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【一帯一路の現場から】唯一の完成車メーカー、力帆実業

エチオピアで存在感増す中国

エチオピアに進出する唯一の完成車メーカーである力帆実業(集団)。人口1億人の同市場で、将来の潜在需要を見込んで、2009年に現地生産を開始した。しかし、10年間で累計販売台数は5,000~6,000台にとどまり、苦戦を強いられている。最大の課題は慢性的な外貨不足によって部品の輸入がしばしば滞ることだ。加えて、不透明な税制や工場労働に不慣れな現地人材の扱い方など、先行企業としての課題に直面している。(取材・写真=NNAインド編集部 天野友紀子)

エチオピア楊帆汽車の馬群・副総経理

エチオピア楊帆汽車の馬群・副総経理

■外貨不足で部品輸入できず

力帆のエチオピア法人、エチオピア楊帆汽車の工場ではたびたび生産が停止する。理由は米ドルが確保できず、生産に必要な原材料や部品を輸入できないためだ。エチオピアの外貨不足の問題は深刻で、政府も一定の対策はしているが、輸出が増えない限り根本的な解決にはならない。現状は、平均的に3カ月に1回米ドルを得て、3カ月生産して、その後3カ月生産停止といったペースを繰り返している。

セダン、多目的車(MPV)、ミニバン、ミニカーゴなど10数車種を組み立てている。年産能力は3,000~5,000台で、これまでに1,000万米ドル(約11億円)余りを投資した。

従業員は約160人で、うち工場勤務は50人ほど。平均給与は月4,000ブル(約1万6,000円)程度と、技術職が多いため一般的な製造企業と比べると割高だ。中国人駐在員は7~8人で、年齢層は24~56歳と幅広い。アフターサービスや営業担当、貿易実務などさまざまな職務に就いている。

累計販売5,000~6,000台の約半数がセダンで、うちタクシー向けが800台強を占めた。

エチオピア楊帆汽車の馬群・副総経理は、「進出直後は新車が珍しいこともあり、よく売れた。最初の3年は一定の利益が出ていたが、その後はほとんどもうけが出ていない」と話す。アフターサービスや部品販売によって、辛うじて赤字を計上していない状態だ。

■不透明な税制度も課題

馬副総経理は、業績が低調なもう一つの原因に税制の不透明性を挙げる。「エチオピアの法律には目次があって細則がない。読み手に理解と判断を一任する形だ」という。立法部門は財務省で、その下に徴税機関の税務局があるが、法律の運用は各税務局の担当者の裁量による部分が大きい。

同社の場合、進出から3年は税務に関する指摘がなかったが、その後は税務当局による監査が2~3年に1度のペースで行われるようになった。税務局のトップがたびたび変わり、そのたびに「税金の未払いがある」と督促されている。現在は未払いを含めて、年間純利益を上回る1,700万~1,800万ブルを請求されているという。

工場労働者としてのエチオピア人材にも課題を感じている。エチオピア人の潜在能力は高いものの、「基本的に仕事よりも私生活を謳歌(おうか)したい人たち」(馬副総経理)。労働法によって、病院が出す証明書があれば病欠が認められることになっているが、この証明書は実際に病気でなくても病院に行けば発行してもらえるため、欠勤が頻発する。

力帆は初歩的なことから従業員の意識を変えるよう努めている。中国にある欧州メーカーの新車販売・アフターサービス拠点の例を示し、自分たちに欠けているところを理解して、仕事習慣から徐々に変えていくように仕向けている。例えば、大音量で音楽を聴きながら作業する従業員に対しては、「今のままでは作業効率は悪いままだ。顧客にサービスを提供することでお金をもらっているのだから、顧客に対して責任を負わなくてはならない」と説いた。

「エチオピアでの仕事は個人的にもつらい」と話す馬副総経理だが、本社も自分もこの市場をあきらめてはいない。現状、赤字は出ていないことから、好転するまで粛々と事業を続け、業績が軌道に乗るまで耐え抜くつもりだ。

日本と中国企業の進出に対する考え方については、「日本人は少なくとも80~90%以上の成功の保証がないと投資しない」と指摘する。これに対し、「乱事出英雄」(カオスの中から英雄が生まれる)ということわざを持つ中国の企業は、「混乱の中にこそ、多くの商機が潜む」と考える。必ずもうかる保証はなくても、まず進出しようと考え、行動を起こしている。

アディスアベバと隣国ジブチを結ぶ鉄道は中国の援助によって整備された。開通して1年。13時間でジブチに到着する

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アディスアベバの鉄道駅。明るいイエローの壁が印象的だ

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乗客は多い時で1日400~500人、少ない時は100人ほどで、乗車率100%にはほど遠い

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中国系の縫製工場。中国人コンサルタントによると、エチオピア人は仕事を覚えるスピードは速く、アパレル産業では人材がかなり育ってきている

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※特集「一帯一路の現場から~エチオピア・スリランカで実像に迫る」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年4月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 中国日本
関連業種: 自動車・二輪車マクロ・統計・その他経済

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