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【アジア業界地図】EC(世界の4割占める中国市場の巨人たち)

中国の電子商取引(EC)の市場規模は世界の39.2%を占める─。中国商務省が2017年に発表したリポートによれば、16年時点で前年比19.8%増の26兆1000億元(約424兆650億円)に達したという。多くの企業がこの巨大マーケットへ参入しているが、成功のポイントは何なのか。巨人ともいえる主要プレーヤーの特徴を見ながら探る。

日中越境ECに携わり、日本商品の中国向けプロデュースなども行う中国市場戦略研究所(東京都中央区)の徐向東代表によると、中国EC市場の主要プレーヤーは以下の通り。

主要プレーヤー概要

主要プレーヤー概要

【天猫(Tモール)】

阿里巴巴集団(アリババ)系の通販サイト。抜群の知名度で、ユーザー数は最多。ここに出店すると「正規の旗艦店を出している」と認識してもらえる。出店条件は高めで、日本企業も多く出店する越境ECサイト「天猫国際(Tモールグローバル)」の場合、3万5,000米ドル(約395万円)の年会費と保証金、売り上げの3~6%のマージンが必要とされる。世界的な大手企業も多く出店しているため、知名度がなければ出店コストばかりかさみ、なかなか利益を上げられないこともある。

【京東(JD.com)】

中国全土で500カ所の物流倉庫、6,900カ所以上の配送ステーションを持ち、自前の物流システムが最も整備されている。ドローン(小型無人機)による山間部への配達、大学構内における無人車での配達などを実現した。ミドルクラスのユーザーが多く、「にせ物を絶対に許さない」とのポリシーが信頼を得ている。出店条件は越境ECサイト「京東全球購(JDワールドワイド)」の場合、1万5,000米ドルの保証金を納める。

越境ECの市場規模(2016年)と日米中の越境EC市場規模推計(2016~20年)

越境ECの市場規模(2016年)と日米中の越境EC市場規模推計(2016~20年)

【網易考拉海購(ワンイコアラ)】

中国ポータルサイト大手、網易(ネットイーズ)傘下の越境EC事業者で、2015年に参入したばかりの注目株。浙江省の寧波保税倉庫だけで2万6,000平方メートルに上るなど、同業としては最大規模の保税倉庫を持つ。ベビーや育児用品、化粧品などに特化し、オフラインの体験会での販促にも力を入れる。はやりの品や爆買い商品をすぐに仕入れて販売するフットワークの軽さも売り。

【唯品会(vip.com)】

アパレルや女性向け商品に強い。数量・期間限定商品を大幅ディスカウントで販売する「フラッシュセール」が支持されている。ニューヨーク証券取引所上場。17年11月11日の販促イベント「双十一」では販売開始から1時間で100万件を受注した。

EC市場調査やコンサルティングサービスを手掛ける中国電子商務研究中心が行ったECサイト満足度調査(17年1~6月)によると、唯品会は3位。「安心して利用できる」と評された。越境ECサイトは「唯品国際」。

中国BtoC ECのシェア(2015年)

中国BtoC ECのシェア(2015年)

【小紅書(レッド)】

モバイルアプリで頭角を表す。ユーザーの口コミ、商品レビューを重視し、高評価を得た商品を自ら仕入れて販売する。河南省鄭州市と広東省深セン市に計5万平方メートル以上の保税倉庫を持つほか、世界29カ国に倉庫がある。17年6月6日の創立記念セールでは発売から2時間で1億元を売り上げた。

【その他】

このほか阿里巴巴集団系のCtoC(消費者間取引)サイト「淘宝(タオバオマーケットプレイス)」「蘇寧易購(越境ECサイトは蘇寧易購海外購)」「聚美優品(同:聚美極速免税店)」「国美在線(同:国美海外購)」「1号店」「アマゾン中国」「当当網」などがある。

