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【アジアに行くならこれを読め!】『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』

「私がこれから書こうとしているのは、爆買いとも反日とも無縁な中国人たちのノンフィクションである」。こんな書き出しで始まる本書の主人公は、農民工と呼ばれる出稼ぎ労働者。彼らの人生を通じ、爆走する中国経済の影の部分に迫る。

ほかの多くの類似本と違うのが、上海在住歴18年の著者が、長い人で10年以上に渡り農民工と付き合いを重ね、「私の大切な友人たち」と呼べる関係性を築いていること。飯を共にしながら、彼らは著者に本音を語り、ありのままの生き様を見せてくれるのだが、どれも胸をぐさりと突くほど過酷だ。

中国では都市部と農村部で戸籍が異なり、農村戸籍の人間が大都市で得られる職は下働きや単純労働しかない。節約のため、自分たちは光の差さない廃墟に住みながら、大学院に通う息子のためにせっせと仕送りをする安徽省出身のパン夫妻。上海人に見下されながら、廃品回収業に勤しむ河南省出身のゼンカイさん。中国特有の制度が生んだ絶対的格差を、著者は時に驚き、時に憤りながら繊細に描写していく。重くなりがちなテーマだが、文体は快活で、登場する農民工がみな誠実さにあふれており、読後感は良い。

日経ビジネスオンラインで連載されていたコラムを元にしているため、時流を捉えた経済ネタや鋭い分析も随所にある。中国に関わる全ての人に読んでもらいたい。

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『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』

山田泰司 日経BP社

2017年11月13日 発行 1,800円+税

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農民工たちも、私も、互いに自分と同じ匂いを相手からかぎ取っていたのだと思う。

すなわち、「食いつめもの」として上海に集まってきて生きているという人間の匂いを。(本書より)

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<目次のぞき見>

留守児童

ウエートレスの供給地

鶏肉に翻弄される人生

ユニクロの花嫁衣裳

衝突で分断を融和できたころ

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山田泰司(やまだ・やすじ)

ノンフィクションライター。1988~90年中国山西大学・北京大学留学。1992年東洋大学文学部中国哲学文学科中退。1992~2000年香港で邦字紙記者。2001年上海に拠点を移し、中国国有雑誌「美化生活」編集、月刊誌「CHAI」編集長を経てフリー。EMS情報メディアの編集も手がける。

※特集「アジアに行くならこれを読め!」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2018年3月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 日本
関連業種: 社会・事件

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