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【アジアインタビュー】三英 三浦慎代表取締役社長

五輪で高い技術力とデザインを訴求

石川佳純選手や張本智和選手など、日本人選手の国際的な活躍もあり、卓球に対する国民的な関心が高まっている。そうした中、最高の舞台である五輪に卓球台を供給している日本メーカーをご存知だろうか。2016年のリオデジャネイロに続き、20年の東京と2大会連続で公式サプライヤーを務めるのが、千葉県流山市に本社を置く三英だ。同社の三浦慎社長が、国際的な檜舞台に卓球台を供給することへのこだわりと、ブランド認知度の高まりを追い風とする今後の海外戦略を語った。(NNA東京編集部 須賀毅)

──三英にとって五輪とはどんな舞台か

五輪は、世界トップクラスのアスリートが競う大会であり、世界的に最高水準の卓球台が使われる舞台だと考えている。

卓球は1988年のソウルから正式種目となった。弊社は92年のバルセロナで初めて公式サプライヤーに選ばれ、2016年のリオに続いて、20年の東京でも卓球台を供給することになっている。

バルセロナの時は、公式サプライヤーに選ばれたものの、その効果をどのように波及させていくのかという営業的な戦略はなかった。現在、弊社の卓球台の販売は95%を日本国内が占め、国内シェアは75%を超えるが、今後の伸びしろを考えると、海外で勝負しないと企業として大きくなれない。国際的なブランド認知度を高めるという意味で、リオ、東京と2大会連続で五輪の公式サプライヤーに選ばれた意義は大きい。

■日系移民の思いや震災復興の願いを反映

──リオでは美しい曲線を持つ木製の脚の卓球台「インフィニティー」が話題となった

ブラジルを現地視察する中で、卓球を楽しむ多くの日系移民の高齢者の方と接した。同国に卓球を持ち込んだのは日本人とされるが、大変な苦労をされた日系移民の当時唯一の娯楽が卓球だったと聞く。わずかなスペースで、気軽にできる卓球を、多くの人が生活の楽しみにしていたという。

そうした背景を持つ日系移民の方に、祖国を誇りに思ってもらえるよう、「和のテイスト」を取り入れた日本らしい部分とブラジルらしい部分を融合した卓球台ができたらいいと考えた。11年に東日本大震災があったので、被災地の復興への思いも入れたかった。そのため、最初から脚はスチールではなく、木製を考えた。材料には被災地である岩手県宮古市で育ったブナ材を使った。

卓球台「インフィニティー」(同社提供)

卓球台「インフィニティー」(同社提供)

■リオの卓球台、モチーフは「支える」

脚部分のデザインは、ソニーのポータブル・オーディオ・プレーヤー「ウォークマン」を手掛けた工業デザイナーの澄川伸一さんにお願いした。提案いただいたのが「支」の文字をモチーフとした形だった。ただし、実際に作ってみると、木製の脚がスプリングのように作用し、台をたたくとなかなか振動が止まらない。このため、木の厚さを60ミリから80ミリに変え、形も改良して試作を繰り返すことで、1年半がかりで振動を抑制した。

卓球台の脚を木製とするのはコスト的な面でも合わず、技術的にも難しい。また木製の脚は、時間と共に形状が変化したりする。それらを抑えるために薄くスライスした板材を互い違いに重ねた合板(積層合板)で作らなければならない。合板による複雑なデザインを実現するため、木の積層の技術で世界的に有名な天童木工(山形県天童市)の助力を得た。

こうしてできたインフィニティーの価格は100万円ほど。スチール製の脚を持つ一般的な卓球台に比べておよそ4倍の価格だが、これまでに国内の公共施設などに累計100台ほどを納め、弊社の卓球台としては大ヒット商品となった。

「支」の文字をモチーフにした脚部分のデザインコンセプト

「支」の文字をモチーフにした脚部分のデザインコンセプト

■東京五輪向けは来年秋ごろにお披露目

──東京五輪ではどのようなデザインを考えているのか

木製の脚など、和のテイストを取り入れたインフィニティーの基本コンセプトを引き継ぎつつ、東京らしいモダンなデザインとする方針だ。デザイン、構造とも既にほぼできており、今後ディテールを詰めていく。

来秋、東京で卓球の国際大会が開催される予定で、そこで一般にお披露目することになると思う。

■成長続けるため海外展開は不可欠

──中国・上海にも工場があるようだが、現在の生産体制は?

北海道と上海に工場を置いている。北海道の工場は、世界でも類を見ない卓球台専用工場で、研究・開発から試作、生産、試験までを一貫して手掛けている。国内向けや上級品を中心に生産している。

一方、上海では主に欧州向けや中級品、スチール製の脚部分を作っている。年間の出荷台数は北海道が1万1,000台、上海が2,000~3,000台ほど。

中国政府のハイテク産業重視の政策もあり、上海での生産を他国にシフトすることも検討している。ただし、卓球台は大きく、輸送コストがかさむため、消費地で生産するのが望ましい。大消費地であるアジアで販売する製品は、アジアで作ることを前提に、上海から第三国への工場移転を計画している。

──中国や東南アジアでも卓球は人気だが、今後の海外戦略は?

卓球台の現在の世界需要は年間40万台超。卓球は英国発祥のスポーツであり、英国の植民地だったシンガポールやマレーシアでも盛んだ。アジア全体の需要は30万台ぐらいとみられ、このうち半分程度を中国が占める。欧州は中国と同じぐらい。

日本国内の需要は1万3,000~1万4,000台であり、今後の会社の成長を考えると海外での販売の拡大が不可欠。当面の目標としては、海外での年間販売台数を2万台とすることを掲げている。海外の施設などで10~20台の卓球台が並べられていたら、必ずそのうちの1台は三英の製品が占めるよう、認知度や存在感を高めていきたい。

<企業プロフィール>

三英(さんえい):1962年設立。資本金9,500万円。東京都台東区で卓球台メーカーに材木を卸していた「松田材木店」を経営していた三浦慎社長の祖父が、反りやひび割れを防ぐ卓球台用の天板を考案したのが、卓球台メーカーの三英のはじまり。現在、天板を自社生産している世界的な卓球台メーカーは同社のみ。卓球台以外に、公園などに設置されている遊具や修景施設などを生産・販売している。

※特集「アジアインタビュー」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2018年10月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 日本
関連業種: その他製造社会・事件

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