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【識者に聞く】JR東など、国際入札控え首相に新幹線PR

NNAが日々伝えるアジアのニュース。読者の関心が高かったトピックについて識者が解説・分析した。

【topic 1】

JR東など、国際入札控え首相に新幹線PR

NNA POWER ASIA 2017年10月24日付マレーシア

JR東日本などは23日、マレーシア・クアラルンプール(KL)で開催された政府主催の公共交通シンポジウムで新幹線のシミュレーターを設置し、会場を訪れたナジブ首相にKL——シンガポールを結ぶ高速鉄道(HSR)事業での新幹線方式採用をアピールした。12月の国際入札前としては、最後の大規模なPR活動となった。

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牧野記大氏

牧野記大氏

牧野 記大(まきの・のりひろ)

国土交通省鉄道局国際課プロジェクト支援係長。2014年に国土交通省入省。都市・まちづくり関係の法令担当を経て、16年から現職。鉄道の海外展開一般、オーストラリアを中心に担当。

日本国内における鉄道の旅客や鉄道車両などの需要は比較的堅調に推移しているが、今後の人口減少を見据えると、大幅な需要の増加は見込めない状況にある。一方、海外では、年間約24兆円、特にアジア太平洋地域では約7兆7,000億円規模の市場が存在しており、こうした膨大な需要を取り込むとともに、日本の鉄道の技術やノウハウのさらなる向上を図る観点から、鉄道の海外展開の重要性が高まっている。

日本の鉄道は安全性や定時性、ライフサイクルコストの低さなどの点で強みを有している一方、プレーヤーが車両や機器、設備などに細分化されており、世界で競争力を発揮するためには全体をコーディネートする機能をどのように確保するかが課題となっている。また、旺盛な需要に対応するため、鉄道の海外展開に必要な人材の確保・育成も急務である。

政府としては、安倍晋三首相や石井啓一国土交通大臣らによるトップセールスなどを通じて、受注獲得に向けた働きかけを強化しているが、すでに受注が決まっている案件を着実に形にしていくことも、当該案件をショーケースとしてさらなる受注につなげていく上で重要である。こうした好循環を生み出せるよう、上記の課題の解決も含めて、官民で連携して取り組みを進める必要がある。

【topic 2】

露天掘り解禁、政府が意向表明

大型開発進む可能性も

NNA POWER ASIA 2017年10月26日付フィリピン

フィリピン政府は24日、金・銀・銅などの露天掘りを禁じる規制を解除する意向を示した。今年4月に前環境天然資源相が出した禁止措置を、近く終わらせる方針だ。南部ミンダナオ島のタンパカン鉱山をはじめ、未着手の大型開発が進む可能性が出てきた。鉱業調整協議会(MICC)が同日に会合を開き、環境天然資源省が鉱物の採掘方法に関する法律と規則を厳格に施行することを条件に、賛成多数で同省に禁止令の解除を勧告すると決めた。

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新井裕実子氏

新井裕実子氏

新井 裕実子(あらい・ゆみこ)

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査部金属資源調査課。ニッケル市場の需給動向調査、及び東南アジアの鉱業情勢を担当。2015年より現職。

フィリピンはかつて世界有数の銅鉱石生産国であり、現在はニッケル鉱石生産量世界第1位の鉱業国である。同国のニッケル鉱石は地表面に賦存(ふそん)していることから、かねてより主に露天掘りでの採掘が行われている。露天掘りは採掘コストが低廉であることから、鉱石が低品位の場合でも大型採掘が可能となる。一方で、景観の変化を伴うといったデメリットもあり、またフィリピンでは雨季の雨量が多いことから、露天掘り鉱山は気候の影響を受けやすい。

鉱業法および環境基準を順守して鉱山操業が適切に行われているかを確認する監査が大々的に実施されたのは、2016年にドゥテルテ大統領、ロペス環境天然資源相が就任してからである。ロペス氏は以前から強硬な鉱山開発反対派として知られており、7月から全鉱山の監査を開始。日本企業が操業に関与するリオツバ(Rio Tuba)鉱山とタガニート(Taganito)鉱山は合格と判定を受けたものの、翌17年2月には23鉱山が閉鎖命令を受け、5鉱山が操業一時停止命令を受けることとなった。

監査結果や処分の内容については、透明性・妥当性に欠けるとの批判が鉱業界から上がっていた。こうした背景の中で、ロペス氏は自身の進退がかかった公聴会開催目前の4月末に、国内の露天掘りを禁止した。

新規鉱山開発プロジェクトについては16年7月以降モラトリアムが実施されてきたが、ロペス氏に代わって新大臣に就任したシマツ氏による鉱業政策の転換に伴いこれらのプロジェクトが進展する可能性は高い。

フィリピンは日本・中国への距離が近いことから、原料供給国として、また中間加工場として好ましい位置にある。日本企業としては、住友金属鉱山が現地でニッケル製錬事業を行っているほか、鉱山開発事業にも複数社が参画し、既に開発の経験を有している。今後とも環境規則を順守した鉱山運営は必須であり、併せて同国動向の注視が必要であろう。

【topic 3】

転職希望者じわり拡大

高給人材25%、連休明け小ピーク

NNA POWER ASIA 2017年10月30日付中国

中国で企業の中~高給人材を中心に転職を考える人が増加傾向にあるようだ。求人紹介サイトの調査によると、第4四半期(10~12月)に転職を考えている中~高給人材は回答者全体の25.2%となり、第3四半期(7~9月)の19.2%から6ポイント上昇した。国慶節の大型連休が明け、転職市場は小さなピークを迎えている。また春節(旧正月)の年度ボーナス支給後の本格的な転職ピーク期に向けて、準備を開始する人も増えている。

