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【ASEAN】寡占化が進む中であえぐ中小ツナ缶業者

タイ・ツナ缶業界の曲がり角(3)

6月25日のNNA記事「SME銀、中小支援に約2千億円の低利融資」(https://www.nna.jp/news/result/1779642)によると、タイ中小企業開発銀行(SME Bank)は、個人事業主、中小企業向けに総額580億バーツ(約1,940億円)の低利融資を供与する計画を進めている。財務が悪化している中小企業にも計30億バーツを融資する方針。タイ工業省中小企業振興事務局(OSMEP)が監督しており、これまでに3万6,000社が申請しているという。

タイでは経営基盤の脆弱な中小企業への政府の支援は重要なテーマだ。それはツナ缶業界においても同様のことが言えるだろう。

このシリーズでは、タイツ缶業界が長期的な原料コストや人件費の上昇により、業界全体として曲がり角にある現状を見てきた。当然、それぞれの企業はいろいろな形でこうした厳しい状況に対応しようとしている。

各企業における対応状況を見る前に、まずはタイツナ業界のプレーヤーの概況について説明する。大手とそれ以外で、大きく利益状況に差が出ているためだ。

■業界団体には25社

世界最大のツナ缶製造国であるタイには、タイツナ産業経協会(Thai Tuna Industry Association)に登録している企業だけでも25社のツナ缶製造会社が存在する(図表1参照)。中には、タイ・ユニオン・グループのような大手から新興のまだ小さい工場まであり、その規模もまちまちだ。

2016年度における収益も記載しているが、多くの企業は当期純利益率が一桁台やマイナスで、25社の平均当期純利益率は3.7%だ。

ただ上記の表には、最大手のタイ・ユニオン・グループに属される企業が1位のThai Union Group Publicと2位のThai Union Manufacturing、6位のSongkla Canning Public が含まれている。これらのタイ・ユニオン・グループの利益率は他の企業と比較して総じて高く、3社の平均の当期純利益率は15%だ。

一方で、タイ・ユニオン・グループ3社を除いた業界平均の当期純利益率は2.0%まで下がる。

このように、タイツナ缶企業のいくつかの会社は、同一の企業グループに属しており、その属性を整理して業界を俯瞰(ふかん)してみることが重要だ。

■3つの主要グループ

図表2は主要なタイのツナ缶業界の企業について、その相関関係をまとめたものである。そこには2つの大きな特徴がある。まず1点目は、ツナ缶業界には大手の3グループが存在している点だ。タイ・ユニオン系列、キングフィッシャー系列(マルハニチロ系)、シーバリュー系列の3つだ。

その3社の売上シェアと純利益のシェア(図表3)を見てみると、売上高では上記の3系列の合算で、図表3にあるように、タイツナ缶業界全体の約70%を占めている。

純利益ベースでは、同様にトップ3系列(図表4)がなんとその90%超を占めている。このように、大手のツナ缶企業に業界の利益のほとんどが偏在しているという大きな特徴が存在する。

その意味するところは、原材料価格の上昇や人件費の増加に対して、スケールメリットの利く大手はまだ利益を享受することが可能だが、それ以下の多くの中小企業は利益を上げること自体が難しくなってきている現状だ。

■大手グループは日系と提携関係

二つ目の特徴は、上記の3つの主要系列は、それぞれ日系企業と資本業務提携関係にあることだ。例えば、タイ・ユニオン・グループにおいては、三菱商事が約7%の株式を保有している。売上高で業界第2位のシーバリューグループは、伊藤忠がその主要な持株会社であるSea Value PLCの約10%の株主となっている。そして、業界第3位のキングフィッシャーについては、マルハニチロがその約43%の株主だ。

タイのツナ缶業界とは、日本は切っても切り離せない関係にある。現在の業界における逆風環境は、今後の関係においてどのような影響をもたらすのだろうか。次回は、各社における対応を見ながら、日本との関係についても考えていきたい。

<筆者紹介>

杉田浩一

株式会社アジア戦略アドバイザリー 代表取締役。カリフォルニア大学サンタバーバラ校物理学および生物学部卒。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)経済学修士課程卒。15年間にわたり複数の外資系投資銀行にて、海外進出戦略立案サポートや、M&Aアドバイザリーをはじめとするコーポレートファイナンス業務に携わる。2000年から09年まで、UBS証券会社投資銀行本部M&Aアドバイザリーチームに在籍し、数多くのM&A案件においてアドバイザーを務める。また09年から12年まで、米系投資銀行のフーリハン・ローキーにて、在日副代表を務める傍ら東南アジアにおけるM&Aアドバイザリー業務に従事。

12年に、東南アジアでのM&Aアドバイザリーおよび業界調査を主要業務とする株式会社アジア戦略アドバイザリーを創業。よりリスク度の高い東南アジア案件において、質の高いアドバイザリーサービスの提供を目指してASEAN各国での案件を遂行中。特に、現地の主要財閥との直接の関係を生かし、日系企業と現地企業間の資本・業務提携をサポートしている。


関連国・地域: 日本
関連業種: 食品・飲料農林・水産

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