展開している。インド国内では380都市に1,100店舗以上の小売店を運営する。2018/19年度(18年4月~19年3月)の連結売上高は前年度比9.4%増の602億5,000万ルピー(約950億円)、純利益は前年度の5.2倍の13億5,000万ルピー

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■エチオピアの縫製産業 外国投資は中国が半数以上

海外からの投資誘致を担うエチオピアの政府機関、エチオピア投資委員会(EIC)によると、1992年以降に外国企業が同国で実施した縫製関連のプロジェクト数(他国・地域との合弁事業を含む)は342件となっている。国・地域別で最多は中国の180件で、全体の53%を占めた。インドは中国に次ぐ40件だった。

エチオピアから欧州連合(EU)への輸出は、武器以外の全品目が数量制限なしで無関税となる。米国向けは「アフリカ成長機会法(AGOA)」によって関税が免除される。

業界関係者などによると、エチオピアの縫製工場の給与相場は月当たり40~70米ドル(約4,470~7,800円)と、アジア諸国に比べて格段に低い。そのため、欧米のアパレルブランドの下請けを行う中国、インド、トルコ、バングラデシュのメーカーの間でも、エチオピアを代替生産拠点として活用を検討する企業が増えている。

※特集「一帯一路の現場から~エチオピア・スリランカで実像に迫る」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年4月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 中国日本アフリカ
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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