越境ECの取引規模の推移

越境ECの取引規模の推移

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<忘れてならない「双十一」>

中国のネット通販サイトで毎年11月11日前後に行われる一大販促イベント「双十一(独身の日)」。昨年の双十一、カルビーが天猫国際に設けた旗艦店には35万人の来店、14万人の購入者があった。販売額は11月11日だけで1,800万元(約3億1,000万円)に上った。このうちシリアル商品「フルグラ」が1,400万元と大半を占めている。販売袋数は31万袋に達し、計画の30万袋を上回った。フルグラの通常価格(800グラム×2袋)129元を、11月11日午前0時~1時59分に99元で、同2時から109元で販売するなど、大幅な割引が奏功したようだ。

同社は中国EC市場について、「変化の速い市場。日本とは消費スタイルが異なり、これまでとは違うマーケティング手法を用いる必要がある。新しいテクノロジーが日本とは比べものにならないほど急速に浸透しているので、今後も非常に大きなポテンシャルを持っている」との認識を示している。

同社は中国では今後もシリアル市場が成長すると見込み、フルグラを中心とする商品の輸入・販売、ECを行う新会社を今年前半にも浙江省杭州市に設立する計画だ。

NNA POWER ASIA 双十一に関する主なトピック

NNA POWER ASIA 双十一に関する主なトピック

カルビーは双十一でフルグラを特価販売した(同社提供)

カルビーは双十一でフルグラを特価販売した(同社提供)

■9.4倍増に

中国向け越境ECプラットフォーム「豌豆(ワンドウ)プラットフォーム」を運営するインアゴーラ(東京都港区)によると、双十一では特に化粧品や日用消費財、医薬品が好調だったが、ファッションなどのライフスタイル関連や食品など満遍なく伸びている。今回の双十一の取引額は16年と比較して9.4倍増になったという。ワンドウの客単価は約300元。日本のブランド、メーカーから商品を直接仕入れているため、購入する商品は正規品であり、「にせ物ではない」と支持されているようだ。

越境ECにおいて日本商品の人気は高い。ワンドウは中国向け越境ECサービスの中で唯一、日本商品に特化した。インアゴーラは「15年のリリースから取引額は急伸し、17年11月時点でさまざまなカテゴリーの約4万商品を取り扱っている」ほか、同社編集部制作の記事・動画コンテンツや、アプリを通じたユーザーの口コミ情報拡散などが増収につながっていると説明する。

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<ライブコマースで旬のブランドを>

阪急うめだ本店が行った中国人消費者向けのライブコマース(同社提供)

阪急うめだ本店が行った中国人消費者向けのライブコマース(同社提供)

百貨店大手の阪急うめだ本店(大阪市)では中国人客を中心とするインバウンド向け売上高が2017年4~9月、前年同期比65%増となった。中国人客の口コミが広がり、中国国内での需要も見込めることから、日中越境ECを同年8月から始めた。

日中越境EC事業は今後も成長すると予測するが、扱っているアパレルなどの商品はサイトに商品情報を載せるだけで爆発的に売れるものではなく、顧客との関係を構築しながら、店舗や商品のストーリーや価値を訴求することが重要との認識を示す。

その一環として中国人消費者向けに、国内外の旬のブランドを取り扱う同社のセレクトショップ「Dラボ」の商品のライブコマース(実演販売)も行った。商品の説明や使用感などを詳しく伝え、ユーザーの質問やリクエストにその場で答え、特徴を訴える。

同社担当者は「売り上げはまだ満足できる水準ではなかった」ものの、◇Dラボの世界観を発信できた◇中国EC市場で受け入れられる販売価格帯を確認でき、売り方と品ぞろえを調整することでさらに精度を高められる─などの収穫があったと話している。

ECでは価格競争も発生しているが、同じ土俵では勝負しないという。商品価値をいかにして伝えるか、ライブコマースによる双方向のコミュニケーションにより、顧客の疑問にすぐに答えながら発信できるのが強みとする。

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<売れるポイントはこれだ>

──中国EC市場の特徴は?