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橘宏喜氏

橘宏喜氏

橘 宏喜(たちばな・ひろき)

上海艾杰飛人力資源有限公司(リクルートグループ中国法人)総経理。株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社後、新卒・中途・アルバイト採用と一貫してHR領域に従事。中途採用領域の営業部長を務めた後、アジアを中心に人材紹介事業を手がける部門に異動。ベトナム勤務を経て、2014年より中国に赴任。16年4月より現職。

2017年に入り、中国の日系企業の人材採用意欲が高い。当社で取り扱う日系企業の求人数は、5月から10月まで、6カ月連続で前年同月増加となった。

日系企業も堅調な中国経済の恩恵を受けており、人材増強意欲にも波及している。背景には(1)中国市場での日系新車販売台数が前年を大幅に上回っていること(2)中国政府が半導体産業の振興を推し進めているのと同時に、世界的に半導体需要が高まっていること(3)人件費抑制を目的とした工場などの自動化投資が引き続き活発で、工作機械や産業用ロボットに対する力強いニーズが途切れないこと(4)スマートフォンなどの小型電子機器向け製品の需要増に加え、新エネルギー車のプレゼンスの高まりで、リチウムイオン電池市場が拡大していること——がある。

けん引役は製造業だ。人材需要は17年1~10月累計では、前年同期比7%増となった。この動きは製造業にとどまらず、関連する商社や貿易にも及んでおり、同じく人材採用意欲が高い。年末から年明けにかけても、この増勢は続きそうだ。

もっとも、業界が活気づくにつれ、人材については需給の逼迫(ひっぱく)が顕著になりつつある。特に現地人材(中国人)を対象とした場合、同業種やそれに近い業種での経験を持つ技術職人材を求めようとすると難航するケースが珍しくない。また、技術的専門性に加え、日本語能力や日系企業での経験を持つ即戦力人材を求めるならば、採用の難易度はますます高まる。採用に苦戦を強いられている日系企業には、人材に求める要件の緩和、訴求力向上のための自社の強みの再定義、雇用条件の見直しといった採用対策が求められる。

【topic 4】

日本企業がCPO貯蔵施設

東カリマンタン特区、15億円投資

NNA POWER ASIA 2017年10月24日付インドネシア

インドネシア政府が国内有数のパーム原油(CPO)産地、東カリマンタン州で開発するマロイ経済特区に、日本企業がCPOの貯蔵施設を建造する。来月初旬に着工、来年秋までにまず6基を造る。投資額は最大15億円。政府はCPO関連産業をマロイ経済特区に集約する計画で、将来的にはCPO産業に関連する日本企業の進出が増えることも期待される。

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藤木純一氏

藤木純一氏

藤木 純一(ふじき・じゅんいち)

1959年福岡県生まれ。グローバルホールディングス株式会社代表取締役。大学卒業後商社勤務、1999年独立し三菱マテリアルグループと米国から環境機器の輸入事業を始める。その後も環境事業に携わり、約3年前からインドネシアを中心とした東南アジアへのパームオイル関連事業を始める。

インドネシアにおいて、パームヤシ生産農家やパームオイルの搾油所から排出される廃棄物処理は大きな問題とされ、その解決は急務となっている。

発生する廃棄物は、(1)生産農家では植え替えした時の伐採古木(2)搾油所から排出される物として、パーム果実を取った後の空果房(EFB)と、搾油した時に出る果実の繊維質(メソカップファイバー/MF)(3)パーム核の搾油時に出るパーム椰子殻(PKS)(4)それに搾油廃液(POME)——4種類である。

伐採古木は、現在日本で住宅建材に再利用する目的で研究が進められているほか、MFは粉末にしインドネシア国内で発電燃料として利用されている。PKSは日本にも燃料として輸入されており、現在供給が足りないほどの需要がある。

EFBはほとんどの搾油所が埋め立てや焼却処分やパーム畑に捨てているのが現状。POMEは搾油廃液のため池に垂れ流しの状態だ。搾油所は長期にわたり稼働しているため、ため池にも余裕がなくなってきている。

グローバルホールディングスとしては、廃棄物処理の対策ができていないEFBとPOMEのリサイクル処理を行い、有価物へ転化する。具体的には、EFBは不純物を取り除き固形燃料のペレットに加工してリサイクル処理。POMEは搾油工程で最後に排出される搾油廃液を液体燃料および固形燃料に加工する。どちらも処理技術は確立されており、今後日本政府や日本の民間企業から設置資金を調達しゼロエミッションを完成させる計画だ。

パーム廃棄物のゼロエミッション化と共に、有価物に転化することで、地球の環境保全や国際社会との協調を保つことができ、パーム生産事業が安定的に続けられるだろう。

また、できる限りCPOを1カ所に集約し、製油所でさまざまな材料に加工して、最終的にはマーガリンなどの食品やせっけんなどの日用品までインドネシア国内で製造し付加価値を高めて収益改善につなげる必要があると思われる。

※特集「識者に聞く」は、アジア経済を観るNNAの新媒体「NNAカンパサール」2017年12月号「このトピックス、こう読む」<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。毎月1回掲載。


関連国・地域: 中国マレーシアインドネシアフィリピン日本
関連業種: その他製造建設・不動産天然資源マクロ・統計・その他経済雇用・労務

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