爆発的成長が続いている。17年時点の利用者は5年前より3倍増の4億人を超え、15年のEC消費額は個人消費の15%を占めたと言われている。

日本にとって重要なのは越境ECが相当伸びているということだ。中国人消費者の生活・所得水準は向上し、特に中間層以上の消費者はかつてのような大量生産の安い物では満足しなくなった。海外旅行者も増えたほか、海外に住む中国人のネットワークから個人輸入ですでに多くの商品が中国国内に流れている。中国政府はこの部分について越境ECの形で発展させようとしており、各地で保税区を拡充しようとしているのはこの流れを受けてのこととも言える。

──日本企業にはどのような機会があるのか?

これまでに多くの日本企業が中国のECサイトで旗艦店を設け、かなりの実績を上げる例もある。これからも参入はどんどん増えていくだろう。

今後、日本の商品を売り込もうとする場合、ポイントとなるのは「体験」だ。商品やサービスを体験できる実店舗が必要になるだろう。日本はモノ作りの国で、企業は研究開発を重ねてきた。高付加価値の商品を求める消費者も多く、1本1,000円以上する歯磨き粉が売れるのは珍しくない。中国人消費者にもこのような傾向が出てきている。だが、そういう商品はネットで画像を見ただけで購入するのはなかなか難しい。やはり「消費者体験」がとても重要になってくる。

──具体的にどうすれば良いのか?

テレビコマーシャルを流して終わり、ではない。中国人消費者を集め、日本の商品をきちんと体験、その良さを理解してもらうことが大事だ。押しつけ型のキャッチコピーを「載せてください」というのではなく、商品のネーミングやコピーなど、すべてこの消費者たちと話し合い、彼ら・彼女ら自身で納得した言葉で表現する──。

この手法で訴求すると非常に高い効果を得られる。特に越境ECの売れ筋であるフェースマスクや洗顔料、化粧品など、日本の商品の場合はこのリアルに体験するということが重要だ。

ネットユーザーの行動を左右するKOL(キー・オピニオン・リーダー=インフルエンサー)を招いた体験会は上海や北京、東京などでかなりの頻度で行っている。体験会中に商品がまとめ買いされることも少なくない。会の最中にKOLがSNS(会員制交流サイト)で感想や、商品開発の物語などの情報を発信しているのだ。この体験会での口コミ効果は大きい。たとえ中国で正規販売されていなくても、一晩で2億円分が爆買いされたケースもある。

消費者は体験会での情報から商品に興味を持つと、そのホームページやSNSアカウントにアクセスすることが多い。この時、お得感がある割引クーポンなどを提供していることも重要だ。このように自ら探して購入した商品に消費者は愛着を持つので、リピーターになることが期待できる。

もう一つ重要なのはEC市場の仕組みやプレーヤーを理解すること。今はプレーヤーがあまりにも多すぎて選択に困っている日本企業もいる。どのプラットフォームをどう活用するかが大事だ。

後はスピーディーに動くこと。ネットの世界では時間の流れが速い。特に中国ではそうだ。かつてのような年間ベースの販売計画ではとても追い付けない。その点を理解している日本企業もあり、われわれが行う体験会で売れるポイントを把握し、1カ月単位でプロモーションに反映させて成果を上げている。

<プロフィール>

徐向東(じょ・こうとう)

中国・北京外国語大学講師を経て日本の文部省(当時)の奨学金を得て来日。日本で博士号取得後、日本企業向け中国市場進出調査やコンサルティングなどに従事。2007年から中国市場戦略研究所代表。経営層向け講演やセミナーを行うほか、『「爆買い」中国人に売る方法─これが正しいインバウンド戦略』(15年)など著書多数。

※特集「アジア業界地図」は、アジア経済を観るNNAの新媒体「NNAカンパサール」2018年1月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 中国日本
関連業種: 運輸IT・通信小売り・卸売りマクロ・統計・その他経済

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